39 / 188
39 『火炎気功術』そして偽ユリナ
しおりを挟む
ターニャが、大きなトレントに捕まった。
これまで倒した6体より、進化した化け物。
引っ張られるターニャを子供達が追おうとしたが、私が止めた。
「1人なら私が助けられる。みんなが動かないで」
走りながら左手のナイフで自分の首を2度、3度と切った。
ターニャを捕まえている蔓を、まず処分したい。
つかんで「等価交換」
大失敗した。
トレントの養分より先にターニャから栄養を奪ってしまった。
「等価交換」で吸い取る順番があるが、「肉」が「枝」より先。実験したことあるのに、慌てすぎて忘れてた。
右足がしぼんだターニャに『超回復』をかけて治した。あせった。
等価交換システムの優先順位が、ここでマイナスに働いた。
トレントは魔物。だけど「等価交換システム」では材木扱いとみえる。
収納指輪から大剣を出して蔓を切った。だけど、退避路も塞がれた。
新技を使うしかない。
収納指輪から火属性ドラゴンパピーの鱗を出した。
「ぶっつけ本番だ。炎の「等価交換」!」
ぼわっ。
私の皮膚が真っ赤な鱗状に変化して熱を帯びた。
『等価交換』。まずまずの熱量に、少しだけ私の体の中が焦げている。
肉が焼ける、香ばしい匂いがする。
トレントは、火属性が弱点。大した熱量でもないが、ひるんでくれた。
あとはひたすらトレントの幹を殴った。
火属性は木の魔物に効果あり。あせったトレントの攻撃は私に集中してくれた。
ばき、ばきばきばき!
ターニャを守りながら倒せた。
「ユリナさん、そ、それは」
「ユリナさんは、ドラゴニュートだったのかよ」
「すげ、格好いい。なんて技です?」
「えーと、火炎気功術?」
「なんで自分の技に、疑問形なんだよ・・」
「でも助かりました。ユリナさん、これって今までのトレントより2つは格上ですよ」
「そうか。1本だけ高価じゃ7等分しにくいか」
「いや、そこじゃなく・・」
「もう一本いっとくか」
「軽いっす」
幸い、ノーマルトレントが見つかったので「超回復、等価交換コンボ」で倒した。これで7本。
進化種もナリスパパに渡しておいた。
トレントの「枝ソード」作りを子供に頼み、対価はトレントの幹にした。
◆◆
トレントの枝は弾力もあり折れにくい。
ゴブリンで実験。トレントの枝を介した「等価交換」はうまくいった。
大まかに言えば肉、内臓、トレントの枝の順番に吸収。最後にゴブリンの皮と骨が残った。
2~4メートルの、有機物接触、に使うトレントの枝が50本ほど作れた。
とっさに名付けた「火炎気功術」の赤い皮膚は、2日ともたず消えた。
やっぱりコスパが悪い。
しばらくは子供達の武器の材料になるスモールロックタートル、トレントの狩りに付き合って過ごした。
そして、もう1人の「ユリナ」が来る日を迎えた。
◆◆
ターニャとダンは、ナリスの墓の前で待ち合わせている。
お金を置いていったし、ナリスのお墓を作ってくれた。
その上に、ナリスが死んだ経緯まで知っていた。
とにかく行ってみればどんな人か分かる。
村の外れにある集合墓地。
晴れてる。女性はいた。
ターニャに聞いていた通りの背格好。
ナリスの墓の前で、しばらくの間、祈っていた。
ブルーのきれいな服。
遠目に見る感じでは謝っているようにも、泣いているようにも見えた。
「ユリナさん。もう1人のユリナさんもお墓参りにきてくれてますよ」
「誰だろ。知ってる気がするけどえ~と・・」
「!」
振り向いた奴の顔を見て、視界が歪んだ。
なんで、あいつがいる。
私は反射的に、ターニャとダンの肩をつかんだ。
私の後ろに下がらせた。
血が沸騰しそうだ。
絶対に忘れられない、あの顔。
なんでナリスの墓に祈っている。
私の剥き出しの殺意。
驚いたターニャとダンは、数歩下がった。
なのに、あいつ、私を見ても驚いてない。
「・・あなた、ナリスと友達のふりしてたのね・・」
「そんなつもりはない。弔いに来たの・・」
「弔う?」
私達に優しくして、信頼させて、そして騙して殺した。
仲間を殺した6人の中で、一番ナリスと仲が良かった。いや、いいふりをした。
知ってるどころじゃない。
「簡単に罠にかかったナリスを嘲笑いにきたのか・・」
ターニャ弟妹が、びくっと反応した。
「お前は、殺すリストに入っている」
ナリスに誓って、ターニャとダンに手は出させない。
「覚悟しろ、シクル・・」
私の名前を騙った、あいつの名前はシクル。
憎い仇の1人、氷のシクルだ。
これまで倒した6体より、進化した化け物。
引っ張られるターニャを子供達が追おうとしたが、私が止めた。
「1人なら私が助けられる。みんなが動かないで」
走りながら左手のナイフで自分の首を2度、3度と切った。
ターニャを捕まえている蔓を、まず処分したい。
つかんで「等価交換」
大失敗した。
トレントの養分より先にターニャから栄養を奪ってしまった。
「等価交換」で吸い取る順番があるが、「肉」が「枝」より先。実験したことあるのに、慌てすぎて忘れてた。
右足がしぼんだターニャに『超回復』をかけて治した。あせった。
等価交換システムの優先順位が、ここでマイナスに働いた。
トレントは魔物。だけど「等価交換システム」では材木扱いとみえる。
収納指輪から大剣を出して蔓を切った。だけど、退避路も塞がれた。
新技を使うしかない。
収納指輪から火属性ドラゴンパピーの鱗を出した。
「ぶっつけ本番だ。炎の「等価交換」!」
ぼわっ。
私の皮膚が真っ赤な鱗状に変化して熱を帯びた。
『等価交換』。まずまずの熱量に、少しだけ私の体の中が焦げている。
肉が焼ける、香ばしい匂いがする。
トレントは、火属性が弱点。大した熱量でもないが、ひるんでくれた。
あとはひたすらトレントの幹を殴った。
火属性は木の魔物に効果あり。あせったトレントの攻撃は私に集中してくれた。
ばき、ばきばきばき!
ターニャを守りながら倒せた。
「ユリナさん、そ、それは」
「ユリナさんは、ドラゴニュートだったのかよ」
「すげ、格好いい。なんて技です?」
「えーと、火炎気功術?」
「なんで自分の技に、疑問形なんだよ・・」
「でも助かりました。ユリナさん、これって今までのトレントより2つは格上ですよ」
「そうか。1本だけ高価じゃ7等分しにくいか」
「いや、そこじゃなく・・」
「もう一本いっとくか」
「軽いっす」
幸い、ノーマルトレントが見つかったので「超回復、等価交換コンボ」で倒した。これで7本。
進化種もナリスパパに渡しておいた。
トレントの「枝ソード」作りを子供に頼み、対価はトレントの幹にした。
◆◆
トレントの枝は弾力もあり折れにくい。
ゴブリンで実験。トレントの枝を介した「等価交換」はうまくいった。
大まかに言えば肉、内臓、トレントの枝の順番に吸収。最後にゴブリンの皮と骨が残った。
2~4メートルの、有機物接触、に使うトレントの枝が50本ほど作れた。
とっさに名付けた「火炎気功術」の赤い皮膚は、2日ともたず消えた。
やっぱりコスパが悪い。
しばらくは子供達の武器の材料になるスモールロックタートル、トレントの狩りに付き合って過ごした。
そして、もう1人の「ユリナ」が来る日を迎えた。
◆◆
ターニャとダンは、ナリスの墓の前で待ち合わせている。
お金を置いていったし、ナリスのお墓を作ってくれた。
その上に、ナリスが死んだ経緯まで知っていた。
とにかく行ってみればどんな人か分かる。
村の外れにある集合墓地。
晴れてる。女性はいた。
ターニャに聞いていた通りの背格好。
ナリスの墓の前で、しばらくの間、祈っていた。
ブルーのきれいな服。
遠目に見る感じでは謝っているようにも、泣いているようにも見えた。
「ユリナさん。もう1人のユリナさんもお墓参りにきてくれてますよ」
「誰だろ。知ってる気がするけどえ~と・・」
「!」
振り向いた奴の顔を見て、視界が歪んだ。
なんで、あいつがいる。
私は反射的に、ターニャとダンの肩をつかんだ。
私の後ろに下がらせた。
血が沸騰しそうだ。
絶対に忘れられない、あの顔。
なんでナリスの墓に祈っている。
私の剥き出しの殺意。
驚いたターニャとダンは、数歩下がった。
なのに、あいつ、私を見ても驚いてない。
「・・あなた、ナリスと友達のふりしてたのね・・」
「そんなつもりはない。弔いに来たの・・」
「弔う?」
私達に優しくして、信頼させて、そして騙して殺した。
仲間を殺した6人の中で、一番ナリスと仲が良かった。いや、いいふりをした。
知ってるどころじゃない。
「簡単に罠にかかったナリスを嘲笑いにきたのか・・」
ターニャ弟妹が、びくっと反応した。
「お前は、殺すリストに入っている」
ナリスに誓って、ターニャとダンに手は出させない。
「覚悟しろ、シクル・・」
私の名前を騙った、あいつの名前はシクル。
憎い仇の1人、氷のシクルだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
164
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる