50 / 196
善人だけの世界
真実1
しおりを挟む
就寝時間を過ぎているので、この村にもう灯りはついていない。
どの家も部屋を暗くして、眠りについている。
しかし巫女としての修行を積むミユは、就寝時間を越えての活動が許されていた。
彼女は修行を終え、コトネが待つ部屋に戻った。
「お疲れ様、お茶でも淹れるよ」
「コトったら、まだ起きてたの?」
巫女装束を着たミユは「ありがとう」と言って服を脱ぎ始めた。
「いつも遅くまで修行してるけど大丈夫なの?」
「平気だよ、私がやりたくてやってることだから。コトネのほうこそ寝てていいんだよ?」
「僕はミユの守護人だぞ?1人でぐーすか眠れないよ」
「ふふ、もう気にしなくていいのに」
軽く笑ったミユは白いローブに着替えた。
そしてコトネの横に座る。
「なんだか今日は目が冴えちゃってるな」
「眠たくないの?」
「あんまり」
「体を休めないと。倒れたりしたら大変だ」
「心配しすぎだって」
2人はお茶を飲みながらダラダラと過ごしていた。
窓から差し込む月明かりしか明かりになるものはないが、特に支障はなかった。
「最近ミユと一緒にいる時間がなくて寂しいよ」
「確かに短くなったけど、山菜取りのときとかは一緒にいる」
「そうたけど、僕はミユの守護人だよ?四六時中一緒にいなきゃ」
「ふふ、ここには敵なんていないよ。コトは本当に心配症なんだね」
クスクスと笑うミユが、自分の本心を分かってくれないことにコトネはもやついた。
今までは隣にいるのが当たり前の関係だったのだが、この村を訪れてそれぞれに役割が与えられたことで離れ離れになる時間ができたことを苦しく思っている。
「ミユのことが大切だから言ってるんだ」
「分かってるよ」
「……まだ眠気はこないの?」
「うん。全然眠くない」
「じゃあ散歩でも行かないか?」
「でももう就寝時間だし」
「コソッと抜け出したらバレないよ。いいだろう?」
ミユはしばし考えたが、「わかった」と言って了承した。
「玄関から出たらバレそうじゃない?」
「窓から出ればいい」
コトネは得意げに言って、部屋の窓を開けた。
そしてミユの体を抱きかかえ、そのまま窓の外に飛び出す。
足音を鳴らさず、2階から地面に着地したコトネはキョロキョロとあたりを見回して人がいないことを確認した。
「よし、行こう」
2人は手を繋いだまま歩き出した。
虫の鳴く声しか聞こえない夜の散歩は、彼女たちにとって久しぶりだ。
ほかの村人に気づかれないように小声で話しながら2人きりのデートを楽しむ。
山の方へ歩いていると、前方に明かりが見えてきた。
ランタンに照らされて、複数人の人影が確認できる。
「あれ?こんな時間に何してるんだろう?」
「僕たち以外にも抜け出している人がいるとはね」
「声かけてみる?」
「やめておこう、怒られたら嫌だし……でも本当に何してるんだろうね」
気になった2人は、人影を尾行することにした。
草木を踏み、彼らはどんどんと奥へと進んでいく。
このあたりは毒蛇などの動物がいて危ないと教えられた場所だ。
恐れて誰も近づかないはずの場所を進む彼らをコトネは訝しむ。
「こんな場所に何の用だ?」
ミユとコトネは追いかけていたが、不意に彼らが立ち止まったので同じように足を止めて木の陰に隠れる。
明かりに照らされ、地面が鮮明になる。
2人は木に隠れながら彼らに近づいた。
不明瞭だった正体が、ランタンの光によって浮かび上がる。
ミユたちが追っていたのはデロリスだったのだ。
ほか数人の村人たちもいる。
そしてその中の1人が、白いローブを着た人間を背負っていた。
どの家も部屋を暗くして、眠りについている。
しかし巫女としての修行を積むミユは、就寝時間を越えての活動が許されていた。
彼女は修行を終え、コトネが待つ部屋に戻った。
「お疲れ様、お茶でも淹れるよ」
「コトったら、まだ起きてたの?」
巫女装束を着たミユは「ありがとう」と言って服を脱ぎ始めた。
「いつも遅くまで修行してるけど大丈夫なの?」
「平気だよ、私がやりたくてやってることだから。コトネのほうこそ寝てていいんだよ?」
「僕はミユの守護人だぞ?1人でぐーすか眠れないよ」
「ふふ、もう気にしなくていいのに」
軽く笑ったミユは白いローブに着替えた。
そしてコトネの横に座る。
「なんだか今日は目が冴えちゃってるな」
「眠たくないの?」
「あんまり」
「体を休めないと。倒れたりしたら大変だ」
「心配しすぎだって」
2人はお茶を飲みながらダラダラと過ごしていた。
窓から差し込む月明かりしか明かりになるものはないが、特に支障はなかった。
「最近ミユと一緒にいる時間がなくて寂しいよ」
「確かに短くなったけど、山菜取りのときとかは一緒にいる」
「そうたけど、僕はミユの守護人だよ?四六時中一緒にいなきゃ」
「ふふ、ここには敵なんていないよ。コトは本当に心配症なんだね」
クスクスと笑うミユが、自分の本心を分かってくれないことにコトネはもやついた。
今までは隣にいるのが当たり前の関係だったのだが、この村を訪れてそれぞれに役割が与えられたことで離れ離れになる時間ができたことを苦しく思っている。
「ミユのことが大切だから言ってるんだ」
「分かってるよ」
「……まだ眠気はこないの?」
「うん。全然眠くない」
「じゃあ散歩でも行かないか?」
「でももう就寝時間だし」
「コソッと抜け出したらバレないよ。いいだろう?」
ミユはしばし考えたが、「わかった」と言って了承した。
「玄関から出たらバレそうじゃない?」
「窓から出ればいい」
コトネは得意げに言って、部屋の窓を開けた。
そしてミユの体を抱きかかえ、そのまま窓の外に飛び出す。
足音を鳴らさず、2階から地面に着地したコトネはキョロキョロとあたりを見回して人がいないことを確認した。
「よし、行こう」
2人は手を繋いだまま歩き出した。
虫の鳴く声しか聞こえない夜の散歩は、彼女たちにとって久しぶりだ。
ほかの村人に気づかれないように小声で話しながら2人きりのデートを楽しむ。
山の方へ歩いていると、前方に明かりが見えてきた。
ランタンに照らされて、複数人の人影が確認できる。
「あれ?こんな時間に何してるんだろう?」
「僕たち以外にも抜け出している人がいるとはね」
「声かけてみる?」
「やめておこう、怒られたら嫌だし……でも本当に何してるんだろうね」
気になった2人は、人影を尾行することにした。
草木を踏み、彼らはどんどんと奥へと進んでいく。
このあたりは毒蛇などの動物がいて危ないと教えられた場所だ。
恐れて誰も近づかないはずの場所を進む彼らをコトネは訝しむ。
「こんな場所に何の用だ?」
ミユとコトネは追いかけていたが、不意に彼らが立ち止まったので同じように足を止めて木の陰に隠れる。
明かりに照らされ、地面が鮮明になる。
2人は木に隠れながら彼らに近づいた。
不明瞭だった正体が、ランタンの光によって浮かび上がる。
ミユたちが追っていたのはデロリスだったのだ。
ほか数人の村人たちもいる。
そしてその中の1人が、白いローブを着た人間を背負っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる