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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

256【挨拶回りの前後編08】三班長がいない朝のミーティング

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【パラディン大佐隊・ミーティング室】

 一班長・ハワード、フィリップス、エリゴールの順に入室。
 三班長・プライスの席は空席。ハワードとフィリップスは顔を見合わせて溜め息をつく。

七班長・カットナー
「あ! 今日は元四班長が来た! チャージ開始ッ!」

五班長・ロング
「いちいち声に出すな! この変態が!」

二班長・キャンベル
「あの……まだ三班長が来ていないんですが、今日は欠席ですか?」

一班長・ハワード
「元四班長。……どうする?」

エリゴール
「とりあえず、今日は欠席だ。一昨日おととい、三班長は班長を辞めて退役したいという話を一班長にした」

二班長・キャンベル
「……え?」

フィリップス
「元四班長! それ言っちゃうの!?」

エリゴール
「言っちゃうも何も事実だろう。それで昨日きのう、一班長が三班のドックに行ったが、三班長は退役の意志を曲げなかった。今日あたり、大佐に退役願を提出するかもしれないな」

一班長・ハワード
「真顔でもっともらしいことを……!」

フィリップス
「しかし、嘘とも言いがたい絶妙な匙加減……!」

五班長・ロング
「……そうか。退役を希望したか」

エリゴール
「あまり驚いていないな。薄々思ってはいたのか?」

四班長・ワンドレイ
「いや、驚いてはいるよ。あいつが自分から辞めると言い出すなんてな。辞めるとしたら、あんたか大佐に言われてだろうと思ってた」

エリゴール
「大佐ならともかく、俺がそんなこと言うわけないだろ」

フィリップス
「……まあ、最初に言ってはいないか……」

二班長・キャンベル
「三班長は……退役できるんですか?」

エリゴール
「それは大佐しだいだが、いずれにしろ、班長だけは確実に辞めることになる。……次の班長が決まるまで、ミーティングには副班長を出させておくか」

七班長・カットナー
「三班だったら、班長決まるまで欠席でもよくないですか?」

六班長・ラムレイ
「言いにくいことをはっきりと……」

八班長・ブロック
「ということは、おまえもそう思ってたんだな」

エリゴール
「俺が言うのも何だが、三班長の退役に異存はないのか?」

七班長・カットナー
「はい。まったくありません」

八班長・ブロック
「はっきりしすぎ!」

七班長・カットナー
「そんなこと言われても。今は十二も班があるから、三班いなくても全然困らないし」

九班長・ビショップ
「言われてみれば確かにそう」

十班長・ヒールド
「にしても、もっと言い方があるだろう……」

エリゴール
「……三班長には人徳もなかったのか」

フィリップス
「言い方ー!」

四班長・ワンドレイ
「まあ、俺たちにとっては気のいい同僚だったがな。正直、班長は向いていないと思っていた」

五班長・ロング
「アルスター大佐があいつを三班長に任命したとき、本人も驚いてたが、俺たちも内心驚いてたよ」

エリゴール
「結論として、やはりアルスター大佐が問題か」

フィリップス
「極論な気もするけど異論はないよ」

一班長・ハワード
「おまえたち……ドライすぎる……!」

七班長・カットナー
「そうですか? 三班長も俺たちのことは何とも思ってなかったから、いきなり一班長に退役の話をしたんじゃないんですか?」

五班長・ロング
「くそう! 変態のくせに鋭い指摘を!」

六班長・ラムレイ
「変態ですが、馬鹿ではないので。……悔しいことに!」

八班長・ブロック
「いったい何がそんなに悔しいんだ……」

エリゴール
「なるほど。そういう見方もできるな。三班長にとってあんたたちは、自分の内心を打ち明けられるような相手じゃなかったんだろう」

四班長・五班長
「うっ!」

七班長・カットナー
「それはそう」

六班長・ラムレイ
「おまえ……実は三班長と何かあったのか……?」

エリゴール
「では、一班長。話をまとめてくれ」

一班長・ハワード
「ここで俺に投げるのか!? ……まあ、そういうわけで、プライスは退役を希望している。三班長の後任が決まるまでは、代理として副班長を出席させる。……伝達係くらいはできるだろう」

エリゴール
「それから、今日の十一時。ドレイク大佐が大佐の執務室を訪ねてくる。その時間の前後には〝大佐棟〟の周りで誰もうろちょろしないこと。いいな?」

一班長以外の班長たち
「ええーッ!」

フィリップス
「三班長のときと反応が全然違う……」

一班長・ハワード
「プライスにもっと優しい言葉をかけてやればよかったかな……」

七班長・カットナー
「いったい全体、どんな経緯でそんなことに?」

エリゴール
「この前、大佐同士の直接交流が解禁になっただろう? それでドレイク大佐が挨拶回りをしたいと思ったそうだ。他の大佐のところにも回るようだから、それほど長居はしないだろう」

八班長・ブロック
「あのドレイク大佐が……遠目から見られないかな……」

七班長・カットナー
「そんなことしなくても、〝大佐棟〟の防犯カメラの録画見ればいいだろ」

八班長・ブロック
「あ、そうか」

五班長・ロング
「あ、そうかじゃない。変態の口車に乗るな」

フィリップス
「……ドレイク大佐の挨拶回りで、三班長の退役話は完全に吹っ飛ばされたよ、おとっつぁん」

一班長・ハワード
「プライスは無断欠席して正解だったな……」

フィリップス
「元四班長が誤魔化してたのに、無断だってことバラすなよ。……まあ、誰も聞いてないからいいか」
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