辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐

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第6章:帝国の陰謀と赤き核

第130話「峡谷の伏兵」

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シェリル峡谷へと続く山道に差し掛かった調査隊は、険しい岩場を慎重に進んでいた。切り立った崖と霧に覆われた狭い道が続き、周囲は不気味な静寂に包まれている。この地形では伏兵が潜んでいてもおかしくない。

ゼッド中尉が馬上で手を挙げ、調査隊を制止した。
「ここから先は徒歩だ。馬車は危険が多すぎる。」

ガルドが斧を肩に担ぎながら小声で応じる。
「なるほどな。こんな場所じゃ馬が驚いて暴れるかもしれねえしな。」

「それだけじゃない。」
ユリウスが険しい目で周囲を見渡しながら言葉を続ける。
「この霧の中で馬車を動かせば、間違いなく目立つ。敵に位置を教えるようなもんだ。」

ゼッド中尉が短く頷くと、部下の兵士たちに命令を飛ばした。
「馬車を隠せ。必要な物資だけを持って進むぞ。隊を二列に整えろ。先行するのは俺とガルド、それからユリウスだ。」

「了解!」
兵士たちは馬車を手際よく近くの岩陰に隠し、武器を携えて隊列を組み直した。

エルヴィンもバッグを肩に背負い直し、慎重に隊列の中央に位置するよう促された。
「エルヴィン、装置は大丈夫か?」
ゼッド中尉が振り返って確認する。

「はい。オーブを組み込んだ装置は安定しています。ただ、実際に動作させるには魔道核の近くに到達する必要があります。」
エルヴィンが応えると、中尉は満足げに頷いた。

「よし、その時が来るまで死ぬなよ。お前が頼りだ。」
中尉の言葉にエルヴィンは小さく微笑みながら返事をした。
「もちろんです。」

峡谷の中腹まで進んだ時だった。微かな音が霧の向こうから聞こえてくる。岩肌を擦るような金属音――不気味なその音に、調査隊全員が緊張した。

「動きを止めろ!」
ゼッド中尉が低い声で命令すると、兵士たちは一斉にその場に身を伏せた。中尉が静かに前へ出て、霧の中を目を凝らして覗き込む。

「敵の偵察部隊かもしれねえな……。」
ガルドが斧を構え直しながら呟く。

「いや、数が多すぎる。」
ユリウスが剣を握り直しながら霧の奥に集中する。

霧の中から姿を現したのは、帝国兵の小隊だった。規律正しい隊列を組み、周囲を警戒しながらこちらに向かってくる。明らかにこの峡谷を通る誰かを狙っている様子だ。

「数は10……いや、15か。しかも重装備だ。」
ゼッド中尉が冷静に数を数え、次の行動を決める。

「全員聞け!こいつらを倒さなければ先へ進めん。だが、霧の中だ。奴らの目を利用してこちらから奇襲をかける!」

中尉の指示にガルドが笑みを浮かべる。
「よし、やっと腕が鳴るってもんだ!」

「俺たちが突っ込むのはいいが、敵の全滅を狙ってるわけじゃないだろ?」
ユリウスが静かに問いかけると、中尉はニヤリと笑った。

「ああ、敵の注意を引きつけて乱すだけでいい。エルヴィンを安全に通すのが最優先だ。」

中尉の号令とともに、調査隊は素早く動いた。ガルドとユリウス、ゼッド中尉が先頭を切って敵兵の側面から攻撃を仕掛ける。

「派手にいくぜ!」
ガルドが霧の中から斧を振り下ろし、敵の先頭に立つ兵士を一撃で吹き飛ばす。

「おいおい、音が派手すぎるぞ!」
ユリウスが軽口を叩きながらも、正確に剣を振るい敵兵を倒していく。

「構うな、次だ!」
ゼッド中尉は敵兵の矛先を引きつけるように立ち回り、あえて自分に注意を集める。

奇襲を受けた帝国兵たちは混乱しながらもすぐに態勢を立て直そうとするが、霧の中では目標を定めることが難しい。調査隊はその隙を逃さず、次々と敵兵を撃破していく。

「エルヴィン!」
ユリウスが後方に声を飛ばす。
「今がチャンスだ!お前は先に進め!」

エルヴィンは頷き、バッグをしっかり抱えながら霧の中を走り出した。護衛の兵士が数人、彼を守るために付き従う。

峡谷の奥へ進むエルヴィンたちの前に、最後の障害が現れた。それは帝国兵の精鋭部隊――さらにその中に、見慣れない黒い装甲を纏った騎士の姿があった。

「なんだ……あれは?」
エルヴィンが息を飲むと、護衛の兵士が警告を発する。
「気をつけろ、あれは帝国の実験部隊だ!」

黒い装甲の騎士は、静かに剣を抜き放った。剣から放たれる赤い魔力の輝きが周囲を照らし、その威圧感は一目でただ者ではないと分かる。

「ここが正念場だな……。」
エルヴィンは小さく息を吐き、再び前を向いた。

「装置を完成させた意味を証明するんだ。ここで立ち止まるわけにはいかない!」

彼の決意に呼応するかのように、護衛の兵士たちが武器を構え直す。
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