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2章

二日目

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 オープンして2日。

 港が騒がしいね。
 魚市場じゃなく、大きな船が入港したので、人だかりが見える。

 なにが言いたいかって?

 はい。
 ズバリ、ひまです。
 暇を持て余してますよ。

 1人いたお客さんは、ついさっき食べ終えて帰っちゃったので、窓から景色を眺めているんだよね。
 それだけ、ひまってこと。
 SSたちはあやとりをして遊んでいるよ。
 
「ヴァーチェ国からの船ですって、お父さん!」

 階段を踏み鳴らし入って来たよ。

「ヴァーチェ国?」

「なんでも、ここまで大型船で2ヶ月もかかったとか。ヴァーチェ国はキキン国より栄えてて、四季があり、温暖な地域だそうです」

「へー。日本と似てるのかな」

「日本?」

「俺が昔生きていた国の名前だよハヤテ」

 お父さんと俺を呼ぶこの青年はハヤテ。
 男の子タイプのSSの中で1番すばしっこいから、疾風はやてと命名したよ。
 キラーウルフを食べて、もう5歳児の身体でなく、身長170センチの18歳くらいだね。

 男の子タイプは3匹ともこれくらいのボディになっている。
 店主とロアンくんには、『5歳児の男の子は記憶が戻り、両親の元へ送り届けたから』と説明し、ハヤテたち3人はギルドで新規に雇った寿司店員と言っているよ。

「それでですね。ツェーン洞窟の弱体化した結界を、もう一度強化するためらしいですよ」

「へー、出来るんだ」

 冷静に考えれば、誰かが結界を張ったわけだし、ならば補強も出来るよね。

「助かるなあ。もうSSたちとポラリスくんがモンスター討伐しなくてすむ」

「アンフィニ大司教と、使徒100人がキキンの街を巡ってます」


 ◆

 
 さらに5日後。
 
「サラダ巻きおかわり~」
「こっちはチャーハン巻き」
「本マカト巻き(鉄火巻き)」

 満席だよ。
 賑わっちゃったよ。

 昨日、キキン国王がお供を20名も連れてお店に来たのが大きいね。
 お客さんが、無人くんだったので貸し切りになり、一度に全員で食べれないので、外で待ってもらったよ。

 前もって、俺の店の規模を知らせておけばよかったんだろうけど、まさかアポ無しで来店するとは思いもしなかった。

 キキン国のお偉いさんたちが、見た目5歳児のSSたちが働いているのに、何も注意がなかったのでちょっと安心。
 まあ、地球で言う中世の時代みたいな世界だから、法律も整備されてないんだろうね。

 とにかく、国王が帰った直後から、お客さんがぞろぞろ入ってきたよ。
 
「ここが国王ご推薦のお店かあ」
「第10回グルメグランプリで優勝したらしいわよ」
「ほら、タペストリーが飾ってあるね」

「いらっちゃいませ~♪ ごちゅうもんは、お決まりでちゅか♪」

 SSたちノリノリなんだけど、大丈夫かなあ。

「ほう、これはこれは可愛い店員さんだ。どうも、ありがとう」

 お水を背伸びしてテーブルに置いたSSに、22歳位の自衛軍のイケメンがウインクしたよ。

「まあ、そんな。だめでちゅよお客ちゃま」

「?」

 キヨトンとするお客さん。

「あぴーるしても、もらえないの。きまりなの」

 アピールを貰えない?
 たしかに、何も貰ってはダメとは言ったが。

「それに、あたち心に決めたひとがいるから、おつきあい、できないの。ごめんなちゃい」

 ……、……へ?

「あっはは。こりゃ、おもしろい!」

 人間離れした行動ではないが。

「ダメだよスーちゃん」

「どうちたのランちゃん?」

「せっかく、おきゃくちゃんがゆうきをしぼって、スーちゃんにコクったのに」

 スーちゃんてなんだ? ランちゃんて。
 SSたち勝手に名前を付け合ったのか。

「わるいこと、しちゃったの、あたち?」

「ぜったいそうよ」

「きのどくよ、イケメンなのに。……まあ、ないてるよ」

 腹を抱えてだけど。
 ツボだったみたい。 

「ごめんなちゃい。きずついちゃった?」

「だれだって、フラれると心がいたくなるよー」

「ランちゃん、もの知りだね」

「しきじょうよ、しきじょう!」

 常識と言いたいんだね。

「なかないでお客ちゃん。きようは、あたちたちのおごりにしとくから、げんきをだしてね♪」

 なに、勝手に決めてるの?
 自衛軍の若者が、笑いを堪え、「も、もう、それくらいにしてっ」と苦しそうに言ったよ。

「まあ、そこまでスーちゃんが、すきなの」

「罪なあたち。モテるって、ときにつらいわ」

 SSたちよ……。
 ちょっと、カウンターまでおいで。

 
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