【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール

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プロローグ~17歳で終わる人生~

3、

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 暴動が起きた。それは当然の結果だった。
 私が14歳の時に祖父が亡くなってから、公爵領は本当に酷かったから。家族には厳しい冷血な祖父であったが、公爵としては有能であったのだ。けれど祖父が病で亡くなり、父が跡を継いでからは、目を覆いたくなるような酷さだった。

 父も母も兄も弟も、そしてミリスも。

 公爵領で得る税を私利私欲に使いまくった。公爵領を良くしようと動く事は無かった。
 自分たちの贅沢のため、民から税を搾り取る。足りなくなれば増税してまた搾り取る。その繰り返し。民の生活は困窮し、領土は荒れ果てた。

 そして、当然のように暴動が起きたのだ。暴徒化した民は公爵家屋敷へと攻め寄せた。
 屋敷になだれこむ大量の民衆。捕まる公爵家一族。

 審判など必要もなく、全員が処刑台送りになるところだった。

 ──だが、そうはならない。

 処刑台に上がったのは、私だけ。断頭台に首を乗せてるのは、私だけ──

 両手と頭を拘束されてる私の耳に、誰かが近づいてきた。足先が見える。そして声がした。

「リリア……残念だが仕方ない。我ら公爵家の財を勝手に私利私欲に使い込んだのだから。領民の為になるよう指示した私の施政を、そなたは勝手に取りやめて全て自分の欲に使い込んだ。それに気づかず知らなかった私にも非はある。だが、お前のやった事は到底許されるものではないのだ、分かってくれ」

 父の声だ。

 嘘だ嘘だ嘘だ!
 私は何もしてない! 私はいつも貧しい生活に苦しんでいたというのに!

 パン一つ食べるのすら苦労した私なのに、どうして贅沢なんて出来よう?

 虐げられ続けた私。私を虐げ、自分たちだけ美味しい思いをした家族。
 そして最後に私は生贄にされたのだ。

 違うと反論したくとも、口に布が挟まれて、低い声をくぐもらせることしか私には出来なかった。

 その時だった。私に近付くもう一つの気配。

「お姉様!」

 ミリスだ。
 義妹のミリスが駆け寄って来た。

「ああ、お姉様、罪深い事をされてても愛しております。ミリスはお姉様の事、けして忘れません!」
「おおミリス、お前はなんと優しい子なのだ」

 見えないが、涙声の二人。おそらくは涙ぐんでいるのだろう。本当に涙を流してるのかもしれない。

 ──けれど私は知っている。
 ──何度も何度もこの、同じ場面を繰り返している私には分かっている。

 全てが演技であることを。
 全て、私に罪を着せるため、自分たちが助かる為の演技であることを、私は知っている。

 知っている。項垂れ動けない私の耳に、ミリスがそっと唇を寄せる事を。

「お姉様……」

 吐息がかかりそうなくらいに近く。
 ミリスがそっと、私にしか聞こえないくらいの小声で囁く事を。

 知っている。

「残念ですわ……」

 私は知っている。

「お姉様が苦しむ様を、もう見れないかと思うと」

 ミリスの本性を。

「……お前をいたぶる事が出来なくなること、残念で仕方ないわ」

 ニヤリと歪んだ笑みを浮かべ、そして体を離す時には既に涙目のミリスに戻っている。

 だが、私はちゃあんと知っている。

「忘れないわ」

 もう何度目かのループ人生。
 猿ぐつわを上手く外すことくらい出来る。
 私は話せるくらいに口の布を動かして、どうにか外し。

 そしてミリスにだけ、聞こえるように言った。

「忘れないわ、ミリス。貴女の事を」
「お姉様?」
「お前がしたこと。お前が言ったこと。全て忘れない。お前達が私にしたこと……絶対に絶対に……!!」

 忘れない!!!!

 血を吐くような叫びを最後に、私の首は斬り落とされた。

 何度目か分からないループ。何度目か分からない同じ人生。

 けれど確信する。
 きっときっと。

 次は変えてみせる。

 もう私は同じ轍を踏まない。

 必ずやお前たちを地獄の底に落としてやるわ!!
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