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2章

オープン

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 オープン当日。
 店内には、お客さんが3名。
 
 広告を入れたわけじゃないし、店の外観を華々しくしたわけでもない。
 ただ、ギルドの紹介板の横に手書きのポスターを張って、1階の魚屋店舗横に、『2階で寿司屋始めました』と看板立てただけだもんね。
 認知されていないだろから、こんなもんだろう。

 だけど……。

「いらっちゃいませ~♪ ごちゅうもんは、お決まりでちゅか♪」

「な……なにやってるの?」

「おてつだいするの」
「あたちもよ」
「オープンでいそがしいもんね」
「「「ねーっ♪」」」

「気持ちは有り難いが……」

 3人のお客さんの周りを、SS3匹が立ってじ~~っと見てるんだが。
 食べにくいだろう。
 むしろ営業妨害に近いんだけど。

 物欲しそうにしているSSたちに、お客さんがご好意で巻き寿司を1つづつあげてるぞ。
 あたち、本当はサラダ巻きが好きなんだけどなあ~、なんて言ってるし。

「あたちはチャーハン巻きがいい」
「だったら、あたちはたまご巻きでいいよ」

 お客さんに注文させて食おうとしてるんだけど。

「ち、ちょっと」

 振り向くSSたち。

「ますたー、なあに?」

 マスターじゃないから。

「ちょっと、こっちへ来なさい」

「ごめんなちゃい。チェンジのお時間みたいなの」

 意味不明なんだが。

 3匹をカウンターに入れ、お客さんに食べ物を貰ったり、要求したりしてはダメだと説明したよ。

「たべものじゃなきゃいいの」

 何を貰う気なんだよ。

「とにかく、店内では何も貰っちゃダメ」

「そうなの」
「ゆるされないの」
「じゃあ、アフターなら」

「とにかくダメだって」

 てか、なんでアフターって言葉知ってんだよ。

 まあ、それより、もっと気掛かりなことがある。
 5歳児を働かせていいんだろうか。
 5歳児と言う以前にスライムだけど。
 いや、まあ、人間にしか見えないから、そこは問題ないとして、この国の法律がOKなのかどうなのか。

「あっ、またお客ちゃん、きた――っ♪」
「「「いらっちゃいませ~♪」」」
 
 カウンターからちょろちょろ出て行くSSたちの姿は、身なりは、描写していなかったけど、ちょこっと遊び感覚でお手伝いして貰っているレベルじゃないんだよね。

 再び呼び戻す。

「どうしたの、その制服と言うか、衣装と言うか」

 3匹のSSたちが着ていたのは、黒と白を基調とした一般的なメイド服。
 複雑なレースの花柄模様もついているし、5歳児の身長に合わせオーダーメイドしたみたいにピッタリなんだけど、どうやって手に入れたんだ。 
 
「ぬったの」
「ウソいっちゃダメだよ」
「えへへへ」
「お身体のなかでね、つくっちゃったんだよね」

 身体の中。
 俺みたいに体内に生地を入れイメージでメイド服を作っちゃったってことか。
 
 へーっ、SSにも出来るんだ。
 いや、よくイメージできたなメイド服なんか。


「こっち、チャーハン海鮮巻き寿司ね」

「ごちゅうもん、ありががとうございまちゅ~♪」

 また行こうとするのを止めて、――絶対に人間離れした行動はしないように! 

 と釘を差して、やらせることにしたよ。
 
 あーでも、5歳児の身長では、テーブルを拭くのも踏み台がないと無理なんだよな。
 黒い頭が、店内を3つうろうろしている。

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