20 / 27
二章
19 エンディング トゥルーエンド?
しおりを挟む
─ジェイクはこのまま逃げて、絶対に生き抜いて。それから…、幸せになってね?
「っ!」
(不甲斐ない不甲斐ない不甲斐ないっ!!)
お嬢様の、最後のお願い。あんな顔で、あんな願いを口にさせてしまった。己に命じるでも、頼るでもなく、ただ、力無き下僕を憐れんだお嬢様の言葉─
(私がっ!私にもっと、力があればっ!)
ただ、ただ、己の無力が許せなかった。
許せぬまま、シュタイラートの屋敷へ戻り、持ち出した魔剣。主を同じくするという意味では、同朋とも言える─
(…お嬢様のため、存分に、役だってもらいますよ。)
一振りの剣を相棒に、向かうはタライト山。かつて、ハプスの町を襲ったドラゴンが逃げ込んだ山─
昼夜を駆けてたどり着いたハプスの町、異変は既に始まっていた。上がる咆哮はあの時と同じ。飲まれたお嬢様をお助けするために、奴の動きを止め、腹を裂いたあの時と。
(…厄介ですね。致命傷を与えたつもりでも、直ぐに回復されてしまう。)
奴を倒すのならば、その驚異的な回復速度を上回るだけの攻撃が必要。ただ、それほどまでの接近を奴が許すはずもなく、近づき過ぎればブレスに焼かれる。
(…本当に厄介、ですが…)
こちらを視認したらしきドラゴンがブレスの予備動作に入る。膨らむ熱量、魔力の塊に、腰に下げた剣を抜く。途端、凍り始めた両手に火魔法を纏わせて─
「来なさい!」
例えこの身が散ろうとも、足止め程度にはなってみせる─!
お嬢様がこの国を出る、その時までは─
「っ!」
(不甲斐ない不甲斐ない不甲斐ないっ!!)
お嬢様の、最後のお願い。あんな顔で、あんな願いを口にさせてしまった。己に命じるでも、頼るでもなく、ただ、力無き下僕を憐れんだお嬢様の言葉─
(私がっ!私にもっと、力があればっ!)
ただ、ただ、己の無力が許せなかった。
許せぬまま、シュタイラートの屋敷へ戻り、持ち出した魔剣。主を同じくするという意味では、同朋とも言える─
(…お嬢様のため、存分に、役だってもらいますよ。)
一振りの剣を相棒に、向かうはタライト山。かつて、ハプスの町を襲ったドラゴンが逃げ込んだ山─
昼夜を駆けてたどり着いたハプスの町、異変は既に始まっていた。上がる咆哮はあの時と同じ。飲まれたお嬢様をお助けするために、奴の動きを止め、腹を裂いたあの時と。
(…厄介ですね。致命傷を与えたつもりでも、直ぐに回復されてしまう。)
奴を倒すのならば、その驚異的な回復速度を上回るだけの攻撃が必要。ただ、それほどまでの接近を奴が許すはずもなく、近づき過ぎればブレスに焼かれる。
(…本当に厄介、ですが…)
こちらを視認したらしきドラゴンがブレスの予備動作に入る。膨らむ熱量、魔力の塊に、腰に下げた剣を抜く。途端、凍り始めた両手に火魔法を纏わせて─
「来なさい!」
例えこの身が散ろうとも、足止め程度にはなってみせる─!
お嬢様がこの国を出る、その時までは─
28
お気に入りに追加
1,146
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~
春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。
かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。
私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。
それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。
だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。
どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか?
※本編十七話、番外編四話の短いお話です。
※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結)
※カクヨムにも掲載しています。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。
農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~
可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる