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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

87【合流編06】全班長会議終了後(十二班の場合)

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【パラディン大佐隊・第十二班第一号待機室】

ザボエス
「ヴァッサゴ……まだ落ちこんでたのか」

ヴァッサゴ
「これが落ちこまずにいられるか……何で俺が〝悪の黒幕〟なんだよ……」

ザボエス
「でも、元ウェーバー大佐隊……おっと〝砲撃隊〟は納得してたみてえだぜ」

ヴァッサゴ
「どうして納得するんだ……ん? 〝砲撃隊〟?」

ザボエス
「今日の会議で決まった。これからは〝元ウェーバー大佐隊〟は砲撃艦乗ってるから〝砲撃隊〟、俺らは護衛艦乗ってるから〝護衛隊〟だそうだ」

ヴァッサゴ
「いったい誰が決めたんだ?」

ザボエス
「発案したのは〝砲撃隊〟の班長の一人だが、決定したのはエリゴールだな。エリゴールが気に入って〝飴ちゃん〟一個投げ渡してたから」

ヴァッサゴ
「飴ちゃん?」

ザボエス
「やっぱりおまえも知らなかったか。俺らも〝砲撃隊〟から聞いて初めて知った。実は大佐は飴を持ち歩いてて、エリゴールにも時々お裾分けしてたそうだ。エリゴールはそれを舐めずに溜めこんでて、今〝砲撃隊〟を調教するのに使ってるらしい」

ヴァッサゴ
「調教?」

ザボエス
「今日の会議では、いいネーミングやアイデアを出した班長にやってた。あ、簡単な事務仕事した一班長の副長にも、手間賃だって言って〝飴ちゃん〟一個やってたな」

ヴァッサゴ
「え、副長まで班長会議に出てたのか?」

ザボエス
「ああ、あれはもう副長っていうより、副官みてえな感じだったな。班長を支えてるってとこは十一班のあれと同じだが、それ以外はまるで違う。エリゴールはあの副長をずいぶん気に入ってるようだった」

ヴァッサゴ
「レラージュよりもか?」

ザボエス
「そうだな。レラージュとよりは楽しげに話してたな」

ヴァッサゴ
「一班長の副長って、俺らと同年代か?」

ザボエス
「ああ。だから余計話しやすいんじゃねえか? とにかくもう〝砲撃隊〟はエリゴールにすっかり仕切られてた。向こうもエリゴールに反発どころか、一班長より頼りにしてるみてえだったぜ」

ヴァッサゴ
「相変わらず、仕切り能力すごいな。今度は脅しなしでだろ?」

ザボエス
「たぶんな。これから先はどうするかわからんが」

ヴァッサゴ
「こええ……個人的に三班が心配だ……」

ザボエス
「その三班と、明日は仲よく『連合』だ」

ヴァッサゴ
「へ?」

ザボエス
「明日こそ、うちの軍艦ふねは戦闘不能にさせられるかもしれねえな」

ヴァッサゴ
「留守番だと思って、相変わらずエグいことを考える……」

ザボエス
「……あの〝飴ちゃん〟……俺らはどうしたらもらえるんだろうな……」

ヴァッサゴ
「欲しいのか?」

ザボエス
「あれは本物くさかった。エリゴールがわざわざあんな飴を買うとも思えねえし、大佐からもらったっていうほうが自然だろ」

ヴァッサゴ
「十一班にいる間には、俺らには一個も分けてくれなかったな」

ザボエス
「本人は今日、〝妬まれるから〟俺らには黙ってたって言ってたぜ」

ヴァッサゴ
「……どこまで本気だ」

ザボエス
「さあ。半分以上本気だったような気はするな。それでも〝護衛隊〟から追い出されたが」

ヴァッサゴ
「ああ、たった一言口を滑らせたばっかりに!」

ザボエス
「口を滑らせたってことは、そう思ってたってことだろ。でも、エリゴールはおまえのこと、〝根はいい奴だから適当なとこで勘弁してやれ〟って言ってたぞ。……どこまで本気かはわからねえがな」

ヴァッサゴ
「うう……俺はどうしたらいいんだ……」

ザボエス
「裏で大人しくしてろよ。〝悪の黒幕〟はそういうもんだ」
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