上 下
274 / 349
砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

256【挨拶回りの前後編08】三班長がいない朝のミーティング

しおりを挟む
【パラディン大佐隊・ミーティング室】

 一班長・ハワード、フィリップス、エリゴールの順に入室。
 三班長・プライスの席は空席。ハワードとフィリップスは顔を見合わせて溜め息をつく。

七班長・カットナー
「あ! 今日は元四班長が来た! チャージ開始ッ!」

五班長・ロング
「いちいち声に出すな! この変態が!」

二班長・キャンベル
「あの……まだ三班長が来ていないんですが、今日は欠席ですか?」

一班長・ハワード
「元四班長。……どうする?」

エリゴール
「とりあえず、今日は欠席だ。一昨日おととい、三班長は班長を辞めて退役したいという話を一班長にした」

二班長・キャンベル
「……え?」

フィリップス
「元四班長! それ言っちゃうの!?」

エリゴール
「言っちゃうも何も事実だろう。それで昨日きのう、一班長が三班のドックに行ったが、三班長は退役の意志を曲げなかった。今日あたり、大佐に退役願を提出するかもしれないな」

一班長・ハワード
「真顔でもっともらしいことを……!」

フィリップス
「しかし、嘘とも言いがたい絶妙な匙加減……!」

五班長・ロング
「……そうか。退役を希望したか」

エリゴール
「あまり驚いていないな。薄々思ってはいたのか?」

四班長・ワンドレイ
「いや、驚いてはいるよ。あいつが自分から辞めると言い出すなんてな。辞めるとしたら、あんたか大佐に言われてだろうと思ってた」

エリゴール
「大佐ならともかく、俺がそんなこと言うわけないだろ」

フィリップス
「……まあ、最初に言ってはいないか……」

二班長・キャンベル
「三班長は……退役できるんですか?」

エリゴール
「それは大佐しだいだが、いずれにしろ、班長だけは確実に辞めることになる。……次の班長が決まるまで、ミーティングには副班長を出させておくか」

七班長・カットナー
「三班だったら、班長決まるまで欠席でもよくないですか?」

六班長・ラムレイ
「言いにくいことをはっきりと……」

八班長・ブロック
「ということは、おまえもそう思ってたんだな」

エリゴール
「俺が言うのも何だが、三班長の退役に異存はないのか?」

七班長・カットナー
「はい。まったくありません」

八班長・ブロック
「はっきりしすぎ!」

七班長・カットナー
「そんなこと言われても。今は十二も班があるから、三班いなくても全然困らないし」

九班長・ビショップ
「言われてみれば確かにそう」

十班長・ヒールド
「にしても、もっと言い方があるだろう……」

エリゴール
「……三班長には人徳もなかったのか」

フィリップス
「言い方ー!」

四班長・ワンドレイ
「まあ、俺たちにとっては気のいい同僚だったがな。正直、班長は向いていないと思っていた」

五班長・ロング
「アルスター大佐があいつを三班長に任命したとき、本人も驚いてたが、俺たちも内心驚いてたよ」

エリゴール
「結論として、やはりアルスター大佐が問題か」

フィリップス
「極論な気もするけど異論はないよ」

一班長・ハワード
「おまえたち……ドライすぎる……!」

七班長・カットナー
「そうですか? 三班長も俺たちのことは何とも思ってなかったから、いきなり一班長に退役の話をしたんじゃないんですか?」

五班長・ロング
「くそう! 変態のくせに鋭い指摘を!」

六班長・ラムレイ
「変態ですが、馬鹿ではないので。……悔しいことに!」

八班長・ブロック
「いったい何がそんなに悔しいんだ……」

エリゴール
「なるほど。そういう見方もできるな。三班長にとってあんたたちは、自分の内心を打ち明けられるような相手じゃなかったんだろう」

四班長・五班長
「うっ!」

七班長・カットナー
「それはそう」

六班長・ラムレイ
「おまえ……実は三班長と何かあったのか……?」

エリゴール
「では、一班長。話をまとめてくれ」

一班長・ハワード
「ここで俺に投げるのか!? ……まあ、そういうわけで、プライスは退役を希望している。三班長の後任が決まるまでは、代理として副班長を出席させる。……伝達係くらいはできるだろう」

エリゴール
「それから、今日の十一時。ドレイク大佐が大佐の執務室を訪ねてくる。その時間の前後には〝大佐棟〟の周りで誰もうろちょろしないこと。いいな?」

一班長以外の班長たち
「ええーッ!」

フィリップス
「三班長のときと反応が全然違う……」

一班長・ハワード
「プライスにもっと優しい言葉をかけてやればよかったかな……」

七班長・カットナー
「いったい全体、どんな経緯でそんなことに?」

エリゴール
「この前、大佐同士の直接交流が解禁になっただろう? それでドレイク大佐が挨拶回りをしたいと思ったそうだ。他の大佐のところにも回るようだから、それほど長居はしないだろう」

八班長・ブロック
「あのドレイク大佐が……遠目から見られないかな……」

七班長・カットナー
「そんなことしなくても、〝大佐棟〟の防犯カメラの録画見ればいいだろ」

八班長・ブロック
「あ、そうか」

五班長・ロング
「あ、そうかじゃない。変態の口車に乗るな」

フィリップス
「……ドレイク大佐の挨拶回りで、三班長の退役話は完全に吹っ飛ばされたよ、おとっつぁん」

一班長・ハワード
「プライスは無断欠席して正解だったな……」

フィリップス
「元四班長が誤魔化してたのに、無断だってことバラすなよ。……まあ、誰も聞いてないからいいか」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

BL学園の姫になってしまいました!

内田ぴえろ
BL
人里離れた場所にある全寮制の男子校、私立百華咲学園。 その学園で、姫として生徒から持て囃されているのは、高等部の2年生である白川 雪月(しらかわ ゆづき)。 彼は、前世の記憶を持つ転生者で、前世ではオタクで腐女子だった。 何の因果か、男に生まれ変わって男子校に入学してしまい、同じ転生者&前世の魂の双子であり、今世では黒騎士と呼ばれている、黒瀬 凪(くろせ なぎ)と共に学園生活を送ることに。 歓喜に震えながらも姫としての体裁を守るために腐っていることを隠しつつ、今世で出来たリアルの推しに貢ぐことをやめない、波乱万丈なオタ活BL学園ライフが今始まる!

選択的ぼっちの俺たちは丁度いい距離を模索中!

きよひ
BL
ぼっち無愛想エリート×ぼっちファッションヤンキー 蓮は会話が苦手すぎて、不良のような格好で周りを牽制している高校生だ。 下校中におじいさんを助けたことをきっかけに、その孫でエリート高校生の大和と出会う。 蓮に負けず劣らず無表情で無愛想な大和とはもう関わることはないと思っていたが、一度認識してしまうと下校中に妙に目に入ってくるようになってしまう。 少しずつ接する内に、大和も蓮と同じく意図的に他人と距離をとっているんだと気づいていく。 ひょんなことから大和の服を着る羽目になったり、一緒にバイトすることになったり、大和の部屋で寝ることになったり。 一進一退を繰り返して、二人が少しずつ落ち着く距離を模索していく。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

処理中です...