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プロローグ~17歳で終わる人生~

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「おおミリス、今日は一段と可愛いな。どうだ、父さまと外食しないか?」
「まあ、嬉しいですわお父様。是非みんなで行きましょうよ!」
「そうね、ガルードももうお作法は立派にできますものね。是非そうしましょう」
「やったあ!ミリスお姉ちゃまとお出かけだあ!」
「では父上、舞台を見てから食事に……」
「そうだなアルサン、是非そうしよう」

 ワイワイと皆が楽し気に話している。
 共に外出する事はしない祖父は、話の内容を気にすることなく本を読みふけっている。

 出かける事が決まった家族は、それぞれ支度を始めた。

 私は?
 私も行って良いのだろうか?
 普通は娘の私も当然行くものだ。けれどこの家族に普通は適用されない。

 どうしたら良いのかと父を見て、目が合った。途端、父の目が厳しくなる。

「リリア」
「は、はい!!」
「お前、今日のマナー授業、また失敗したそうだな」
「──!! も、申し訳ありません……」
「そのような娘を一緒に連れていくわけにはいかん、我が家の恥だ。お前は部屋でマナーの勉強をしていなさい」

 つまり、私は留守番ということだ。
 そうして私を置いて家族は出て行った。

 いつもいつもいつも。
 ミリスが来る前から、あまり良くは思われてない感じではあったけれど。

 ミリスが養女となってからは、それは顕著に現れた。

 父も母も兄も弟も。

 誰も私を愛さない。
 そもそも見てもくれない。
 まるで私の方が養女のよう。
 まるで私だけが家族では無いよう。

 その事に絶望するのは、もう何度目だろう。
 何度も何度も期待して裏切られるのは、何度目だろう。

 これは一体「何度目の人生」なのだろう──



***



 気付けば人生をループしていた。

 一度目の死の直後は何が起きたのか理解出来なかった。死んでない事に安堵し、けれど幼くなった自分の体に愕然となった。
 状況を理解出来ないまま、同じ時を過ごし、全く同じ結果となって私の人生は終わったのだ。

 二度目のループではある程度冷静になって理解できた。どうやら人生をやり直してる事に気付いたのだ。
 どうしてなのか分からない。だが理由なんてどうでも良かった。
 これはきっと神様が下さったチャンスなのだ。次こそは幸せな人生を歩めるようにと、神様がやり直させてくださったのだと考えた。

 そして私は努力した。幸い記憶があるから、前世で学んだことは覚えている。未来に何が起こるかも分かっている。

 記憶を頼りに困難を乗り越えた。はずだった。
 だが努力が必ずしも報われるわけではないことを。
 私を身を持って知る事となる。

 二度目のループ。つまりは三度目の人生。
 努力は実を結ばず、私はやはりこれまで同様、わずか17歳でその生涯を終える事となる。

 そしてまたループする。
 始まりはいつも同じ。
 何度も何度もループする。

 違う選択をしても。
 必死に抗っても。

 運命は残酷にも私に17歳までの生しか与えようとしなかった。

 何度も。
 何度も。

 もう何度目か分からないループ。

 そして私はようやく気付く。大事な事にようやく気付いたのだ。

 そもそも家族に愛されようとするのが間違ってるのだ。
 どうして愛してもくれない家族に愛されたいと思えよう?

 情けない事に、その考えに至るまでに私は10回以上はループしていたと思う。

 ついにその考えに至った時点では既に全てが遅かった。
 もう、死は目の前に迫っていたのだから──。
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