SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)

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3章

ビトスライムとは

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「……レベル60じゃ」

 キキン国王が下を向いたまま言ったよ。

「レベル60……」

 もう、人間がどうこう出来るレベルじゃないよ。
 ロアロク国のCクラス魔法兵は、どんなデーモンを召喚できたんだろう。
 
 ロアロク、キキン、両国とも今でも存続しているわけだから、60レベモンスターを、ロアロクの魔法兵が何とか駆除したわけだ。

 銃や大包がないこの世界。
 国が所有する魔法使いの人数が、そのまま国の軍事力の差になる。 
 ロアロク国と、圧倒的な戦力差がついてしまった。
 いずれキキンは占領されてしまう。

 だけどねえ……、キキン国王さんよ。

 戦地(マナスル大山脈)のキキン兵士もろとも、モンスターにロアロク兵を襲わせるってどうなんだ?
 降伏する気にはならなかったのか。
 原爆を落とされた日本みたいに。
 
「国民にはこのことを……伏せて欲しい……」

 祈るように手を組んだ国王が、眼を細くする。

「もちろん、言うわけないです」

 言えるもんか。
 亡くなった兵士や、その遺族の気持ちを考えると。

 それに、内乱が起きるかもしれないよ。
 現在のキキン兵が黙っていない。そう思う。

「カタリヤとガイゴルですが、俺が拘束しておきます」

 これ以上、結界を壊されちゃたまらないからね。

「二人はキキン城の地下牢ではなく、俺のアイテム収納庫に入れます、いいですね?」

 あのカタリヤたちが自殺するとは思えないけど、
 万が一、カタリヤを監視しているビンソンの配下がいて、ソイツがカタリヤを暗殺する可能性だってあるしね。
 
「収納庫? よくは分からんが、分かった」

「ありがとうございます。
 それに、結界を壊す道具(小太鼓)も、俺が所持しますから」

「全てヒジカタに任せる」

 結界の修復には、悪いけど、アンフィニ大司教さんに頼もう。
 これで何度目かな~。
  
 
 ◆


 ビトくんがロアロク国に向かって飛行している。
 昔のゲイラカイト風な凧と言っても分かるかな? 魚のエイみたいな形状で飛んでいるよ。

 だけど、変形、アイテム収納庫などのレア能力はビトくんの意思で使えないので、このゲイラカイト風飛行形態は俺が作ったものだけどね。

「は、はやい……、凄い……」

 ビトくんが興奮しているよ。 

 眼下のマナスル大山脈には、倒壊した家屋の間から草木が生い茂っている。
 公道があったんだろうけど、草に埋もれて確認できないね。
 戦争を終えた当時の状態のまま50年の歳月が経過しているんだ。

「ですが、神よ。
 モンスターが、見当たりませんが」

「そうだね」

 ビトくんと飛行して1時間になるけど、見つけたモンスターは10体ほど。
 それもレベル10程度。

「たくさんあったモンスターが湧くポイントは、戦争終結後ロアロク国が封印、いわゆる結界でフタをしたと言ってたな」

「だから、モンスターがいないのか」

「マナスル大山脈は広大だ。せっかくの資源を、ロアロク国が利用しない手はないだろうね」

「……よくわかりませんが、さすがは神、深い読みです」

「だけど、……湧くポイントを完全に封印できていない。
 本来なら、山脈全域のポイント全てに結界を張り、街や村、採掘場などを作りたいけどそうならない。
 たぶん、キキン国が邪魔をしているからだろうね。
 カタリヤみたいに、結界を壊しているわけだ」

 キキンとロアロクが平和協定を結んでいるのは、両国間のマナスル大山脈にモンスターが生息しているから。
 もし仮に、モンスターが湧かなくなり、マナスルが安全に通行出来るようになったら、ロアロクがキキンに侵攻してくるかもしれない。

 だからキキン国は、キキン本土にモンスターの被害が及ばない程度に、マナスルは危険地帯であり続けて欲しいわけ。
 モンスターが良い意味で、壁であり盾なわけだね。



 飛行を続けて3時間後。
 マナスルを抜けると、緩やかな地平が見えたよ。
 高さ10メートル、幅5メートルの石壁が、川、池、小山、草原、広大な農耕地を取り込んで建造され、
 頭頂には、モンスターの襲撃に備えてだろう、幾つもの投石器が設置され、兵士が見張りをしているよ。

 その壁を越えて都心に向かうと、約10キロの間隔をおいて4つの外壁が街を囲っており、中央には、白光りしたドーム状の巨大城がある。

「ここがロアロク国か」

 キキンの外壁が完成すると、キキン国の安全領域は飛躍的に広がる。
 しかし、それと比べてみても、ロアロク国の安全領域のほうが遥かに広いね。
 人口、街の規模はだいたい10倍かな。

 さて、ビンソンはどこだろうか。
 
 キキン大使館は中央の壁から数えて、3番目の壁に囲まれた地域・第3区、通称ルーナ区にあるらしいけど。 

 俺はゆっくりと下降してゆき、そのまま外壁に引っ付いたよ。
 身体を壁の茶系色にして薄く伸ばし、アメーバーみたいに進む。

 誰も気づかない。
 よしよし。
 地上に降りて、人気のない場所で人間化しよう。

「さ、さすがです、神」

「いいか、ビトくん。
 ロアロクに来たのは、ビンソンを調べるため。場合によっては、ビンソンの身柄を拘束するよ」

 アイテム収納庫に放り込んで、キキン国王の前で実体化させる。
 何故ツェーン結界を破壊したのか、語ってもらおう。

 まあ、その前に、ビンソンが誰と繋がっているのか――――。
 俺は思うんだけど、ヤツ一人の考えでツェーン結界を壊し続けていたとは考えられないんだよね。
 裏で平和協定を結んでいるロアロク国のお偉いさんと繋がっていたりして。

「ピィー、ピィー」

「ピィー、ピィー」

 壁に沿って地上に向かっていると、1匹の猿みたいな生物が、壁の取っ手に掴まっていたよ。
 猿と言ったけど、背中から頭部にかけてハリネズミのような突起がある。
 それ以外は、猿そっくり。
 ピィーピィーと、可愛らしい声で泣いているよ。

「場所が変われば、生き物も違うのか」

 ビトくんが、身体の一部を細く伸ばして猿を触ろうとしたよ。
 瞬間、嫌な予感がした。

「わっ! こいつ、なにしやがるッ!」

 猿もどきの背中から針が数本発射され、ブスッブスツと、ビトくんの伸ばした身体を貫いたよ。
 刺された箇所がジンジンと痺れている。
 
「ううううう……ううう……」

 俺はさほど痛みを感じないけど、ビトくんは痛がっている。 

「偉大なる我が神のボディを傷つけやがって……」
 
 なんだ。
 怒っていたわけね。
 
「まあまあ、触ろうとしたビトくんも悪いって」

 いや、まてよ。
 よく見たら……。


―――――――――――――――――――

 ニードルモンキー Lv 3  

 生命力 30/30    

 ステータス

 攻撃力  12  
 素早さ   10  
 知能     2 
 運       4 

『毒針』

―――――――――――――――――――


 ありゃりゃ、この子、モンスターなんだ。
 レベル低いけど。
 
 攻撃技は毒針か。
 神経毒だろう。
 細く伸ばした身体の先、刺された部分がジンジンと痺れて、思うように動かないぞ。
 それに、痺れた箇所が急速に広がってゆく。
 
「あわわわわわわ。神よ~~」

「まあ、落ち着いて、ビトくん」

 そう言い、俺は伸ばした身体を根本から切断した。 
 
「はれ……?」

「なに、驚いてるんだよ。
 自在に分裂が出来るんだから、分断も容易だよ。
 毒が全身に回るより先に、捨てたほうが良いだろ?」

「た、たしかに、神のおっしゃるとおりです」

 ビトスライムという種が、何となく分かってきたよ。
 
 核さえ守れば、核さえ傷つかなければ、何処ででも生きていられる。
 核だけ取り出し、ビンの中へ入れても、たぶん大丈夫のはず(栄養補給できればだけど)。
 
 その証拠にビトくんが、核がない俺のボディに入り込んでも、普通に生きている。 
 核が無事だからだ。
 俺にビトくんの身体は取り込まれたけど、核だけは傷ついていないからだよ。
 
 ビトスライムの核は、人間でいう心臓なんかじゃなく、本体そのもの。
 核が俺自身であり、核以外は核を守る鎧のようなもの。
 ビトスライムの本体は、核だけなんだと思う。 
 
「そういった意味で、こんな芸当も可能になる」

「ああッ!」

 落ちてゆく切断した俺の身体を、針状に変化させて飛ばす。
 上手くニードルモンキーの腹に刺さったよ。

 もがくモンキー。
 青白い顔になり、たった5秒で力なく落ちていった。
 自分の毒が体中にまわったんだろう。
 
「核以外は、全て道具だよ。捨てた身体も、ああやって武器にすれば勿体なくないよね」

「な、なるほど……」

 分かってくれたみたい。

「核以外は、……不死身……、つまり神は不死身……」

「……」

 違うんだが、まあいいか。
 人間に比べれば、異常な生命力なんだし。

 それより、ついさっき、気になる事が起きたよ。
  
 
 ◆

  
 アシダダム旅館3階。
 高級カーペット、シャンデリア、絵画があるビップルーム内。
 カタリヤを監視している身長3センチの個体からの視点。

 キキン牛の皮で作られたソファーにカタリヤが座りコーヒーを飲んでいるよ。
 向かい合うガイゴルは、ロアロク国のビンソンに向けて手紙を書いている。

「結界が張られるまで、このまま待機で宜しいですね。カタリヤさま」

「そうね、滞在費の追加を依頼しておいてよ」

「了解しました」

 国王に了解を得たから、さっそくカタリヤとガイゴルを拘束しとこう。
 たった身長3センチの俺だけど、会話からなんでも俺に筒抜けね。
 特殊能力も俺の本体と変わらない。
 俺は人間に変形してカタリヤの前、テーブル上の飲み終えたコーヒーカップの真横に立ったね。
 
「……なに、この動いてるの……小人?」

 カタリヤが消しゴムサイズのヒジカタ(俺)に気づき、指を伸ばしてきたよ。
 両手で受け止め、逆に押し戻したね。

 軽く押し戻したつもりだったんだけど、勢い余ってカタリヤはソファーごと後ろに倒れてしまった。

「カタリヤさまッ!」

「え……?」

 カタリヤとガイゴルは、何が起こったのか理解できないみたい。
 カタリヤは傾いたソファーから顔だけだしている。 
 俺はテーブルの上をゆっくりと歩きながら話しかけたよ。

「カタリヤ並びにガイゴルよ。
 君らはツェーン結界を壊した罪により、身柄を拘束する」

「し……喋った!」

「し、……信じられん……」

「小人っていたんだ」

 そこに驚いているわけね。
 話しの内容は頭に入ってないみたい。

「童話の世界」

「おっさんなのが、逆にリアルね」

 説明するのが面倒くさいなあ。
 さっさと、アイテム収納庫に入れちゃおう。

 そう思い、展開しようとして停止した。

 俺の身体から、青い砂のような物が煙のように浮き上がっては消えてゆく。
 消えた体積ぶんだけ、俺の身体が削られているよ。
 
「……どうなってるの」

 いや、俺も知りたいんだけど。
 カタリヤたちに注目されながら、30秒後、ついに俺の身体はなくなり視界も消えた。
 拘束どころじゃなかったよ。


 気にはなっていた。
 俺が分裂個体を10体作成して、もうすぐ丸3日になろうとするよ。

 1体は、5時間前からビトくんが同居している。
 1体は、アンフィニ大司教さん担当(ツェーン結界作成)。
 それ以外はキキン国の警備をさせている。
 カタリヤを監視していたのは、分裂個体から更に分裂した3センチの個体。
 
 これっていつまで稼働できるんだろう?
 各個体が栄養を取り続ければ、いつまでも生き続けられるとは思えない。 
 そう思っていた矢先、一番小さな個体が消滅したよ。
 
 分裂個体には寿命があって、それは3日。
 いや、身体の大きさで寿命の長さが決まるのかもしれない。

 とすれば……他の個体もいずれ消滅してしまう。
 ビトくん以外の各個体と、一度統合しなきゃだめだな。

 俺(本体)は、キキン上空で待機していた。
 集まってきた分裂個体を取り込んでゆく。
 最後の1体が加わったら、俺の身体が大型バス級のスライムになったね。
 下がっていた各ステータスも元に戻ったよ。

「……想定内だったんだけど」

 でかい。
 でか過ぎる。

 このままじゃ、魚屋さんができないんだけど。
 それ以前に、家に入れないよ。
 仕方がない。
 久々に核も分裂させて、個体(SSたち)をつくるかな。

 

 地上に降りて5分後。

「ちょっと分け過ぎたかもしれない」

「なにこれ」
「ちょっと、押さないでよ~」
「いいじゃん」

 レベル1の小さなSSスライムが15匹、俺のまわりに群がっているんだけど。
 因みに、俺の頭の上にも5匹がトーテムポールしているよ。

「これが触手かあ」
「ちがうよ、おちんちん」
「あたちないけど」

 勝手に人間化した子もいるよ。

「ゆれる……」
「キャッキャ」

 うーむ。
 振り出しに戻ったような気がするんだけど。
 
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