寂しいからそばにいて（仮）【『無冠の皇帝』スピンオフ】

砲撃のパラディン大佐隊編（【05】の裏）

86【合流編05】全班長会議終了後（十一班の場合）

【パラディン大佐隊・第十一班第一号待機室】

レラージュ
「まさかとは思いましたが、出撃の二日前まで演習するとは……操縦士が疲労で倒れますよ……」

ロノウェ
「倒れた奴、いるのか？」

レラージュ
「最優先で休ませているので、今のところいませんが。これから先もこの状態が続くならわかりませんね」

ロノウェ
「うーん……一度実戦経験したら、もっとペース落とすと思うんだがなあ……」

レラージュ
「明日の演習、うちは本当に〝椅子〟だけやっていればいいんですか？」

ロノウェ
「ああ。あと、大佐の護衛」

レラージュ
「……今回、『連合』役はいくら撃たれても退場アウトしないんですよね？」

ロノウェ
「ああ。エリゴールはそう言ってたな」

レラージュ
「じゃあ、『帝国』役は？」

ロノウェ
「……誰も訊いてなかったな……」

レラージュ
「……たぶん、『帝国』役も今回だけは退場アウトにならないと思います。そのかわり、被弾数をチェックするんじゃないでしょうか」

ロノウェ
「そう言われてみれば、今回は何をもって演習終了とするんだろうな？」

レラージュ
「さあ……大佐が満足するまででしょうか……」

ロノウェ
「まさか、ほんとに三班と十二班が戦闘不能になるまでじゃねえだろうな？」

レラージュ
「それならそれでいいですね」

ロノウェ
「いや、よかねえだろ」

レラージュ
「だって、どちらも留守番じゃないですか」

ロノウェ
「エリゴールみてえなこと言ってやがる……」

レラージュ
「……元四班長は、元ウェーバー大佐隊でもしっかり仕切っていましたか」

ロノウェ
「ああ。相変わらず恐ろしいまでの仕切り無双だった。あ、それとその〝元ウェーバー大佐隊〟。うちの〝親衛隊〟と合わせて、今日から名称変更になったぜ」

レラージュ
「何になったんですか？」

ロノウェ
「いや、ほんとに単純なネーミングなんだがな。……うちは護衛艦乗ってるから〝護衛隊〟、元ウェーバー大佐隊は砲撃艦乗ってるから〝砲撃隊〟だとさ」

レラージュ
「本当に単純ですね……」

ロノウェ
「でもまあ、わかりやすいっちゃわかりやすい。そういやレラージュ。おまえ、エリゴールが大佐から〝飴ちゃん〟もらってたの知ってたか？」

レラージュ
「飴ちゃん？　何ですか、それ」

ロノウェ
「やっぱりおまえも知らないか。いや、俺も今日初めて知ったんだがな。大佐は飴を持ち歩いてて、時々エリゴールにもくれてたそうだ。たぶん、今でももらってるんだろうが、〝砲撃隊〟がいいアイデアを出したりすると、エリゴールはそれをご褒美としてくれてやっていた。さっきの〝護衛隊〟・〝砲撃隊〟のネーミングした奴も、それで一個もらってた」

レラージュ
「元四班長はそんな方法で〝砲撃隊〟を手なずけているんですか？」

ロノウェ
「ああ、見事にな。でも、さりげなく一班長は立ててたな。俺らはカード持って歩かされたが、一班長にはさせなかった」

レラージュ
「カード？」

ロノウェ
「写真用のプリンタ用紙に班番書いただけの紙きれだ。それ持って明日の打ち合わせというかエリゴールの作戦説明聞かされた。また今度使うからって、帰るときに回収されちまったけどな」

レラージュ
「……元四班長は〝砲撃隊〟にいるほうが楽しいんでしょうか……」

ロノウェ
「いや、楽しいとか楽しくないとかじゃなくて、エリゴールはあっちの底上げに行っただけだから！」

レラージュ
「でも、班長会議に出た班長も楽しそうです……」

ロノウェ
「なら、おまえも今度出てみるか？　エリゴール以外にも一班長の副長は出てたぞ」

レラージュ
「一班長の副長だから特別にじゃないんですか？」

ロノウェ
「それもあるかもしれねえが、それを言ったら、エリゴールは何なんだってことになるからな。〝砲撃隊〟はおまえにも来てもらいたかったみたいだぞ。エリゴールは〝砲撃隊〟にはまだ早すぎるなんてことを言ってたが」

レラージュ
「……意味がわかりません」

ロノウェ
「俺にもわからねえが、まあ、気の良さそうな奴らではあったな」

レラージュ
「……そうですか。なら、そのうち出てみます。今はまだ早いようですから」