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悩み
しおりを挟むあれから一日経ち、今日の分の授業が全て終了した。私はまた一人教室で迎えに来るアルを待っていた。
「ねぇルリ。私さ」
「はい、言いたいことはわかってますよ。避けられてますね、見事に」
レオナード様に約束通り今日何度か話しかけようとしたのだ。だが見事に全てうまいように躱されてしまったのだ。別に無視されているわけではない。ちゃんと一度こちらを向いて話そうとしてくれるのだが、「要件がある」といって足早に去ってしまうのだ。うん。どうしようかな。一度も友人と呼べる相手がいない私は非常に困っていた。
「ねぇ、どうしたらいいと思う?」
「時間が解決してくれるのを待つか、アタックし続けるしかないと思いますよ。どちらも逆効果かもしれませんけれど」
「うん……わかった。ならアタックし続けるよ」
これが正しいかわからないけれど頑張るしかないか。折角レオナード様から作ってくれたこの縁を無駄にはしたくないし。
私はその日からどんなに忙しくても一日一回はレオナード様に話しかけるようにした。流石にしつこいかなとも思ったけれど、私はそれだけ仲良くなりたいし悩みを抱えたレオナード様を一人にしてはいけないと思ったから。
「ねぇリュシーここ最近忙しそうだね」
そんな日々が続き早一週間、寮に向かう途中アルにそう話しかけられた。
「アルよりは忙しくないと思うよ」
アルの言葉に私は少し皮肉を混ぜながらそう答えた。アルは入学初日から王族ということで生徒会に入っている。毎日授業終わりに生徒会室に向かっては生徒会の仕事をしている。痛いところを言われたアルは少し苦い顔をした。
「まぁでもこうやってるのは私が決めたから。どうしても仲良くなりたい人がいるの」
「レオナード嬢?」
「え、なんで知ってるの?」
私がレオナード様の名前を隠して言えば、すぐにアルに言い当てられてしまった。アルに理由を聞くため詰め寄れば、アルはそれはと言葉を続けた。
「御三家の令嬢がおいかけっこをしているって学校じゃ有名だから、かな」
初耳だ。確かに他から私たちを見てみれば一週間毎日飽きずにおいかけっこをしているように見えるだろう。私のせいでそんな噂を立てられているとはレオナード様に申し訳ない。
「でもリュシー達に何かを言える人なんてこの学園にはいないでしょ?」
落ち込んだ私を励ますようにアルは言う。そうだけれども、私のせいでレオナード様までもそう言われていることは事実だしこれ以上迷惑にならないうちにやめるべきだろうか。
「おいかけっこ、やめなくていいと思うけど」
アルが私の考えを見透かしたようにそう言った。私は驚いて顔を上げる。
「どうして?」
「それは……生徒会にはレオナード嬢の兄上ミシェルがいるからね。情報が入ってくるんだ。フロライン嬢においかけまわされて大変だってレオナード嬢が言ってるって」
やっぱり。大変だとレオナード様は思っていたのか。私はその事実を聞きまた俯く。すれば頭にポンと手が置かれる。きっとアルの手だろう。
「だけどそういうレオナード嬢の表情はとても楽しそうだって。そしてその反面どう接すればいいか分からないと、悩んでいるって」
なんだか私も同じことで悩んでるな。案外似たもの同士なのかも。
「リュシーは……もう悩んでなさそうだね」
私の顔を見てアルはそう笑顔でいった。
「うん、ありがとう」
明日はちゃんと話をしてみよう。いつも逃げてしまうその手を掴んで。
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