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25話 屋台完成
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数日後。
ようやくその日になったので、大工屋にやってきた。
「いらっしゃいませ~あれ、完成してますよ~!」
店員のメイナさんが親指を立てて見せる。
早速完成した屋台がある場所まで案内を受けた。
そこには、大工のセビルさんが待っていてくれて、目が合うと「良い仕上がりだぜ」と笑顔を見せる。
シートにくるまれた屋台と思われる物の前に立つと、少し緊張してくる。
「では、行くぞ!」
「はいっ!」
セビルさんがシートを勢いよく取り払った。
ふんわりと宙を舞うシート。その中から現れたのは――――これから僕達の人生を変えると言っても過言ではない物が姿を見せた。
元々予定していたのは【移動式屋台】だった。もちろん、今でもその予定だ。でも、僕達の前に立つ屋台に車は付いていない。なので押したりして移動はできない。
屋台は二段式になっており、左側と右側に分かれている。
左側は主に僕のための屋台で、厨房となっている。中は外から見えるようになってはいるが実はあまり意味はない。カウンターには木製の大きめなプレートが百個積み重なっている。これも特注のプレートだ。分厚く作られているので故意に壊さない限りは壊れそうにない。
屋根が屋台全体よりも大きく雨が降ったとしても中には一切雨が入らず、日の光も中に刺しこめない作りになっている。
正面は見開きとなっており、料理屋や屋台といえばこれ! と分かる、のれんが掛けられている。そこには綺麗な刺繡で【自由の翼】と書かれている。これが僕らの屋台の名前だ。
意味としては、今まで柵で生きてきた僕とセレナが自由になり、世界を歩き回るための翼になって欲しいという意味を込めている。
左側は基本的に厨房の役割でこのような作りになっている。
カウンターから真っすぐ屋根を伝って右側に見える屋台に向かう。
そこには食堂のようにテーブルと椅子が沢山並んでいる。椅子も掃除ができるように自立型を採用した。ただあくまで屋台なのでのんびりする場所ではないから、木製椅子になっている。
テーブルは全てで十席。それぞれ四人が対面式で座る長方形を選んだ。椅子は四十人分だ。
周りの景色を見れるように前世でいうビニールカーテンに似たものを採用して囲っているが、開け閉めができるようになっているので、雨が降らない限りはオープンにしておく予定だ。
ビニールカーテンを引き戸にして両開きできるようにしたのは初めてのことらしくて、このやり方をセビルさんがいたく気に入った様子。アイデアを買わせて欲しいとまで言われた。
まあ、前世の知識によるものなので、ぜひ使ってくださいと言っておいた。
「どうだ。良い出来だろ?」
「はい! とても素晴らしいです! これならどこでも屋台が開けます」
「丈夫さにも自信がある。特殊な木材を使っているからそこら辺の魔物に飛ばされても壊れたりはしないはずだ。まあ、あまり過信はしないようにな」
「分かりました」
「それにしても、こんなデカい屋台。どうやって持っていくつもりだ? 嬢ちゃんがいくら力持ちでも、こんなデカい屋台を常に持ち運べないと思うぞ?」
二段式にもなっている屋台は、屋根が繋がった作りになっているので、そもそも分離もできない。それに足元に車もついてないので転がして動かすこともできない。
「問題ありません。これを運ぶ方法は元々考えてましたから――――ではさっそく!」
僕は両手を屋台に向ける。
そして、唱えた。
「――――簡易収納~!」
僕の言葉に呼応して屋台全体が虹色の光に包まれると、一瞬でその姿を消した。
「「消えた!?」」
一緒に見ていたセビルさんとメイナさんが驚く。
「うん。これでいつでも出し入れできます。こんなに素敵な屋台を作ってくださってありがとうございます!」
「お、おう! 気に入ってくれて本当に良かった」
「後ほど試しに店を開きますので、ぜひいらしてください!」
二人は少しポカーンとしていたけど、訪れると言ってくれた。
こんなにも素晴らしい屋台を買えたことを嬉しく思う。
ようやくその日になったので、大工屋にやってきた。
「いらっしゃいませ~あれ、完成してますよ~!」
店員のメイナさんが親指を立てて見せる。
早速完成した屋台がある場所まで案内を受けた。
そこには、大工のセビルさんが待っていてくれて、目が合うと「良い仕上がりだぜ」と笑顔を見せる。
シートにくるまれた屋台と思われる物の前に立つと、少し緊張してくる。
「では、行くぞ!」
「はいっ!」
セビルさんがシートを勢いよく取り払った。
ふんわりと宙を舞うシート。その中から現れたのは――――これから僕達の人生を変えると言っても過言ではない物が姿を見せた。
元々予定していたのは【移動式屋台】だった。もちろん、今でもその予定だ。でも、僕達の前に立つ屋台に車は付いていない。なので押したりして移動はできない。
屋台は二段式になっており、左側と右側に分かれている。
左側は主に僕のための屋台で、厨房となっている。中は外から見えるようになってはいるが実はあまり意味はない。カウンターには木製の大きめなプレートが百個積み重なっている。これも特注のプレートだ。分厚く作られているので故意に壊さない限りは壊れそうにない。
屋根が屋台全体よりも大きく雨が降ったとしても中には一切雨が入らず、日の光も中に刺しこめない作りになっている。
正面は見開きとなっており、料理屋や屋台といえばこれ! と分かる、のれんが掛けられている。そこには綺麗な刺繡で【自由の翼】と書かれている。これが僕らの屋台の名前だ。
意味としては、今まで柵で生きてきた僕とセレナが自由になり、世界を歩き回るための翼になって欲しいという意味を込めている。
左側は基本的に厨房の役割でこのような作りになっている。
カウンターから真っすぐ屋根を伝って右側に見える屋台に向かう。
そこには食堂のようにテーブルと椅子が沢山並んでいる。椅子も掃除ができるように自立型を採用した。ただあくまで屋台なのでのんびりする場所ではないから、木製椅子になっている。
テーブルは全てで十席。それぞれ四人が対面式で座る長方形を選んだ。椅子は四十人分だ。
周りの景色を見れるように前世でいうビニールカーテンに似たものを採用して囲っているが、開け閉めができるようになっているので、雨が降らない限りはオープンにしておく予定だ。
ビニールカーテンを引き戸にして両開きできるようにしたのは初めてのことらしくて、このやり方をセビルさんがいたく気に入った様子。アイデアを買わせて欲しいとまで言われた。
まあ、前世の知識によるものなので、ぜひ使ってくださいと言っておいた。
「どうだ。良い出来だろ?」
「はい! とても素晴らしいです! これならどこでも屋台が開けます」
「丈夫さにも自信がある。特殊な木材を使っているからそこら辺の魔物に飛ばされても壊れたりはしないはずだ。まあ、あまり過信はしないようにな」
「分かりました」
「それにしても、こんなデカい屋台。どうやって持っていくつもりだ? 嬢ちゃんがいくら力持ちでも、こんなデカい屋台を常に持ち運べないと思うぞ?」
二段式にもなっている屋台は、屋根が繋がった作りになっているので、そもそも分離もできない。それに足元に車もついてないので転がして動かすこともできない。
「問題ありません。これを運ぶ方法は元々考えてましたから――――ではさっそく!」
僕は両手を屋台に向ける。
そして、唱えた。
「――――簡易収納~!」
僕の言葉に呼応して屋台全体が虹色の光に包まれると、一瞬でその姿を消した。
「「消えた!?」」
一緒に見ていたセビルさんとメイナさんが驚く。
「うん。これでいつでも出し入れできます。こんなに素敵な屋台を作ってくださってありがとうございます!」
「お、おう! 気に入ってくれて本当に良かった」
「後ほど試しに店を開きますので、ぜひいらしてください!」
二人は少しポカーンとしていたけど、訪れると言ってくれた。
こんなにも素晴らしい屋台を買えたことを嬉しく思う。
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