吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール

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第一部

9、吸血鬼と使用人(1)

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 なんだ、カワウソ居ないのか。
 なんてガッカリしてたら、公爵がアワアワしだしたように見えるのは気のせいかな?

「あああ、ガッカリさせてしまった!今からでもカワウソを……いやしかし飼育環境が……」

 とかなんとかブツブツ言ってますが。何なのだ。

 でもまあ確かにカワウソちゃんを、こんな環境にお迎えするわけにはいかない。

 こんな!
 散らかり放題、汚れ放題のお屋敷に!
 可愛い動物達を!愛しいもふもふ達を!

 住まわせるわけにはいきません!!

「ゼルストア様」
「は、はい!」

 名前を呼んだだけですのに。
 ちょっと剣呑な低い声になっちゃいましたのに。

 なんでそんなパアァッと輝いた顔するんですか。
 なんでそんな嬉しそうなんですか。

 ……なんでそんな、もふもふ耳と尻尾が見えそうな可愛い顔するんですか。

 トゥンクしませんよ。
 しそうな心に蓋しましたから。パタン。
 今から私の心は鬼になります。

「このお屋敷の状況はどういうことなんでしょうか?」
「ど、どうとは?」

 分からないんですか!?

 私はバッと手を広げ(肩が揺れて乗ってたリン君が慌ててる。ごめんね!)叫ぶ。

「この、状況を!散らかってるわ汚れてるわの惨状を!どう思われてるのですか!?」
「う……」

 公爵が言葉を失う。
 そうだろうそうだろう。
 自分でも思うだろう、酷い有様だと!

 仮にも公爵家屋敷ともあろうこの家が!なぜこんなに汚いんですか!
 なんですかこのお屋敷は!
 なんですかこの汚屋敷は!

 今うまいこと言ったな自分とか思ってませんよ、ちょっと思ったけど。

 ざっと見ただけで……玄関フロアだけでこの有様。一体お屋敷全体ではどうなってるのか。
 考えるのが恐い。

 たじろぎながらも「だって……」とかブツブツ言ってるのがイラっとくるわあ!

「だっても何もありません!そもそもどなたがお掃除されてるのですか!?」

 一喝!
 途端にピシッと姿勢を正す公爵。実家の家族を震え上がらせた私の迫力は吸血鬼にも有効のようです。

「あ、掃除は一応僕がやってます」

 そこで背後からヨシュさんが挙手して自己申告してくださいました。居ましたね、忘れてました。エミリーも居ましたね、同じく忘れてたゴメン。

「貴方が?ヨシュさん一人で?」
「あ、敬称いりませんよ。どうぞ楽にヨシュとお呼びください」
「じゃあヨシュ」
「ぐはあ!」

 ……なんで公爵が胸を押さえてるんですか。
 どうして射殺しそうな目でヨシュを見てるんですか。ヨシュは平然としてますけど。

「いや~ここ、僕しか使用人居ないんですよね~」

 公爵無視してヘラヘラ笑いながら答えるヨシュに。
 私は目が点になって言葉を失ってしまいました。

 公爵家に使用人が一人ぃ!?
 さすがに実家でもそれはありませんでしたよ!

「ど、どういうことですか?」
「いや~みんなゼル様に恐れをなして逃げちゃって。というか募集しても誰も来なくなっちゃって」

 あ、その呼び方いい、私もそう呼ぼう。ゼル様。きゃっ。

 じゃなくって!!!

 なるほど……それは何となく理解出来る。

 私も公爵に会うまでは恐かったもの。
 血を吸われるのは有るかもしれないと思ってたけど、一瞬で干からびたらどうしようとか思ってた。
 それは無さそうだと安心したのは会ってから。

 でもそうか、そうだよねえ。まず怖い噂で人来ないよねえ。
 でもじゃあなぜヨシュは続いてるんだろう。










===作者の呟き=================

カワウソってどんな触り心地なんでしょうね。
見た目はツルンとしてそうですが、意外にモフモフなのかな……と調べたら、ふかふかという情報有り。
環境整えて飼ってください、公爵!いやヒロイン!(笑
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