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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)

アクマの襲来_3

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 ライガの言っていた、ノエルの身体に出来た痣、この家に来る頻度が減ったこと、『僕に会いにきた』というこの男。

「あ……あなた……」
「エミリーはまだ戻ってこない。少し、お楽しみといくとしようか」

 ジョンの笑顔に、ノイは凍りついた。
 冷たく、仄暗いその笑顔には、ノイの身体が固まる理由が、十分にあったのだ。
ジリジリと、ノイに距離を詰めるジョン。ノイは固まっていた身体と怯えた心を奮い立たせ、椅子から立ち上がり、目を逸らさぬよう、しかしジョンと距離をとるようにゆっくり、ゆっくりと後退った。

"……絶対、目を離してはいけないわよね……。その瞬間、何をされるか分かったもんじゃあないわ……!"

 出来るだけジョンを刺激しないように、硬直が解けた後はあくまでもにこやかな笑顔を崩さないように心掛けた。

「今日は、母に頼まれたから来たんです! 母に聞いて貰ったら、すぐに分かるりますから」
「そんな、見え透いた嘘は吐かなくて良いんだよ?」
「嘘なんかじゃないです! 本当に、母に頼まれただけで……」
「だって、僕に会えて嬉しそうな顔をしたじゃないか!」
「う、嬉しそうな顔……? それは気のせいだと思います……」
「そんな嘘は吐くもんじゃあ無いよ? あんなに可愛らしい笑顔を向けてくれたじゃないか」
「それは……」
「……ホラ、今だって。思わず笑顔になってしまうんだろう? 僕を見て」
「……は?」
「最後に来なくなった時はどうして? と思ったけど。なんだ、やっぱり僕が忘れられなかったんだね?」
「違います!」
「またまた。そんな風に言わなくても良いんだよ?」
「本当ですから!」
「……あぁ、もしかして。エミリーを気遣ったことに、嫉妬しているのかい?」
「ちょっと」
「仕方ないだろう? エミリーは、あくまでも僕の妻だからね」
「それは当たり前」
「大丈夫。二人きりの時は、ノエルちゃんしか見ていないだろう?」

 明らかにジョンはおかしかった。会話が成立していない。自分にとって都合のいいように解釈している。エミリーと一緒にいた時は【俺】の一人称で、優しい部分と少し強引な部分があるな、くらいにしか思わなかったその口調も、今は【僕】に変わり、ねっとりとしたいやらしい話し方になっている気がしていた。

"……これは間違いなくやばい人だわ……!"

 焦ったノイは、どうにかこの場から逃げ出す方法を必死に考えた。刺激しないようにと思っていた笑顔も、それなりに丁寧な言葉遣いも、この人にとっては逆効果でしかない。

「……もしかして、逃げようって思ってる?」
「……」
「無駄だよ? 君も見ただろう? エミリーはもう家を出たんだから」
「……叫んだら、誰かが来るかもしれないわ」
「そうかな? そう簡単には、声も聞こえないと思うよ?」
「そんなことない!」
「そんなことあるさ。ノエルちゃんが来たって分かった時に、窓は全部締め切っているし。それに……」

 ニヤリ、とジョンの口元が歪んだ。

「あんまり騒ぐなら、その口も封じてしまえば良いしね?」

 ジョンはノエルの腕を掴むと、二階にある自分の部屋へと引きずっていった。

「きゃぁ……っ……! いやっ! 離して!」
「今この家には誰もいない。叫んでも無駄だからね?」

 階段が身体に当たる。痛い。一体なんだこの男は。今のノエルの体格と力では、とてもこの男には対抗出来ない。思ったほどの力は出ないし、軽々と抑え込まれてしまう。
 そのまま一つの部屋に引き摺り込まれた。

「──ひぃ──っ──」

 薄暗い部屋を囲う壁。そこにはおぞましい数の写真が貼られていた。それは見える範囲で間違いがなければ、全てにノエルが写り込んでいる。

 正面を向いて、カメラ目線になっているもの。
 横顔や後ろ姿。
 何処からか盗み撮りしたのでは、そんな写真も含まれていた。
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