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38 初のトレント狩り
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トレントの森と聞いて、むしろ飛び付いた。
目的はもちろん、木の魔物トレントの枝だ。
これは私の大きな武器になる可能性がある。
「有機物接触」で魔物から栄養を吸い取る道具になる。
木の化け物トレントは長い枝で攻撃してくるから、その中に細いものを狙う。
すでに普通の木の枝で実験済み。枝を仲介して、「等価交換」でラビットの肉を吸い上げられた。
ただ木の枝は強度が低い。
しなやかで強い、トレントの枝。「革ひも流星錘」と使い分けられたら、私の生存率が上がる。
「爪と牙」のように、トレントと普通の木が。似て非なるもの、の場合はあきらめる。
◆
初回は案内人付きだ。
ターニャとダンも付いてきた。目的は弓や家具の材料集め。
2人には風魔法の適正がある。弓との相性がいい。
ターニャには初対面で迷惑をかけたし、死んだナリスにそっくり。
だから、可能な限りリクエストを聞きたい。
お父さんに森の浅瀬で帰ってくるとこを条件に、2人は許可をもらった。
どこから聞き付けたか、村の子供が男2人、女3人増えて計8人で行動。
ドラゴンパピーを無傷で倒せる、バケモノ姉ちゃんだそうだ、私って。
160センチ以下の子供はいない。
だから、風のカルナと水のウインほかから奪った、高級装備の中から合うものを装着させた。
木の魔物トレントの生息地まで来た。
子供達は弓を構えて1本の木を警戒している。
うむ、やはり私には分からない。
直径1メートル、高さ15メートル。周囲の木に、見事に溶け込んでいる。
「ちょっと、先に戦わせてもらうわよ」
「ちょっと、待ってよユリナさん」
「武器と防具は?」
「危ないって」
「私、気功武術家なんで」
子供達の前で最強フォーム「裸」になる勇気がない私。
ミスリルタンクトップとミスリルふんどし。左手ナイフ、右手に手甲のみ。
紐だけに守られた私のお尻。男の子の視線が痛い。
「ユリナさん、危ないですって!」
無造作に木に接近すると、5本の枝が襲いかかってきた。
枝が首と両足、胴体に巻き付いて、私を引き裂こうとする。
首から、ごきんって音。これが私オリジナルの戦いのゴングだ。
「気功拳!」
子供達にウケるように叫んだ。本当は『超回復』「等価交換」のコンボだ。
「え?トレントの枝がしおれて弾かれた!」
ざわつくギャラリーの前で私はトレントの幹に近づいた。
右手のビス付き手甲で木の幹を殴った。左手のナイフは幹でなく、自分の腹を刺している。
『超回復』「等価交換」を繰り返し、トレントの枝攻撃も枝をひからびさせて退けた。
これで、ひらからびるということは、トレントも有機物に決定。
5分くらいかけ、幹の同じとこに切り込みを入れて倒して討伐。
これで森の入り口の最弱レベル。ま、移動しないってことは、強くなっても問題なしってことだけどね。
異様な戦い方に目を丸くする子供達をうながして、次のトレントを探してもらった。
サクサクと6本のトレントを倒して収納指輪に入れた。
子供達は7人。
「あと1本トレントを倒したら帰りましょ。次を探して」
「ユリナさん。本当に細くて長い枝だけ、ユリナさんに渡せばいいんですか」
「うん。必要なら家族にもあげて。私は気功で使う長い枝があればいい」
「幹に価値がありますよ」
「1本丸々で30万ゴールドだぞ」
「もらいすぎ。僕でも分かるよ」
彼らは善良だ。そして村の大人も優しい。
ナリスに「無能」の烙印を押したのは近隣3つの村。
だけど責められない。
納得はできないけど、烙印には根拠がなくても理由はある。
ナリスの村と周囲3村は親戚関係にある者も多い。
適齢期になった若者が村を越え交流を持つ。結婚することで、厳しい環境で生きる彼らの協力関係も築ける。
ナリスにも隣村に彼氏がいた。
だけどナリスは15歳を過ぎても、スキルも何も得られなかった。
本人同士は好き合っていた。
だけど、スキルありきで魔物と戦っている狩人の村の人は「無能の子」を恐れる。
死活問題だから、誰も歓迎できない。
劣等人から、普通のスキル持ちも生まれる。だけど、やっぱり怖がられる。
隣村の彼氏カールはナリスとの結婚を希望していた。
だが、彼はその家の1人息子。親を捨てて、ナリスと一緒に街に出るのも難しかった。
周囲の村に知られている、1000人に1人の劣等人。
ナリスは自分と結婚すれば、カールに迷惑がかかる。そう思い、カールに黙って村を出た。
その話をターニャから聞いて、涙が出た。
「ユリナさん、ぼーっとして、どうかしましたか」
「あ、いやいや。最後のトレントはどこ?」
みんなが指さす方を見ると、今までのトレントの倍くらい幹が太かった。
「あれですが、ちょっと大きいし、・・・」
ずるっ。
ターニャの脚に蔓が巻き付き、一気に木の方に引き寄せられた。
「進化個体だヤバい。姉ちゃん!」
ダンの声を聞いて走り出した。
目的はもちろん、木の魔物トレントの枝だ。
これは私の大きな武器になる可能性がある。
「有機物接触」で魔物から栄養を吸い取る道具になる。
木の化け物トレントは長い枝で攻撃してくるから、その中に細いものを狙う。
すでに普通の木の枝で実験済み。枝を仲介して、「等価交換」でラビットの肉を吸い上げられた。
ただ木の枝は強度が低い。
しなやかで強い、トレントの枝。「革ひも流星錘」と使い分けられたら、私の生存率が上がる。
「爪と牙」のように、トレントと普通の木が。似て非なるもの、の場合はあきらめる。
◆
初回は案内人付きだ。
ターニャとダンも付いてきた。目的は弓や家具の材料集め。
2人には風魔法の適正がある。弓との相性がいい。
ターニャには初対面で迷惑をかけたし、死んだナリスにそっくり。
だから、可能な限りリクエストを聞きたい。
お父さんに森の浅瀬で帰ってくるとこを条件に、2人は許可をもらった。
どこから聞き付けたか、村の子供が男2人、女3人増えて計8人で行動。
ドラゴンパピーを無傷で倒せる、バケモノ姉ちゃんだそうだ、私って。
160センチ以下の子供はいない。
だから、風のカルナと水のウインほかから奪った、高級装備の中から合うものを装着させた。
木の魔物トレントの生息地まで来た。
子供達は弓を構えて1本の木を警戒している。
うむ、やはり私には分からない。
直径1メートル、高さ15メートル。周囲の木に、見事に溶け込んでいる。
「ちょっと、先に戦わせてもらうわよ」
「ちょっと、待ってよユリナさん」
「武器と防具は?」
「危ないって」
「私、気功武術家なんで」
子供達の前で最強フォーム「裸」になる勇気がない私。
ミスリルタンクトップとミスリルふんどし。左手ナイフ、右手に手甲のみ。
紐だけに守られた私のお尻。男の子の視線が痛い。
「ユリナさん、危ないですって!」
無造作に木に接近すると、5本の枝が襲いかかってきた。
枝が首と両足、胴体に巻き付いて、私を引き裂こうとする。
首から、ごきんって音。これが私オリジナルの戦いのゴングだ。
「気功拳!」
子供達にウケるように叫んだ。本当は『超回復』「等価交換」のコンボだ。
「え?トレントの枝がしおれて弾かれた!」
ざわつくギャラリーの前で私はトレントの幹に近づいた。
右手のビス付き手甲で木の幹を殴った。左手のナイフは幹でなく、自分の腹を刺している。
『超回復』「等価交換」を繰り返し、トレントの枝攻撃も枝をひからびさせて退けた。
これで、ひらからびるということは、トレントも有機物に決定。
5分くらいかけ、幹の同じとこに切り込みを入れて倒して討伐。
これで森の入り口の最弱レベル。ま、移動しないってことは、強くなっても問題なしってことだけどね。
異様な戦い方に目を丸くする子供達をうながして、次のトレントを探してもらった。
サクサクと6本のトレントを倒して収納指輪に入れた。
子供達は7人。
「あと1本トレントを倒したら帰りましょ。次を探して」
「ユリナさん。本当に細くて長い枝だけ、ユリナさんに渡せばいいんですか」
「うん。必要なら家族にもあげて。私は気功で使う長い枝があればいい」
「幹に価値がありますよ」
「1本丸々で30万ゴールドだぞ」
「もらいすぎ。僕でも分かるよ」
彼らは善良だ。そして村の大人も優しい。
ナリスに「無能」の烙印を押したのは近隣3つの村。
だけど責められない。
納得はできないけど、烙印には根拠がなくても理由はある。
ナリスの村と周囲3村は親戚関係にある者も多い。
適齢期になった若者が村を越え交流を持つ。結婚することで、厳しい環境で生きる彼らの協力関係も築ける。
ナリスにも隣村に彼氏がいた。
だけどナリスは15歳を過ぎても、スキルも何も得られなかった。
本人同士は好き合っていた。
だけど、スキルありきで魔物と戦っている狩人の村の人は「無能の子」を恐れる。
死活問題だから、誰も歓迎できない。
劣等人から、普通のスキル持ちも生まれる。だけど、やっぱり怖がられる。
隣村の彼氏カールはナリスとの結婚を希望していた。
だが、彼はその家の1人息子。親を捨てて、ナリスと一緒に街に出るのも難しかった。
周囲の村に知られている、1000人に1人の劣等人。
ナリスは自分と結婚すれば、カールに迷惑がかかる。そう思い、カールに黙って村を出た。
その話をターニャから聞いて、涙が出た。
「ユリナさん、ぼーっとして、どうかしましたか」
「あ、いやいや。最後のトレントはどこ?」
みんなが指さす方を見ると、今までのトレントの倍くらい幹が太かった。
「あれですが、ちょっと大きいし、・・・」
ずるっ。
ターニャの脚に蔓が巻き付き、一気に木の方に引き寄せられた。
「進化個体だヤバい。姉ちゃん!」
ダンの声を聞いて走り出した。
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