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冬が近づく

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「…急にどうしたの」
「…いや、亜月が大学に行くんだってさ。亜月あれでも頭はいいし、勉強も怠らずに自習してるみたいだし…俺に一緒のとこに来ないかって言われて…」

あれでもは酷い言い草だなと思いながら話を聞いた。

「一緒の所を行くのは躊躇われる?」
「…一緒とこはいいけど、夢なんてないし、やりたい事も分からなくてさ…」
「それこそ菊原先輩と見つけていけば?」

そういうと玲衣は少し悲しげに俯いた。

「…俺はβだよ?」
「それは知ってるよ」
「もし…もし、亜月に運命の番が見つかったら…?俺なんて勝ち目ないんだよ……?」

玲衣が弱々しく言葉を吐き出す。
多分今の俺と和哉の関係よりも玲衣と菊原先輩の関係の方が曖昧だと思う。
俺達はまだ番で繋がってる所もある。でも玲衣と菊原先輩は繋がってるところが弱いって言いたいんだろうな。

「でもさ、菊原先輩は玲衣の事が好きで一緒にいたいからこそ言ってるんでしょう?夢がどうとかは言い訳にして、本当は菊原先輩が運命の番に出会っちゃうのが怖いんだよね…?」

俯いていた玲衣が顔をばっと上げて俺を見た。

「…そう。悠がかずの運命の番を恐れるように、俺だって、亜月が離れるのが怖いよ……」
「もうそこまで答え出てるじゃん」

玲衣は”夢がないから”嫌だって言ってるのではなく、”菊原先輩が離れるのが怖いから”不安になってる。
一緒にいることが全てではない。でも、一緒にいることで解決することもある。
だから一度真剣に菊原先輩と話してみたら?

そう伝えると玲衣は、うん…分かった…話し合ってみるよと言った。
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