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お友達
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「レオナード様、お話しませんか?」
私は習慣となってきたその言葉を発する。そうすれば、レオナード様は一度こちらへ振り向き戸惑うような表情をしてから一礼して立ち去る。
「あ、待ってくだ」
私はその背中を追うため歩みを進めようとしてつまづく。
「イタッ」
後ろで足首をひねった私にレオナード様は恐る恐る近づく。
「捕まえました」
私は近づいてきたレオナード様の腕をガシッと掴んだ。いきなり伸ばされた手、元気そうな私にレオナード様はとても困惑していた。
「騙してごめんなさい。どうしても私レオナード様とお話ししたかったんです」
どうにかして逃げるレオナード様を捕まえたくて考えたのがこの作戦だった。レオナード様を試すようなことをしてしまったけれど、無事捕まえることができた。
「私用事が」
「そうはいきません。ミシェル様にレオナード様が今日何もないことを確認してありますので」
レオナード様は完全に口を閉ざしてしまった。そのまま見つめ合っていればレオナード様は一度深呼吸をした。そのあと顔をあげ私を見据えるレオナード様の顔は覚悟が決まっているように見えた。
「まずはこの一週間リュシエンヌ・フロライン様に対する無礼な態度をとっていたことをお詫び申し上げます」
レオナード様はそう深々と頭を下げた。
「あの、そんな気にしてないから大丈夫ですよ。呼び止めたかったのもただお友達になりませんかって言いたかっただけで……」
「え、あ、そうだったのですか!?」
私の言葉にレオナード様は目をまんまるにして驚いた。まさか驚かれるとは思っていなかった。
「逆にそれ以外に何かありましたか?」
「あ、いえ……私がここ数日フロライン様を無視してしまっていたことかと思って……」
「そんなこと私の方が悪かったのです。レオナード様の事情を考えずに発言をしてしまったので」
私が弁明をすれば、しばしの沈黙が流れた。
「……ふふ。お互い何か誤解をしていたみたいですね」
「そう、みたいですね」
「私は、レオナード様の髪の色とても好きですよ。確かにレオナード様のご家族の方とは少し違っていますが、赤色には変わりありませんもの」
「はい、実は私も自分の髪の色は気に入っているのです。私だけの色、ですから」
そう話すレオナード様の表情は明るかった。
「レオナード様、改めてなのですが。私とお友達になっていただけませんか?」
レオナード様は大きく目を見開いた。
「え、はい!フロライン様がよろしければ!」
「ふふっでは私たちこれからお友達ですね!リュシエンヌと気軽にお呼びください」
私は驚いているレオナード様の両手を掴んだ。いきなりのことにレオナード様はオドオドする。
「あ、では、私のこともアンネ、と」
「ありがとうございます。お友達なんて初めてできるものだから色々不慣れなことがあると思うのですがよろしくお願いします」
「いえいえ、私も、お友達はできたことなくて……」
アンネ様はそう目を伏せた。そっか、アンネ様も初めてなのか。
「ではお互いお友達初心者ですね」
「……ふふそうですね」
アンネ様はそう柔らかく笑った。
私は習慣となってきたその言葉を発する。そうすれば、レオナード様は一度こちらへ振り向き戸惑うような表情をしてから一礼して立ち去る。
「あ、待ってくだ」
私はその背中を追うため歩みを進めようとしてつまづく。
「イタッ」
後ろで足首をひねった私にレオナード様は恐る恐る近づく。
「捕まえました」
私は近づいてきたレオナード様の腕をガシッと掴んだ。いきなり伸ばされた手、元気そうな私にレオナード様はとても困惑していた。
「騙してごめんなさい。どうしても私レオナード様とお話ししたかったんです」
どうにかして逃げるレオナード様を捕まえたくて考えたのがこの作戦だった。レオナード様を試すようなことをしてしまったけれど、無事捕まえることができた。
「私用事が」
「そうはいきません。ミシェル様にレオナード様が今日何もないことを確認してありますので」
レオナード様は完全に口を閉ざしてしまった。そのまま見つめ合っていればレオナード様は一度深呼吸をした。そのあと顔をあげ私を見据えるレオナード様の顔は覚悟が決まっているように見えた。
「まずはこの一週間リュシエンヌ・フロライン様に対する無礼な態度をとっていたことをお詫び申し上げます」
レオナード様はそう深々と頭を下げた。
「あの、そんな気にしてないから大丈夫ですよ。呼び止めたかったのもただお友達になりませんかって言いたかっただけで……」
「え、あ、そうだったのですか!?」
私の言葉にレオナード様は目をまんまるにして驚いた。まさか驚かれるとは思っていなかった。
「逆にそれ以外に何かありましたか?」
「あ、いえ……私がここ数日フロライン様を無視してしまっていたことかと思って……」
「そんなこと私の方が悪かったのです。レオナード様の事情を考えずに発言をしてしまったので」
私が弁明をすれば、しばしの沈黙が流れた。
「……ふふ。お互い何か誤解をしていたみたいですね」
「そう、みたいですね」
「私は、レオナード様の髪の色とても好きですよ。確かにレオナード様のご家族の方とは少し違っていますが、赤色には変わりありませんもの」
「はい、実は私も自分の髪の色は気に入っているのです。私だけの色、ですから」
そう話すレオナード様の表情は明るかった。
「レオナード様、改めてなのですが。私とお友達になっていただけませんか?」
レオナード様は大きく目を見開いた。
「え、はい!フロライン様がよろしければ!」
「ふふっでは私たちこれからお友達ですね!リュシエンヌと気軽にお呼びください」
私は驚いているレオナード様の両手を掴んだ。いきなりのことにレオナード様はオドオドする。
「あ、では、私のこともアンネ、と」
「ありがとうございます。お友達なんて初めてできるものだから色々不慣れなことがあると思うのですがよろしくお願いします」
「いえいえ、私も、お友達はできたことなくて……」
アンネ様はそう目を伏せた。そっか、アンネ様も初めてなのか。
「ではお互いお友達初心者ですね」
「……ふふそうですね」
アンネ様はそう柔らかく笑った。
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