27 / 40
第二章 ツンデレ天邪鬼といっしょ
1-1.
しおりを挟む
1-1.
信じられないような経験―化け物に襲われたり、それを退治する人達と出会ったり―をしたわりには、その後は何もなく。傍らにシロが居る以外には、以前と何も変わらない毎日が過ぎていく中、
「瑞穂!?どうしたの??」
「…いちか~」
休み明け、教室に入った途端目に入ったのは、机の上で完全に萎びてしまっている親友の姿で、
「本当にどうしたの?勉強疲れ?」
本命校の受験日間近、どこまでやっても「これで大丈夫」とは思えない勉強漬けの日々に、私自身疲れきっているからこそ出た言葉。
けれど、それに返ってきたのは唸るような返事だけで、
「瑞穂、しんどいなら帰る?先生に言う?」
「…帰んない、ごめん、凹んでるだけ…」
「凹んでる??」
だとしても、その尋常でない様子に不安が募る。ようやくノロノロと顔を上げ始めた瑞穂の言葉を待てば、
「…喧嘩した…」
「喧嘩?誰と?」
「…大翔…」
「名島くん?」
思いがけない名前が出てきたことに驚く。軽口を叩き合うことはあっても、険悪な仲になった瑞穂達なんて見たことが無かったから。
「…大翔とはずっとクラスが同じだから、仲は良い、んだけど…」
「…うん」
「結局、告白とかはできなくて、ここまできちゃって…」
「…」
何度か聞かされたことのある、瑞穂の恋愛相談。同じ内容でも、その時はもっと、彼女の恋する楽しさが伝わってきたのに―
「大学は別だし、このままじゃ、何にも無いまま終わっちゃうと思って、それは…」
「…嫌、だった?」
「…うん。だから、土曜日に二人で勉強しようって外で会ったんだけど。結局、告白どころか、大喧嘩しちゃって」
瑞穂の口から、生気の無いため息が漏れる。
「今まで、本気の喧嘩とかしたことなかったから、もう、どうしていいかわかんない…」
「瑞穂…」
言い終わった途端、また沈んでいく瑞穂に声をかける。
「…放課後、時間ある?どこか寄ってこうか?話し相手くらいになら成れると思うから」
「でも、一花も勉強…」
「瑞穂がそんなんじゃ、私だって気になって勉強どころじゃないよ。ね?受験前、最後の気晴らしに甘いものでも食べに行かない?」
「一花…ありがとう」
漸く―辛うじてではあるけれど―笑顔を見せてくれた瑞穂に、こちらも気の抜けた笑いが浮かぶ。その瑞穂の顔が瞬時に強張った。
「…」
「…名島くん」
瑞穂の視線の先、教室のドアをくぐった彼女の想い人が、こちらへと視線を向けている。
「瑞穂…?」
「…」
固まってしまった瑞穂に声をかけるが、返事はない。どうしたものかと困り果てて瑞穂を眺めていれば―
「っ!?」
あがりそうになった悲鳴をどうにか飲み込んだ。こちらの不審な様子には気づいた様子のない瑞穂。その彼女の頭の上に座り込む、小さな女の子の姿―
「!」
思わず、肩に乗っているシロを振り向くが、シロは暢気に女の子に向かって手を振っているだけで。
視線を女の子へと戻せば、クスクス笑うその子が、シッポをゆっくりと持ち上げた。細くて長いシッポ、その先は尖ったハート型になっていて、
「!?」
止める間もなく、そのシッポの先が瑞穂の頭に刺さった、ように見えた。
途端、さっきまで不安げな表情で名島を見ていた瑞穂が、表情を変える。そのまま思いっきり名島から視線を逸らして、彼を視界から閉め出してしまった瑞穂の行動に戸惑う。
「…瑞穂?」
「…」
瑞穂の豹変ぶりが恐くなって、無駄かもしれないと思いつつ、彼女の頭の上に手を伸ばした。
「一花?なに?」
「ちょっと、髪に何かついてる」
不審がる瑞穂にそう返して、彼女の頭の上に居座る「女の子」を掴もうとしたのだけれど、
「とれた?」
「…うん、落ちたみたい」
やはり、捕まえることは出来ないらしい。手をすり抜けてしまった「女の子」が、クスクス笑いを残して消えていく―
と同時に、瑞穂が机の上に崩れ落ちた。
「…また、やっちゃった。やな態度とっちゃった。あんなことするつもり、無かったのに…」
「…」
瑞穂が「自分の意思に反してとった」という行動と、確実に関係するだろう先ほどの女の子。
未知に対する不安感に、心が激しくざわめく―
信じられないような経験―化け物に襲われたり、それを退治する人達と出会ったり―をしたわりには、その後は何もなく。傍らにシロが居る以外には、以前と何も変わらない毎日が過ぎていく中、
「瑞穂!?どうしたの??」
「…いちか~」
休み明け、教室に入った途端目に入ったのは、机の上で完全に萎びてしまっている親友の姿で、
「本当にどうしたの?勉強疲れ?」
本命校の受験日間近、どこまでやっても「これで大丈夫」とは思えない勉強漬けの日々に、私自身疲れきっているからこそ出た言葉。
けれど、それに返ってきたのは唸るような返事だけで、
「瑞穂、しんどいなら帰る?先生に言う?」
「…帰んない、ごめん、凹んでるだけ…」
「凹んでる??」
だとしても、その尋常でない様子に不安が募る。ようやくノロノロと顔を上げ始めた瑞穂の言葉を待てば、
「…喧嘩した…」
「喧嘩?誰と?」
「…大翔…」
「名島くん?」
思いがけない名前が出てきたことに驚く。軽口を叩き合うことはあっても、険悪な仲になった瑞穂達なんて見たことが無かったから。
「…大翔とはずっとクラスが同じだから、仲は良い、んだけど…」
「…うん」
「結局、告白とかはできなくて、ここまできちゃって…」
「…」
何度か聞かされたことのある、瑞穂の恋愛相談。同じ内容でも、その時はもっと、彼女の恋する楽しさが伝わってきたのに―
「大学は別だし、このままじゃ、何にも無いまま終わっちゃうと思って、それは…」
「…嫌、だった?」
「…うん。だから、土曜日に二人で勉強しようって外で会ったんだけど。結局、告白どころか、大喧嘩しちゃって」
瑞穂の口から、生気の無いため息が漏れる。
「今まで、本気の喧嘩とかしたことなかったから、もう、どうしていいかわかんない…」
「瑞穂…」
言い終わった途端、また沈んでいく瑞穂に声をかける。
「…放課後、時間ある?どこか寄ってこうか?話し相手くらいになら成れると思うから」
「でも、一花も勉強…」
「瑞穂がそんなんじゃ、私だって気になって勉強どころじゃないよ。ね?受験前、最後の気晴らしに甘いものでも食べに行かない?」
「一花…ありがとう」
漸く―辛うじてではあるけれど―笑顔を見せてくれた瑞穂に、こちらも気の抜けた笑いが浮かぶ。その瑞穂の顔が瞬時に強張った。
「…」
「…名島くん」
瑞穂の視線の先、教室のドアをくぐった彼女の想い人が、こちらへと視線を向けている。
「瑞穂…?」
「…」
固まってしまった瑞穂に声をかけるが、返事はない。どうしたものかと困り果てて瑞穂を眺めていれば―
「っ!?」
あがりそうになった悲鳴をどうにか飲み込んだ。こちらの不審な様子には気づいた様子のない瑞穂。その彼女の頭の上に座り込む、小さな女の子の姿―
「!」
思わず、肩に乗っているシロを振り向くが、シロは暢気に女の子に向かって手を振っているだけで。
視線を女の子へと戻せば、クスクス笑うその子が、シッポをゆっくりと持ち上げた。細くて長いシッポ、その先は尖ったハート型になっていて、
「!?」
止める間もなく、そのシッポの先が瑞穂の頭に刺さった、ように見えた。
途端、さっきまで不安げな表情で名島を見ていた瑞穂が、表情を変える。そのまま思いっきり名島から視線を逸らして、彼を視界から閉め出してしまった瑞穂の行動に戸惑う。
「…瑞穂?」
「…」
瑞穂の豹変ぶりが恐くなって、無駄かもしれないと思いつつ、彼女の頭の上に手を伸ばした。
「一花?なに?」
「ちょっと、髪に何かついてる」
不審がる瑞穂にそう返して、彼女の頭の上に居座る「女の子」を掴もうとしたのだけれど、
「とれた?」
「…うん、落ちたみたい」
やはり、捕まえることは出来ないらしい。手をすり抜けてしまった「女の子」が、クスクス笑いを残して消えていく―
と同時に、瑞穂が机の上に崩れ落ちた。
「…また、やっちゃった。やな態度とっちゃった。あんなことするつもり、無かったのに…」
「…」
瑞穂が「自分の意思に反してとった」という行動と、確実に関係するだろう先ほどの女の子。
未知に対する不安感に、心が激しくざわめく―
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる