13 / 61
アカズキン(狼×女主/狩人×女主/ヘタレ/擬人化/ロリ)
アクマの襲来_2
しおりを挟む再度やってきた夫は、ニコニコと微笑みながら、お皿に盛られたクッキーをテーブルに置いた。
「有り難うアナタ。さぁ、こっちのクッキーもどうぞ」
勧められたクッキーを取り、口に含んだ。
「んんっ、こえも、おいひいえす!」
「ふふっ、焦らなくて良いのよ、ゆっくり食べてね」
思いがけない美味しいおやつに、ノイは喜んだ。
「……ノエルちゃん、どうして暫くウチに来なかったんだい?」
「……ええと……それは……」
ノイは言い淀んだ。本物ではないから、その理由は分からない。
「その……べ、勉強が、分からない部分が沢山あって、ちゃんと出来るようにならないとって……家でずっと! 勉強していたんです!」
「ノエルちゃんは、真面目なのね。えらいわぁ」
「おじさんが教えてあげるぞ? 前はそうだっただろ? 遠慮しなくて良いから」
「え、あ、いえ……わ、分からない者同士、教え合うのが良いみたいで! 友達と一緒に勉強すると、凄く勉強になるんです!」
本物のノエルは、この家に来なくなったと聞いている。その理由が何であれ、自分が簡単に覆すような真似をしてはいけない。そうじゃないと、万が一取り返しのつかないことになってしまっては、後悔してしまうから。ノイはそう思っていた。
「そうかい? おじさん、いつでも教えてあげるからね? いつでもいいぞ? 家に居たら、毎日でも良い」
「……いやー……はは……。それはご迷惑になりますので……」
「うちは迷惑じゃないぞ! なぁ!?」
「……そうだけど、ノエルちゃんに無理強いしちゃだめよ? ノエルちゃんが迷惑だって思うかもしれないじゃない」
「そんなことないだろう! こっちは良いって言ってるんだから!」
興奮気味に話すエミリーの夫を見て、ノイは困った。断っているのに、何をそんなに教えたいのだろう。エミリーの言う通りで、自分にとっては正直迷惑である。
"何だか強引だし……こういうところが嫌で、ノエルも来なくなったのかしらね……"
苦々しい気持ちになりながら、ノイはぶどうジュースを飲み干した。
「あら、いけない。私、薬を取りに行かなきゃ」
「薬?」
「ええ。もうすぐ切れちゃうのよね。私、頭痛が酷くて。主人もいるし、良かったらそのまま食べて行ってね」
「でも……」
「妹には伝えておくわ。ゆっくりしていってね」
「……有り難う、ございます」
うまくかわす言葉が見つからず、結果的に残る形となってしまった。
"大丈夫……だよね"
「アナタ、薬を取りに行って来るわ。ノエルちゃんをよろしくお願いします」
「俺が行くぞ?」
「大丈夫よ。少しは運動もしないと、動けなくなってしまっては大変だし」
「そうか、わかった。三十分くらいか?」
「そうね、それくらいだと思うわ。じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
パタン──、と、扉が閉じられる。
エミリーが家を出たことを確認すると、――ジョンは鍵を掛けた。
「……ノエル? 本当に、久し振りだね」
「……え……あ……はい」
「他人行儀だなぁ。あんなに『ジョンおじさん』ってなついてくれていたのに」
"この視線、さっきの……"
ノイが感じた、この家に入った時の視線、それはこの男の視線だった。
「少し雰囲気が変わったかな?」
「……そうですか?」
「あぁ。大人びた気がする」
「それは……どうも」
「エミリーの言った通り、大きくなったね。……大人と子供の狭間、とでも言うべきか」
「……はぁ」
「素晴らしいね。大人びた子供、か……」
張り付いた笑顔が気持ち悪くなり、素っ気なく返事をした。
「どうして、またこの家にやってきたんだい?」
「……? 母に、葡萄酒とパンを持って行くのを頼まれて……」
「本当にそうかい? 僕に会いにきたんじゃないのか?」
「なん……で?」
はっ、とノイは思い立つ。
0
お気に入りに追加
1,704
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる