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93 転機
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レベル60を達成する目処もついて、初の上位ダンジョン踏破に挑戦する。
だけど、直後にはジュリアを探しに行く。
そして見つけられたら、息の根を止めよう。返り討ちにされるなら、それも仕方ない。私の考え方もシンプルになった。
早めにやるべきだと思ったのは、エルキールさんの行動と、愛しいミールの言葉のせいだ。
エルキールさんが奥さんの命を救うため、用意したのがジュリアの情報。
きっと、ありきたりのプロフィールなどではなく、秘密の公務日程とか、暗殺に使えるやつだ。
ジュリアと私の両方が生きている限り、誰かが再び「治療」の交渉のカードに使ってくる可能性がある。
そしてナリスの妹のターニャのときのように、意外な人間が危険に巻き込まれるかもしれない。
思案し始めたときに、ミールの懺悔だ。
今、オルシマの街に帰ってきてミールと食事に来ている。
そこで切り出された。
「・・ごめん、ユリナ様、勝手に調べた」
「え?」
「ユリナ様がカナワの街でお友達をなくした原因が、ジュリアって女だってこと・・」
ミールの目が決意を物語っている。私のために人殺しをする気だ。
彼女は私に懐いている。その理由もある。
前歴から考えても情報収集能力に長けて戦闘力もあるミールが、何をするか考えるべきだった。
恐らく自分の子供が持てない私は、まだ接する時間が少なくても、ミールが愛おしい。
私の『超回復』で傷が治り、私が求めていないくらい感謝してくれる。この後も、私のために危険を冒すだろう。
そして、ミールの後続が出てくる可能性も十分にある。
「ミール、私の代わりに手を汚そうと言うの?」
「・・・」
「気持ちは受け取るけど、ジュリアも私自身で決着を着けるわ」
「・・も?」
すでに「風のカルナ」に始まり、数人の仇を倒していることを話した。「光のマリリ」に恨みを感じないことも話した。
「だから、私は自分の意思を持って人を殺している」
「分かった・・。ユリナ様がオルシマに住む気なら、待ってる」
「ところで、ジュリアだけでなく実家のマアミ侯爵家まで簡単に辿り着いたわね」
「そのジュリアって北のジョアンヌ聖国の侯爵家に第二婦人として嫁入りするの」
「そうなの?」
「うん。ジュリアまで辿り着くのと違い、嫁入りの話は簡単に手に入った」
ジュリアの母親は身分が低くても、父親はマアミ侯爵家の当主。十分にあり得る話だ。
本人に取っていい話なのか否か判別はつかない。
だけど、ここで奈落の底に落としてしまおう。
◆◆
決意はした。
下手すれば、もうオルシマには帰ってこれないかも。6日ほど街で普通に過ごすことにした。
スマトラさんとこに行くと、アルバ、サルバ、メルバ、ジェルバ4兄弟も揃い、久々の7人一緒に出掛けた。
冒険者ギルドに行き、Bランクパーティー推奨の上級ダンジョン40階ボスを出した。
レベル測定をしたら、レベル49。Cランク試験を受けられるのは58日後。
オルシマにきて122日。4ヶ月を過ぎていた。
素材を換金して孤児院に寄付金を持って行き、オークジェネラルの肉を出してご飯を頂いた。普段は長男アルバさんと2人でやる活動だ。
その足で酒場に行って、エールで乾杯。末っ子のジェルバさんとは良くいくが、多人数は久々だ。
夜中になって三男メルバさんと合流して勝手に人を治療する「ホネマスク」活動をした。
対象は街の薬屋のご主人ベカンさん。寝ているところを家に押し入り、壊れた心臓を盗んで地獄心臓に取り替えた。
という、設定で治療をした。
メルバさんが私と出会う前、火傷跡と仮面のスタイルのときから、気にかけてくれたそうだ。
「ホネマスク」も含めて、ジュリアのことが解決したら再開したい。
◆
婚姻準備中のジュリアがいると思われる実家のマアミ侯爵家まで北に1200キロ。
倒しかたのビジョンはぼんやりと考えている。
達成できたなら、距離を利用したアリバイ作りだ。
冒険者ギルドのギルマスに、人間を運んだ最速記録を聞いてみた。過去には、王都を出発した大使がオルシマの南にある国境までの早馬で10日で行った記録がある。
距離は1300キロ。馬を20~30キロごとに用意して乗り換え、寝るときと食べるとき以外は大使が馬に乗って作った記録だ。
ちなみに大使は腰、首を傷めて、使命を果たしたあと辞職したらしい。
冒険者に移動力がある人間もいて、高速移動で1日に200キロを稼げる猛者いる。単純計算なら1200キロを6日で踏破できる。
しかし体の負担が大きく、500キロを越えると平均ペースが大幅に落ちてしまう。1000キロで早くても10日と見るべきだそうだ。
私は恐らく、レベル60になれば瞬間で時速40キロ以上で走れる。レベル34のミールよりはるかに遅いが、私には秘策がある。
「超回復、等価交換コンボ」を使い続ければ、少し余裕を持って時速40キロとして侯爵領までの1200キロを30時間で走り切れる。私は「超」が5つ付くくらいの長距離ランナーになれるのだ。
今からダンジョンに潜り、出たらダンジョン前のギルド出張所でギルドカードに記録を残す。そこからジュリアの元に行き、ジュリアに報復できたときは報復時点から2日以内に帰ってくる。
再びオルシマでギルドカードで記録を残せば、色んな面から見ても、私が犯行を行うのは無理となる。
レベル60のため、そして1200キロを走るため、「等価交換」の材料にダチョウを160匹ほど消費する計算だが、これも手持ち分で足りる。
まずはダンジョンだ。
拠点にして128日になるオルシマの街に一旦は別れを告げた。
だけど、直後にはジュリアを探しに行く。
そして見つけられたら、息の根を止めよう。返り討ちにされるなら、それも仕方ない。私の考え方もシンプルになった。
早めにやるべきだと思ったのは、エルキールさんの行動と、愛しいミールの言葉のせいだ。
エルキールさんが奥さんの命を救うため、用意したのがジュリアの情報。
きっと、ありきたりのプロフィールなどではなく、秘密の公務日程とか、暗殺に使えるやつだ。
ジュリアと私の両方が生きている限り、誰かが再び「治療」の交渉のカードに使ってくる可能性がある。
そしてナリスの妹のターニャのときのように、意外な人間が危険に巻き込まれるかもしれない。
思案し始めたときに、ミールの懺悔だ。
今、オルシマの街に帰ってきてミールと食事に来ている。
そこで切り出された。
「・・ごめん、ユリナ様、勝手に調べた」
「え?」
「ユリナ様がカナワの街でお友達をなくした原因が、ジュリアって女だってこと・・」
ミールの目が決意を物語っている。私のために人殺しをする気だ。
彼女は私に懐いている。その理由もある。
前歴から考えても情報収集能力に長けて戦闘力もあるミールが、何をするか考えるべきだった。
恐らく自分の子供が持てない私は、まだ接する時間が少なくても、ミールが愛おしい。
私の『超回復』で傷が治り、私が求めていないくらい感謝してくれる。この後も、私のために危険を冒すだろう。
そして、ミールの後続が出てくる可能性も十分にある。
「ミール、私の代わりに手を汚そうと言うの?」
「・・・」
「気持ちは受け取るけど、ジュリアも私自身で決着を着けるわ」
「・・も?」
すでに「風のカルナ」に始まり、数人の仇を倒していることを話した。「光のマリリ」に恨みを感じないことも話した。
「だから、私は自分の意思を持って人を殺している」
「分かった・・。ユリナ様がオルシマに住む気なら、待ってる」
「ところで、ジュリアだけでなく実家のマアミ侯爵家まで簡単に辿り着いたわね」
「そのジュリアって北のジョアンヌ聖国の侯爵家に第二婦人として嫁入りするの」
「そうなの?」
「うん。ジュリアまで辿り着くのと違い、嫁入りの話は簡単に手に入った」
ジュリアの母親は身分が低くても、父親はマアミ侯爵家の当主。十分にあり得る話だ。
本人に取っていい話なのか否か判別はつかない。
だけど、ここで奈落の底に落としてしまおう。
◆◆
決意はした。
下手すれば、もうオルシマには帰ってこれないかも。6日ほど街で普通に過ごすことにした。
スマトラさんとこに行くと、アルバ、サルバ、メルバ、ジェルバ4兄弟も揃い、久々の7人一緒に出掛けた。
冒険者ギルドに行き、Bランクパーティー推奨の上級ダンジョン40階ボスを出した。
レベル測定をしたら、レベル49。Cランク試験を受けられるのは58日後。
オルシマにきて122日。4ヶ月を過ぎていた。
素材を換金して孤児院に寄付金を持って行き、オークジェネラルの肉を出してご飯を頂いた。普段は長男アルバさんと2人でやる活動だ。
その足で酒場に行って、エールで乾杯。末っ子のジェルバさんとは良くいくが、多人数は久々だ。
夜中になって三男メルバさんと合流して勝手に人を治療する「ホネマスク」活動をした。
対象は街の薬屋のご主人ベカンさん。寝ているところを家に押し入り、壊れた心臓を盗んで地獄心臓に取り替えた。
という、設定で治療をした。
メルバさんが私と出会う前、火傷跡と仮面のスタイルのときから、気にかけてくれたそうだ。
「ホネマスク」も含めて、ジュリアのことが解決したら再開したい。
◆
婚姻準備中のジュリアがいると思われる実家のマアミ侯爵家まで北に1200キロ。
倒しかたのビジョンはぼんやりと考えている。
達成できたなら、距離を利用したアリバイ作りだ。
冒険者ギルドのギルマスに、人間を運んだ最速記録を聞いてみた。過去には、王都を出発した大使がオルシマの南にある国境までの早馬で10日で行った記録がある。
距離は1300キロ。馬を20~30キロごとに用意して乗り換え、寝るときと食べるとき以外は大使が馬に乗って作った記録だ。
ちなみに大使は腰、首を傷めて、使命を果たしたあと辞職したらしい。
冒険者に移動力がある人間もいて、高速移動で1日に200キロを稼げる猛者いる。単純計算なら1200キロを6日で踏破できる。
しかし体の負担が大きく、500キロを越えると平均ペースが大幅に落ちてしまう。1000キロで早くても10日と見るべきだそうだ。
私は恐らく、レベル60になれば瞬間で時速40キロ以上で走れる。レベル34のミールよりはるかに遅いが、私には秘策がある。
「超回復、等価交換コンボ」を使い続ければ、少し余裕を持って時速40キロとして侯爵領までの1200キロを30時間で走り切れる。私は「超」が5つ付くくらいの長距離ランナーになれるのだ。
今からダンジョンに潜り、出たらダンジョン前のギルド出張所でギルドカードに記録を残す。そこからジュリアの元に行き、ジュリアに報復できたときは報復時点から2日以内に帰ってくる。
再びオルシマでギルドカードで記録を残せば、色んな面から見ても、私が犯行を行うのは無理となる。
レベル60のため、そして1200キロを走るため、「等価交換」の材料にダチョウを160匹ほど消費する計算だが、これも手持ち分で足りる。
まずはダンジョンだ。
拠点にして128日になるオルシマの街に一旦は別れを告げた。
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