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56 様子がちょっとおかしいぞ
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あれから僕は、かなでちゃんをバンドに誘ったり、譜面を起こしたり、同期演奏用のデータを作ったりと週末の初練習まで忙しく過ごしていた。
特筆すべきこととして、曜ちゃんからまたデートのお誘いを受けた。まぁ、デートと言っているのは僕の脳内でだけの話だが、曜ちゃんと二人でお出かけだ。デートと言ったって差し障りはないだろう。あれからも無事、曜ちゃんとThreadでのやり取りは続いているのだ。
ただ、問題はある。曜ちゃんとのデートの件が羽深さんにバレると、また付け回されるのじゃないかという不安が拭えないのだ。羽深さんがどうしてあんなことをしたのか、結局聞き出すことはできなかったのだが、あの二人はどうも犬猿の仲と言える。美女同士が同じ場にいると、縄張り争いが始まる。やたらと張り合うのだ。
そういうわけだから、どうしても羽深さんにだけは曜ちゃんとのデートの件を知られてはならない。僕は羽深さんに覚られぬよう細心の注意と緊張感を抱えて過ごすこととなった。
そして土曜日。STYLE NOTの初練習を迎える。
キーボードにかなでちゃんを迎え、ついにフルメンバーがスタジオに揃った。
「はじめましての人もいるね。わたしキーボード担当させてもらう、青木かなでです。たっ君とメグ君は以前一緒に演ったことがあって、そのご縁で誘ってもらいました。よろしくお願いします」
「ギターの林っす。こいつらとは中学の頃一緒にバンドやってました。かわいい女子の加入は全面的に歓迎っすよ」
うん、やっぱ羅門はチャラいな、くそ。
「同じくギターの本郷です。先輩ですよね。よろしくお願いします」
本郷君は口数少ないけどちゃんとしてるなぁ。
「……」
射抜くような視線でかなでちゃんを頭の天辺から爪先までジロジロ見ているのは羽深さんだ。どうしたどうした? まさか羽深さん、また縄張り戦争を勃発させようとしているのか? バンド内でそれはやめてくれよ、頼むから?
「ふふふ。あなたね、噂の美少女は。たっ君のセクハラで登校拒否。からの、たっ君まさかのジゴロにジョブチェンジ! そして今ではたっ君と付き合ってるってもっぱらの噂の学園一の美少女!」
「ふぇ!?」
あぁー、なんでも一部の好事家の間じゃそんな噂が立てられてるってな。根も葉もない噂だけど羽深さんからしたら迷惑な話だろ。
って、羽深さんまた真っ赤っかじゃないかよ。かなでちゃんは遠慮がないからなぁ。あんまりおかしなことを羽深さんに言うなよ。僕と違ってかなでちゃんに対する免疫がないんだから。
「おい、今のってマジか? 楠木と羽深ちゃん付き合ってんの?」
羅門の奴が流石にびっくりして問いただしてきた。
「んなわけねーだろ。噂だよ噂。なんかそんな噂が流れてるだけだよ」
悲しいけどそんな夢みたいな話が現実なわけがない。
「だよな。あー、びっくりしたぁ……心臓止まるかと思ったわ」
「大袈裟だなぁ。てか驚きすぎなんだよ。お前からびっくりされるとなんか腹立つ」
「ぐっ。相変わらず俺に対する当たりがキツい」
羅門が一人で騒いでるが本郷君は特に関心もないのか相変わらず無言だ。
「なんだ、噂かぁ……」
って何故か羽深さんが呟いた。いや、当事者なんだから知ってるよね!? リアクション間違えてますよー。また俯いてモジモジしちゃってるし。それかわいすぎるからやめてください、もぉ。
「あーぁ、ライブ終わったらお前ら爆発な」
「出た、爆発。この前からなんなの、それ? 使い方多分間違ってるぞお前」
この前からやたら爆発爆発言ってるメグに一応注意しておく。
「間違ってねーの。いいんだよ、爆発で」
「変なの」
何だかよく分かんないが爆発して欲しいらしい。
僕と羽深さん以外のメンバーはケラケラ笑っている。ホント意味が分からんなぁ。
「さてと。自己紹介もしたし、そろそろ始めるか」
羅門の掛け声でいよいよ練習が始まる。
取り敢えず一曲。僕が一番最初に作った曲だ。
メグの太いベースがうねる。羅門は愛用のテレキャスでキレのいいカッティングをキメてるし、本郷君のレスポールは妙に彼に似合っている。かなでちゃんも準備時間が短かったわりにしっかり弾けてる。
全体として初めて合わせるとは思えないくらいにいい演奏だ。
羅門の奴も流石に中学時代より随分腕を上げている。もちろん僕もメグも現場で随分経験を積んできたし、腕も上がっている。そして本郷君だが、とてもいいギタリストだ。弾いてみた動画で結構なPVを稼いでいるというのも頷ける。
ところで一般的な練習スタジオだと、狭いこともあってハウリングマージンが少ないのか、あるいはヘッドアンプの容量の問題なのか、マイクのゲインが低めなことが多い。
そのためボーカルの音量が小さくてドラムの音量を抑えろなんて言われがちだったりする。他の楽器はアンプのボリュームを下げるだけなので、気楽に言ってくれるもんだ。
うちのスタジオはハウリングマージンをしっかり取ってあるのかマイクの音量を結構上げられるので、他の楽器の爆音にボーカルが負けない。
さて肝心の羽深さんだが、バンドは初めてということもあり、やや固くなっているように見える。多分、初めてスタジオ練習に参加したから爆音にビビっているのかもしれない。
そんな風に羽深さんのことを見ていたのだが、あれ、どうしたんだろうか様子がちょっとおかしいぞ。
段々喉を詰まらせる羽深さん。最後にはついに声が出なくなった。と思ったら、おや、羽深さんもしかして泣いてる!?
特筆すべきこととして、曜ちゃんからまたデートのお誘いを受けた。まぁ、デートと言っているのは僕の脳内でだけの話だが、曜ちゃんと二人でお出かけだ。デートと言ったって差し障りはないだろう。あれからも無事、曜ちゃんとThreadでのやり取りは続いているのだ。
ただ、問題はある。曜ちゃんとのデートの件が羽深さんにバレると、また付け回されるのじゃないかという不安が拭えないのだ。羽深さんがどうしてあんなことをしたのか、結局聞き出すことはできなかったのだが、あの二人はどうも犬猿の仲と言える。美女同士が同じ場にいると、縄張り争いが始まる。やたらと張り合うのだ。
そういうわけだから、どうしても羽深さんにだけは曜ちゃんとのデートの件を知られてはならない。僕は羽深さんに覚られぬよう細心の注意と緊張感を抱えて過ごすこととなった。
そして土曜日。STYLE NOTの初練習を迎える。
キーボードにかなでちゃんを迎え、ついにフルメンバーがスタジオに揃った。
「はじめましての人もいるね。わたしキーボード担当させてもらう、青木かなでです。たっ君とメグ君は以前一緒に演ったことがあって、そのご縁で誘ってもらいました。よろしくお願いします」
「ギターの林っす。こいつらとは中学の頃一緒にバンドやってました。かわいい女子の加入は全面的に歓迎っすよ」
うん、やっぱ羅門はチャラいな、くそ。
「同じくギターの本郷です。先輩ですよね。よろしくお願いします」
本郷君は口数少ないけどちゃんとしてるなぁ。
「……」
射抜くような視線でかなでちゃんを頭の天辺から爪先までジロジロ見ているのは羽深さんだ。どうしたどうした? まさか羽深さん、また縄張り戦争を勃発させようとしているのか? バンド内でそれはやめてくれよ、頼むから?
「ふふふ。あなたね、噂の美少女は。たっ君のセクハラで登校拒否。からの、たっ君まさかのジゴロにジョブチェンジ! そして今ではたっ君と付き合ってるってもっぱらの噂の学園一の美少女!」
「ふぇ!?」
あぁー、なんでも一部の好事家の間じゃそんな噂が立てられてるってな。根も葉もない噂だけど羽深さんからしたら迷惑な話だろ。
って、羽深さんまた真っ赤っかじゃないかよ。かなでちゃんは遠慮がないからなぁ。あんまりおかしなことを羽深さんに言うなよ。僕と違ってかなでちゃんに対する免疫がないんだから。
「おい、今のってマジか? 楠木と羽深ちゃん付き合ってんの?」
羅門の奴が流石にびっくりして問いただしてきた。
「んなわけねーだろ。噂だよ噂。なんかそんな噂が流れてるだけだよ」
悲しいけどそんな夢みたいな話が現実なわけがない。
「だよな。あー、びっくりしたぁ……心臓止まるかと思ったわ」
「大袈裟だなぁ。てか驚きすぎなんだよ。お前からびっくりされるとなんか腹立つ」
「ぐっ。相変わらず俺に対する当たりがキツい」
羅門が一人で騒いでるが本郷君は特に関心もないのか相変わらず無言だ。
「なんだ、噂かぁ……」
って何故か羽深さんが呟いた。いや、当事者なんだから知ってるよね!? リアクション間違えてますよー。また俯いてモジモジしちゃってるし。それかわいすぎるからやめてください、もぉ。
「あーぁ、ライブ終わったらお前ら爆発な」
「出た、爆発。この前からなんなの、それ? 使い方多分間違ってるぞお前」
この前からやたら爆発爆発言ってるメグに一応注意しておく。
「間違ってねーの。いいんだよ、爆発で」
「変なの」
何だかよく分かんないが爆発して欲しいらしい。
僕と羽深さん以外のメンバーはケラケラ笑っている。ホント意味が分からんなぁ。
「さてと。自己紹介もしたし、そろそろ始めるか」
羅門の掛け声でいよいよ練習が始まる。
取り敢えず一曲。僕が一番最初に作った曲だ。
メグの太いベースがうねる。羅門は愛用のテレキャスでキレのいいカッティングをキメてるし、本郷君のレスポールは妙に彼に似合っている。かなでちゃんも準備時間が短かったわりにしっかり弾けてる。
全体として初めて合わせるとは思えないくらいにいい演奏だ。
羅門の奴も流石に中学時代より随分腕を上げている。もちろん僕もメグも現場で随分経験を積んできたし、腕も上がっている。そして本郷君だが、とてもいいギタリストだ。弾いてみた動画で結構なPVを稼いでいるというのも頷ける。
ところで一般的な練習スタジオだと、狭いこともあってハウリングマージンが少ないのか、あるいはヘッドアンプの容量の問題なのか、マイクのゲインが低めなことが多い。
そのためボーカルの音量が小さくてドラムの音量を抑えろなんて言われがちだったりする。他の楽器はアンプのボリュームを下げるだけなので、気楽に言ってくれるもんだ。
うちのスタジオはハウリングマージンをしっかり取ってあるのかマイクの音量を結構上げられるので、他の楽器の爆音にボーカルが負けない。
さて肝心の羽深さんだが、バンドは初めてということもあり、やや固くなっているように見える。多分、初めてスタジオ練習に参加したから爆音にビビっているのかもしれない。
そんな風に羽深さんのことを見ていたのだが、あれ、どうしたんだろうか様子がちょっとおかしいぞ。
段々喉を詰まらせる羽深さん。最後にはついに声が出なくなった。と思ったら、おや、羽深さんもしかして泣いてる!?
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