不埒な魔術師がわたしに執着する件について~後ろ向きなわたしが異世界でみんなから溺愛されるお話

めるの

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本編

55 空蝉(ウツセミ) 2

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朝から何も口にしていなかったので、小ぶりとはいえ3つもマフィンを食べてしまった。
はい、反省してます。

意外にカロリーが高いのは知っていたけど、香ばしく焼かれた生地はしっとりと口当たりが良く、中身も魅力的すぎた。大きめにカットしたフルーツと絶妙な配合のナッツとか、角切りベーコンとアスパラガスとか、焼きこまれている具もバリエーション豊かで、あまりのおいしさに手が止まらなかったんだ。

あとで侍女さんに聞いたら、最近王都で人気のマフィン専門店のものをわざわざ取り寄せたとのこと。イートイン限定の種類もあると教えてくれた。いつか行ってみたい。

夕食はとても食べられそうにないので、準備はいらないと伝えておいた。少し早くはあるが、お風呂に入って身支度を整えてもらって夜を待つ。髪は下ろしたままで、毛先に甘い香りのヘアオイルを少しだけつけた。

夜着はラピスラズリみたいな深い青地に銀糸で刺繍がしてあるナイトガウンを着た。下着は・・・正直どうしようかと思ったけれど、「夜のお仕度には不要です」と言われるまま何も身に着けていない。

アレクに貰ったブレスレットは、机の引き出しに入れた。私だと思って肌身離さずつけておいてと言われているけど、さすがに今夜はつけたくない。

今夜はセイが来ると聞いているので、それまで時間つぶしに読書でもしよう。そう思っていたのに、お腹が満たされたからか、だんだん瞼が重くなってきた。



・・・うたた寝をしてしまったのだろうか。

夢というにはあまりにリアルな光景だった。過去の彼女の記憶をなぞっているのかもしれない。

場所は、見覚えあるアナスタシアの部屋だ。若い女性のものとは思えないくらい、無機質で何もない。必要最低限の家具が置いてある殺風景なしつらえ。灯りはなく、窓から差し込む月の光だけが僅かに明るい。

身に付けているのは深い青色のブラウスに黒のロングスカート。ふわふわとした豊かな髪は結わずに下ろしている。1人掛けのソファに足を組んで座っていた。

向かいに跪くのは、アナスタシアが唯一心を許した相手だ。

細く長い指に手を取られ、ちゅぱ、ちゅぱ、と丁寧に指を1本ずつ口に含まれ、吸われる。時折ざらりとした舌が皮膚を舐める感覚に、ぞわりと快感が湧きあがる。

犬のように従順な様子で、男が上目遣いにこちらを見つめた。薄闇のなかでも美しい輝きを孕んだ青い瞳が真っ直ぐに射抜く。わたしはからだの自由を奪われたかのように、身を固くさせた。

彼は、視線をこちらに向けたまま、反応を窺いながら的確に感じる箇所を見つけては刺激する。くちゅり、とことさらいやらしく音を立てて小指を舐め上げた。

「っああ・・・!」

堪えられなくなって声が漏れ出た。

「ふふ、飼い犬に舐められて気持ちよくなるなんて、いけないご主人様ですね。」

からかうような声音とはうらはらに、欲に濡れた目は力強い。わざと辱めるような視線をこちらに向けて、無言でさらなる痴態を要求した。

わたしは彼の欲望を満たす奴隷のようにふるまう。命じられるままボタンをはずし、彼の舌に合わせて自由なほうの手で自分の胸を見せつけながら揉みしだいた。

「やあ・・・・っん。あっ、はっ。」

静かな部屋に、彼が指を舐めまわす水音と、わたしの喘ぎ声が響く。

いやらしい姿を間近で見られていることに興奮して、からだの熱が上がる。わたしのほうが犬みたいだと思いつつ、弄る手を止められない。イきたいのに、最後までイけないもどかしさに苦しくなる。

我慢できなくて彼の首に手をまわしてキスをねだった。そのまま返事を待つ間もなく相手の唇に自分のそれを重ねる。舌と舌が絡みあうたびに下半身がじわりと濡れる。無心に咥内を舐めまわすと、相手もうっとりとした表情でわたしの舌を受け入れた。

彼の手がゆっくりと服の中に侵入して白く豊かな乳房をまさぐり、先端をつねる。わたしは半ば無意識に、すでに張り詰めた彼自身を服の上から撫でまわすと、彼が気持ちよさそうに喘いだ。

「は・・・っ、そんなことをしてっ。私の忍耐を試しているのですか?」

「あら、そういうわりに、ここは物欲しそうよ。」

くすくすと笑いながら、わざと下のほうから上へ向けて撫で上げる。なんとか優位に立とうとしているものの、もうイきたくて限界だった。なけなしの理性がなかったら、いますぐにでも彼の衣服を剥ぎとって、強引に跨って自分から挿れてしまいたかった。

彼の熱が、欲望が、ほしくてたまらない。からだが、熱くてたまらない。

・・・そこで、目が覚めた。

(うわ、なんて濃厚な。これで恋人同士じゃなかったなんて)

あまりのリアルさにしばらく現実と夢との区別がつかなかった。心なしかからだが熱い。

今まで、セイからアナスタシアへの好意をひしひしと感じていたものの、いまいち実感としてはわかっていなかった。

ふたりきりの淫らな逢瀬は、何度も何度も繰り返されたのだろう。こんな行為を重ねていたら、たとえ抜け殻わたしに対してもセイが執着するのも頷ける。

(完全にふたりだけの世界だったよね)



しばらく余韻にぼーっとしていると、トントントン、と秘密の合図のように3回ノックする音で我に返った。

慌てて「どうぞ」と返事をする。部屋に入ってきたセイは相変わらずの黒ずくめの服装で、沈んだ表情で口を真一文字に引き結んでいた。
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