吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

21、吸血鬼と妹(2)

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「フィーリアラ様、大丈夫ですか?」

 よろけた私を支えてくれたのは、それまで黙ってたヨシュだった。

「ごめんなさい、ちょっと目眩が」
「あら、そちらは?」

 そこでようやくヨシュの存在に気付いたのか、ウェンティが首を傾げてヨシュを見る。

「あ、僕は……」
「ひょっとしてお姉さまの愛人?やだお姉さまったら、ちゃっかりしてるぅ」

 よし埋める、こいつ埋めるすぐ埋める。

「ヨシュ、まずは大きなスコップを買ってもいいかしら」
「火サスになるので止めて下さい」

 火サスてなんだ。「あ、もうやってないですね」ってなんだ。世界観壊れること言わないで。

「お姉さま、野菜の栽培まだやってるんですか?」

 そうね、食べ物もロクに買えなくて自家栽培してたよね。そしてお前は食うだけだったよね。

 姉さまが種撒きゃお馬鹿が食べるってか。
 ふざけんな。

「あ~埒があかないですね。ちょっと一旦屋敷に戻りますか?」
「え、お肉はいいの?」
「あ、それだけは買って帰りましょう」

 そだね、それだけでも買って帰らなくちゃ、ヨシュがまた絶叫しちゃうからね。
 でも妹連れ帰るのは良くない気がするんだけど……。

「吸血鬼公爵の家にですか!?え~いくら私が美味しそうだからって血は吸われたくありませんわあ!」

 ギョッとした。
 何てことを大声で言うの!!

 ほら、町の人達がなんだなんだとこっちを見てるじゃない!

「ウェンティ!行きますよ!」

 とにかくこの場を離れなくては!

 私はウェンティの首根っこを引っ掴んで、慌ててその場を後にするのだった。

 ダッシュで町を出て、来たときにヨシュが変身した、町がかすかに見える茂みの場所に着く頃には、息も絶え絶えであった。

「き、きつい……!」

 いつもデスクワークだったから。
 全力ダッシュなんて何年ぶりだろう。

「んもーお姉さまったら、馬鹿力なんですから」

 さ、殺意覚えるわあ……。
 思わずギュッと握りこぶし作ったところでヨシュがやって来た。

「お待たせしましたー。いい肉ありましたよー!」

 そうですか、嬉しそうで何より。何も見て回れなかったのは残念だけど、ヨシュが欲しかった物が買えたなら何よりです。

「じゃあ行きましょうか?」
「え、何処へですか?」

 話聞いてなかったのかな。公爵家お屋敷に決まってるでしょうが。

「嫌です」

 即答ですね、気持ちいいくらいに即答ですね。

「だってお姉さまの血が美味しくなかったから生きておいでなんでしょ?」

 え、何それ、私はとうに死んでるとか思いながら会いに来たの?

「慰謝料でも貰えるかと……いえ、モゴモゴ」
「モゴモゴとか言うな」
「ああお姉さま、よくぞご無事で!」

 いや白々しいな、おい!

「お姉さまより美味であろうわたくしの血は、吸血鬼にとってはさぞや不味かろうと思うんです」

 もう何言ってんのか分かんないこの子!

 とりあえず自分を上げて私を落としたいのね。も、好きにして。

「苦労されたんですね」

 ポンと肩に置かれたヨシュの手が、何だかずっしり重く感じて、ガックリと項垂れる私であった。


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