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アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)

アクマの襲来_2

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 再度やってきた夫は、ニコニコと微笑みながら、お皿に盛られたクッキーをテーブルに置いた。

「有り難うアナタ。さぁ、こっちのクッキーもどうぞ」

 勧められたクッキーを取り、口に含んだ。

「んんっ、こえも、おいひいえす!」
「ふふっ、焦らなくて良いのよ、ゆっくり食べてね」

 思いがけない美味しいおやつに、ノイは喜んだ。

「……ノエルちゃん、どうして暫くウチに来なかったんだい?」
「……ええと……それは……」

 ノイは言い淀んだ。本物ではないから、その理由は分からない。

「その……べ、勉強が、分からない部分が沢山あって、ちゃんと出来るようにならないとって……家でずっと! 勉強していたんです!」
「ノエルちゃんは、真面目なのね。えらいわぁ」
「おじさんが教えてあげるぞ? 前はそうだっただろ? 遠慮しなくて良いから」
「え、あ、いえ……わ、分からない者同士、教え合うのが良いみたいで! 友達と一緒に勉強すると、凄く勉強になるんです!」

 本物のノエルは、この家に来なくなったと聞いている。その理由が何であれ、自分が簡単に覆すような真似をしてはいけない。そうじゃないと、万が一取り返しのつかないことになってしまっては、後悔してしまうから。ノイはそう思っていた。

「そうかい? おじさん、いつでも教えてあげるからね? いつでもいいぞ? 家に居たら、毎日でも良い」
「……いやー……はは……。それはご迷惑になりますので……」
「うちは迷惑じゃないぞ! なぁ!?」
「……そうだけど、ノエルちゃんに無理強いしちゃだめよ? ノエルちゃんが迷惑だって思うかもしれないじゃない」
「そんなことないだろう! こっちは良いって言ってるんだから!」

 興奮気味に話すエミリーの夫を見て、ノイは困った。断っているのに、何をそんなに教えたいのだろう。エミリーの言う通りで、自分にとっては正直迷惑である。

"何だか強引だし……こういうところが嫌で、ノエルも来なくなったのかしらね……"

 苦々しい気持ちになりながら、ノイはぶどうジュースを飲み干した。

「あら、いけない。私、薬を取りに行かなきゃ」
「薬?」
「ええ。もうすぐ切れちゃうのよね。私、頭痛が酷くて。主人もいるし、良かったらそのまま食べて行ってね」
「でも……」
「妹には伝えておくわ。ゆっくりしていってね」
「……有り難う、ございます」

 うまくかわす言葉が見つからず、結果的に残る形となってしまった。

"大丈夫……だよね"

「アナタ、薬を取りに行って来るわ。ノエルちゃんをよろしくお願いします」
「俺が行くぞ?」
「大丈夫よ。少しは運動もしないと、動けなくなってしまっては大変だし」
「そうか、わかった。三十分くらいか?」
「そうね、それくらいだと思うわ。じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」

 パタン──、と、扉が閉じられる。
 エミリーが家を出たことを確認すると、――ジョンは鍵を掛けた。

「……ノエル? 本当に、久し振りだね」
「……え……あ……はい」
「他人行儀だなぁ。あんなに『ジョンおじさん』ってなついてくれていたのに」

"この視線、さっきの……"

 ノイが感じた、この家に入った時の視線、それはこの男の視線だった。

「少し雰囲気が変わったかな?」
「……そうですか?」
「あぁ。大人びた気がする」
「それは……どうも」
「エミリーの言った通り、大きくなったね。……大人と子供の狭間、とでも言うべきか」
「……はぁ」
「素晴らしいね。大人びた子供、か……」

 張り付いた笑顔が気持ち悪くなり、素っ気なく返事をした。

「どうして、またこの家にやってきたんだい?」
「……? 母に、葡萄酒とパンを持って行くのを頼まれて……」
「本当にそうかい? 僕に会いにきたんじゃないのか?」
「なん……で?」

 はっ、とノイは思い立つ。
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