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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

114【交換ついでに合同演習編19】訓練一日目:椅子作りレース二回戦

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【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「やった! 〝先生〟に勝った! そして何より、一班に勝った!」

クルーA
「でも、あの負けず嫌いな〝先生〟が、また同じことを繰り返すとは思えません。必ず何かしらの手を打ってくるはずです」

ラムレイ
「まさか……〝先生〟まで〝移動しながら変形〟してくるか?」

クルーA
「あの〝先生〟にそれをやられたら勝ち目はありませんが、あれだけの速さで〝その場で変形〟できるなら、今までそんな練習はしたことがないでしょう。〝蛇〟ならともかく、いま俺たちの変形方法を見ただけで、すぐに真似できるものでしょうか?」

ラムレイ
「〝先生〟ならできそうな気もするが、プライド的にできなそうだな。とにかく、早くスタート地点に戻ろう。次の号令は俺たちがかけられる」

クルーA
「班長も元四班長みたいにフェイントかけますか?」

ラムレイ
「俺はそんな姑息なことはしない! ……何かかっこいい号令ないか?」

副長
「うーん……〝発進〟?」

副長以外
「それだ!」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「まさかの〝最初から前〟作戦!」

ハワード
「あの〝先生〟が……それほど六班に負けたのが悔しかったのか……!」

エリゴール
「なるほどな。最初から最後尾を、班長艦・副班長艦と並べておけば、〝移動しながら変形〟する必要はなくなるな。六班に勝つためにプライドを捨てたか」

フィリップス
「まあ、競技じゃないからあれもありだけど……六班はいったいどうするつもりだ?」

ハワード
「いや、それよりうちはどうするんだ? このままでは六班にも十一班にも勝てない!」

ハワード・フィリップス
「元四班長っ!」

エリゴール
「そんなすがるような目で見られても……俺は十一班のあの方法がいちばん堅実だと思うが」

フィリップス
「はっ、そういえば、元四班長は〝最初から縦〟派だった!」

ハワード
「派閥違いか!」

エリゴール
「そうだ。俺は〝最初から縦〟派。だからこう考える。〝それなら最初から全部完成させておいて飛んでもいいんじゃないか。……それで飛べるなら〟」

ハワード・フィリップス
「は?」

 ***

【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ヴァッサゴ
「何か……右側三班だけの戦いになりそうな予感……」

ザボエス
「そうだな。俺らは地道に〝最初から前〟だ」

ヴァッサゴ
「え?」

ザボエス
「最初から最後尾を前列に持ってきちまう。班長隊も副班長隊も、前列三隻・後列二隻の隊形にして、副班長隊を先行させる。うまくタイミングを合わせられれば、配置についたとほぼ同時に〝椅子〟を作れる」

ヴァッサゴ
「うまくタイミングを合わせられれば、か……何でもそうだな」

ザボエス
「そうそう。だから右側の三班は無視して、俺らはひたすら自己研鑽だ」

ヴァッサゴ
「……俺らの両脇もその道を選んだみたいだぞ」

ザボエス
「そういや、七班と九班は同じAチームだったな。元チームメイトのよしみで付き合ってくれるのかな」

ヴァッサゴ
「まあ、仲間が増えてくれるのはいいことだ」

ザボエス
「まったくだ」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「一班は何というか……思いきったな」

レラージュ
「一班は休憩時間中ですから、何を試すのも自由でしょう」

ロノウェ
「そりゃそうだが……あれで隊形崩さずに飛べるのかね」

六班長・ラムレイ
『それじゃ皆さん、準備はいいですか? ……〝椅子〟組、発進!』

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

フィリップス
「いかにも六班的号令……」

ハワード
「元四班長のフェイントよりはいいだろ」

エリゴール
「フェイントかけてやっても、一班は三位だったな」

ハワード
「うちがいちばんそのフェイントに引っかかった。……ということにしておいてくれ」

 ***

【パラディン大佐隊・第八班第一号ブリッジ】

八班長・ブロック
「何か、〝椅子〟組、楽しそうでいいなあ……」

副長・ウィルスン
「俺たちも、五回とは言わないから、三回くらいやらせてもらいたいよな」

ブロック
「もう移動隊形からスタートしてるの、六班だけになってるし」

ウィルスン
「今度はどこがトップだ?」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

二班長・キャンベル
『ただいま判定結果集計中です! しばらくお待ちください!』

ハワード
「元四班長に催促される前に宣言するようになったな」

フィリップス
「何だろう……今、各班でビデオ判定でもしてるんだろうか……」

ハワード
「確かに判定難しそうだよな……こっちは七班もいるし」

二班長・キャンベル
『お待たせしました! 二回戦判定結果発表します! 一位・一班、二位・十一班、三位・六班です!』

フィリップス
「う……一位にはなれたけど、何か悔しい……」

ハワード
「全然〝移動しながら変形〟してないからな」

フィリップス
「なぜだ……なぜ一位になれてしまったんだ……」

エリゴール
「横列隊形で猛スピードで走る訓練したからだよ。あのAチームのときに」

フィリップス
「ああ、そうか、横の並びさえそろってれば、〝椅子〟の隊形はほとんど崩れない」

エリゴール
「あんたらは、この〝椅子〟に限っては、〝移動しながら変形〟はしないほうがいいんじゃないか?」

フィリップス
「うう……元四班長が俺たちを〝移動しながら変形〟できない体にした……!」

エリゴール
「だから『この〝椅子〟に限っては』って言っただろ。あんたらの大好きな〝横縦〟は別だ」

フィリップス
「そうか! 俺たちにはまだあれがあった! いや、あれこそが俺たちの真技しんぎ!」

エリゴール
「まあ、配置的にそうだな。少なくとも、今度の演習までは」

フィリップス
「どうする、おとっつぁん。あと三回、〝空飛ぶ椅子〟、続けるか?」

エリゴール
「……〝空飛ぶ椅子〟……まあ、今だけ限定ならいいか」

ハワード
「本当は〝移動しながら変形〟したい。だが、負けるまでは〝空飛ぶ椅子〟を続けてみよう。十一班、六班がこのままで終わるはずがない!」

エリゴール
「確かにな。今度はどんな手を打ってくるかな。……ああ、あと号令は二位の十一班に譲るからな」

ハワード
「それは全然かまわないが……何て言うんだろう、十一班……」

 ***

【パラディン大佐隊・第十一班第一号ブリッジ】

ロノウェ
「あのスピードでそのまま〝椅子〟を飛ばされちゃーかなわねえな。あんなことを考えるのは、絶対エリゴールだ」

レラージュ
「俺もそう思いますが、一班ならそれができると思ったからやらせたんでしょう。実際、一班にはあの方法が合っていました。……うちも一度、試しにやってみますか?」

ロノウェ
「レラージュ……」

レラージュ
「今は練習時間です。試せることは練習のうちに試しておかないと。本番ではできません」

ロノウェ
「……おまえも変わってるところは変わってるな」

レラージュ
「当たり前です。でも、久しぶりに班長のバカ発言を聞けたので安心しました」

ロノウェ
「何でだよ」

 ***

【パラディン大佐隊・第六班第一号ブリッジ】

六班長・ラムレイ
「くそう! 一班に負けた! 勝つためには手段を選ばないのか!」

クルーA
「普通はそうです。あと、十一班にも負けてます」

ラムレイ
「十一班……〝最初から縦〟は嫌だと言っていたのに……!」

クルーA
「やはり、勝つためでしょう。結局、一班に負けましたけど」

ラムレイ
「勝つためには、やはり〝移動しながら変形〟は諦めなければならないのか!」

クルーA
「そこまでは言いませんが、でも、十一班のように、最初から前列三隻・後列二隻にしておいてもいいんじゃないでしょうか。移動しながら後列二隻を上昇させ、合体させましょう」

ラムレイ
「……そうだな。〝飴ちゃん〟五個のためには、妥協も必要だな」

副長
「え! 優先順位そっち!?」

 ***

【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ヴァッサゴ
「すげえな、一班……〝椅子〟で飛んで一位……」

ザボエス
「……うちは〝盾〟やらされてたから無理かな」

ヴァッサゴ
「何が?」

ザボエス
「一班と同じこと。横列隊形で猛スピードで飛べるとこならできるはずだが……たとえばうちの両脇とか」

ヴァッサゴ
「どうかな……やってみるのか?」

ザボエス
「両脇の実験台になってやろうかと思ってな。……というのは半分で、あとの半分は、ただ単に自分がやってみてえだけだ」
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