癒しの村

Yuri1980

文字の大きさ
上 下
16 / 34

15.疑惑

しおりを挟む
 浣腸をかけてから、ほどなくして便の臭いが鼻をついてくる。

 私とミサト、アイリは、便の汚れを拭き取り、新しいオムツにかえていく。額からどんどんと汗が垂れ落ちていく。

 汗と便の臭いが混じり合い、不快感はあったが、ケイジさんやケイコさんたちは、私たちに全ての身を委ねている。

 つぶらで純粋な目はキラキラ輝いて、愛おしく感じられた。

 排泄ケアが終わり、一息ついていると、ミサトはハーフパンツとTシャツ姿に着替えていた。私にも着替えを渡される。

「今日は、午前中にケイジさんが、午後にミクちゃんがお風呂に入る日なの。全介助で大変だから、曜日と午前、午後でわけているの」

 ミサトが話している間に、私は着替えをしてしまう。
  
 着替え終わった私を、ミサトは浴室へと案内してくれる。

 ベッド部屋から、廊下を歩いていき、突きあたりが浴室だった。途中に、廊下が分かれ、台所と二つの部屋があった。

「ここが浴室。途中の二つの部屋は、物品の部屋と、私たちの食事部屋よ。あとで、紹介するね」

 ミサトは、浴室の暖簾をあげながら、手早く説明していく。

「ここが、着替え場。ミクちゃんたちは、ストレッチャーで移動して、ここで服を脱いで、そのまま隣の浴室に行くの」

 ミサトは、着替え場から浴室のドアを開く。中は広々とした空間で、シャワーが2つと大きな浴槽があった。

「機械浴になっているの。操作の仕方は、また説明するね。簡単だから、大丈夫!」

 ミサトが言った、機械浴という単語がひっかかる。アキヲの言葉が頭をよぎり、思い出される。

 ‘’電気がそこだけ、通っている。一体どこからきているのか、探るんだ‘’

 確かに、ここには電気が通っている。浴室には、カセットデッキがあるのも見つけた。音楽を聴くことができるのだ。

「ミサト、リサ、ケイジさんの準備は、私がするわ。浴室のほう、任せていい?」

 アイリが浴室のドアを勢いよく開けて言った。

「オッケー!お湯が沸いたら、リサにそっちを手伝ってもらうわ」

 ミサトは、了解のポーズを両手で作り、アイリに応えた。

「リサ、よろしくね。わからないところは、どんどん聞いてね」

 アイリはそう言って、ケイジさんのほうへと駆けていく。

 私は、ミサトに言われるまま、浴槽に湯を入れ、洗い場に石鹸やシャンプーを準備し、機械浴の操作を教わる。

 湯が沸くと、ミサトにアイリのところへ行くように言われ、私はアイリのように廊下を駆けて行った。

 アイリは、ストレッチャーにケイジさんを移動させて、ベッドにはバスタオルを敷いて私を待っていた。

「お湯、沸きました!」

 私がそう言うと、アイリは頷き、ストレッチャーを動かし始める。

「了解!リサ、ストレッチャーの後ろを押してもらっていい?」

 アイリに指示されるまま、私は頷いてストレッチャーの後ろにまわり、ケイジさんを着替え場まで移動させる。

 ストレッチャーが通るから、廊下は広めに作られているのだと理解する。

「わうーん!」

 ケイジさんは、嬉しそうに発声し、ニコニコと笑う。

 ケイジさんの、純粋に輝く、つぶらな目が力を与えてくれるようだった。私は、腰に力を入れ、ぐいぐいとストレッチャーを後ろから押していく。

 

 

 
しおりを挟む

処理中です...