召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第三章 堕とされた先で見つけたもの

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ヴォルフが姿を消してから、半年。当初の取り決め通り、夫婦でありながら、フリッツとはなるべく関わらない生活を送っている。

侯爵家に降嫁したといっても、まだ巫女としての利用価値のある私は、そこそこ大事にされている。貴族としての制約はあるが、神殿に居た頃よりは格段に自由もきくようになった。だから、部屋に籠り続けることも出来るのだけれど、日中は神殿に出向いて、巫女の間に籠る生活を続けている。

家の中では、避けることの出来ない遭遇でフリッツと顔を合わせることがあるし、神殿ではハイリヒが必ず出迎えに現れるから、煩わしさが完全に無くなったわけではない。

聖都を浄化してしまった今、巫女の浄化の力は、結界の外、そこに広がる広大な世界へと向いている。さすがにこの広い世界をあまねく浄化してしまうことは、無理だろうとは思っているけれど、それでも、今は巫女の力が続く限り、この世界の瘴気を祓ってしまいたいと願っている。たった一人、今、どこに居るのかもわからない人の無事を、ひたすらに願って。

―汝、世界を愛せよ

結局、巫女という浄化システムになることを容認してしまった自分への失望はある。聖都の瘴気を祓いきったあの日からしばらくは、怒りや憎しみ、自分の弱さに絶望して何もかもが嫌になってしまっていた。何も見たくない、知りたくない。漫然と流れていく日々、ただ、巫女としての機能だけを果たして。

だけど―

私がこの世界を救ったことが、いつか、次の巫女を生むことになる。その人が、この世界を愛する可能性はあるんだろう。そして、私と同じように、絶望する可能性も。

だから、何か、方法を見つけなくては、と思った。この、『巫女』というシステムを終わらせる方法を。それが不可能なら、不安定な召喚だけでも二度と起きないように。元の世界への帰還は確実に望めるようにする。それが、この世界を滅ぼせなかった私が選んだ、精一杯の抵抗だ。

そのために、今は巫女の間へ通い続ける。この世界の過去について、巫女という浄化システムが造られたその時から、巫女を通して蓄えられた膨大な情報。彼女達が遺したものから、何かを得るために。彼のように、外の世界へ自由に飛び出していく力が無い私の、戦い方で。

そんな、ただひたすらに巫女の間に籠り続ける―傍目からは、以前と全く変わらない―生活に、変化は突然訪れた。

巫女の力が、限界を迎えたのだ―




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