湯原と水野のダンジョン創世記

焼納豆

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 この泥仕合を制したのは……岩本。

 そう、岩本だけがこの戦闘に参加している中で唯一の生存者だ。

 何処のダンジョンマスターの眷属だろうが、全ての眷属は息絶え、ゴーストも既に死亡している上に、最早どちら側の魔物か分からない程にボロボロになっている魔物達。

「クソ。早く止血を……俺が思うに、まだ……大丈夫だ」

 岩本とて、この混戦で無傷であったわけではない。

 既に彼の右手は損失しており、口と左手を使って必死で止血している。

「こ、これ以上は、俺が思うに、無理……か」

 更なる追撃が来た場合、例えレベルが相当低い魔物であっても負ける可能性が高いので、離脱する事にした岩本は、一気に上層階に向かって行く。

「クック。た、助かった」

 その様子を把握している弦間は、まさかここまで追い詰められるとは思っておらずに、コアルームで安堵の声を漏らしていた。

 岩本が心配していた魔物は残っておらず、召喚するための内包魔力もすっからかん。

 頼みの神保とは一方通行の関係であり、弦間から連絡する事は出来ないし、コアルームに行く事も出来ないので、例え手負いであったとしても岩本には手も足も出なかったところだったのだ。

 一方の神保は、既に二体のゴーストを失った上に更に二体のゴーストを貸し出した事に不満を感じ、ダンジョンに戻ってふて寝していた。

 レベル99は他にはいないと思っているが故の油断だが、二体のゴーストと弦間の眷属全てを出しているのに負けるわけがないと思っている事もある。

「ふぁ~、良く寝た。じゃあ、そろそろ行ってみるかしら」

 どれくらいの時間が経過したかは不明だが、少なくとも戦闘は終了しているだろうと判断して弦間のダンジョンコアルームに飛ぶ神保。

「じ、神保様。た、助かった」

「は?はぁ?何してるの?まさか、アンタまた負けたの?ゴーストは?また失ったの?アンタ、バカなの?」

 もう語彙力がこれしかない神保。

 弦間の廃れようからどう見ても敗北したように見えるのだが、敗北イコール死であるはずなので、正確な情報を得ようと深呼吸する。

「で?どうしたのかしら?」

「そ、それが。ぼ、僕の眷属含め、ぜ、全部死んじゃった。で、でも、岩本の手は、使い物にならない」

 混戦の場にいた魔物達は全て吸収して内包魔力に変換済みであり、身を守るための魔物を召喚している弦間。

 その為に、証拠は一切ないのだが……

「わかったわ。内包魔力、さっきまでは無かったわよね?相手が眷属……だとそうでもないか。召喚冒険者の一部でもあれば、相当内包魔力は増えたでしょう?渡しなさい」

「そ、それが……こ、この魔物召喚で、つ、使い切って……」

 青筋を立てている神保から視線を外してしまう弦間。

「ふ~。確かに、ある程度内包魔力は溜まっていたようね。で、向こう淀嶋・水元はどうなのかしら?」

「け、眷属らしき者達を、倒した感触は、あ、あるので」

「ふん、最低限の仕事は出来たみたいね。でも、今の弦間の内包魔力ではあの二つを配下にする……って、アンタの眷属が全部死んだら、ダンジョン配下の魔法が行使出来ないわよ!何してくれてんのよ!!」

 相手を配下に置く契約は、眷属の誰かが契約魔法を行使できなくてはならない。

 ダンジョンマスターはレベル1なので、そのような魔法は行使できないのだ。

 眷属以外の魔物の場合にはマスターとの繋がりが弱く、契約を行使できないか、場合によっては時間をかけてその契約魔法を破られる可能性が高い。

 神保に至ってはダンジョンの階層があまりにも深くなっているので、契約一つ行使するのにも莫大な内包魔力が必要になるので、今の内包魔力では不可能。

 当初の目的が達成できないばかりか、配下である弦間の戦力も激減してしまい憤慨する神保。

「仕方がないわね。取り敢えず私が行くわよ。アンタも来なさい!ここコアの守りは、本当に最後!ゴーストをおいてあげるわ」

 相変わらずゴーストを使っている神保だが潤沢に在庫がある訳ではなく、新たな召喚も出来ない。

 レベル80の魔物を召喚するだけの内包魔力が無いので、残り数体の内の一体を弦間のダンジョンコアルームに置いて、一体を自分の守り、残り二体をそれぞれ淀嶋と水元のダンジョンに向かわせた。

 二人を始末するのではなく強制的に動かすためには契約魔法が一番なのだが、できない以上は次の手を使う。

 レベル1である二人のダンジョンマスターに対して、傍に自らの召喚魔物であるゴーストを配置し、強制的に動かす事にした。

 淀嶋と水元のダンジョンも壊滅的なダメージを受けており、何とか弦間側の魔物達を吸収して召喚魔物を配置したのだが、その程度の魔物はゴーストの敵ではなく……あっけなくコアルームにまで侵入されて、その後は神保の予定通りに強制的に配下としての立ち位置に甘んじる事になっていた。
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