召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第四章 聖都への帰還と決意

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何がいけなかったというのか―?

確かに、彼女との始まり方を間違えてしまったことは事実。彼女を敵視し、傲慢で愚かな女だと断じてしまった。

しかし、婚姻を結んだあの日。神の御前で、己の伴侶となった彼女を理解し、支えになろうと誓った気持ちもまた、確かに本物だった。

それなのに―

「フリッツ!どこに行ってたの!?」

義姉上あねうえ。…神殿に出向いておりました」

あの日、彼女がこの地に帰ってきた時から、多くのことが変わってしまった。

目の前、こちらの両腕を掴みながら血走った目で見上げてくる義姉が、ケルステンの家に出戻ってきたのも、その一つ。

「神殿!?そんなことより、レオナルトとはちゃんと会ってくれたの!?私のことを伝えてくれた!?」

「いえ、本日はレオナルト様へのお目通りは叶いませんでした」

「そんな!?」

例え目通りが叶ったとしても、義姉の望む成果は期待できないだろう。間もなく、『元』が付きそうな義兄のレオナルトによると、『巫女が男と逃げた』とする話は全くの噂話に過ぎず、故意に流布された可能性さえあるという。

実際には、彼女は義姉の愛人に拐われたあげく、その身を娼館へ売られていたというのだ。

レオナルトが義姉から聞き出し、自身調査した結果だと、その話を聞かされた時には、頭が真っ白になった。己が信じ、拠り所としていたはずのものが、途端頼りないものへと変わってしまった。

「ねえ、フリッツ、お願いよ。何とかして頂戴」

己の腕にすがりつく義姉の声に、艶が含まれ出したことに気づく。

「あなたのためだったの。あなたとケルステンの家のため、巫女様では駄目だと思ったの」

「…俺の、ため?」

「そうよ!ケルステンのためにはならない巫女様を家から引きはなそうとは思っていたけれど、まさか彼が巫女様を拐うだなんて、そんな大それたことをしていたとは思わなかったの!」

義姉の手が伸びてくる。頬に添えられる手。触れられた途端、

なんだ―?

「…レオナルト様は誤解しているの。あの男は協力者ではあるけれど、それだけなのよ。愛人でも何でもないわ。私にとって大切なのは、レオナルト様とあなただけ」

義姉に触れられたことに、虫酸が走った。必死に耐えて、目の前の女性ひとを見つめる。この人は、俺の義姉。俺を救い上げ、ここまで育ててくれた人。いつでも側に居てくれた。困難には共に立ち向かい、二人で乗り越えてきた。

だから、今だって、義姉のため。義姉の言葉を信じ、彼女を守るために動かなければならないはずなのに―

―俺は、本当にこの人のことを信じている?

自身への問いかけ。己の内に答えを探すが、靄がかかったように答えが見つからない。

途方に暮れた。どうしようもないほど、心もとない思いに駆られる。

―一体どうすればいい?

巫女に拒絶され、義姉への想いに自信が持てない今、俺は―




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