チャラ男は愛されたい

梅茶

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生徒会

俺とあの子どっちがいいのよ!?

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「……遥」


 ビクッ

 何故か少しの気まずさを感じて視線を合わせないようにしていたが、名前を呼ばれてしまったのでそろそろと顔をあげる。しかし、怒っているという予想と違い目に映る千歳は至って普通そうな顔で、逆にびっくりして固まってしまう。


「…生徒会長が、生徒会室に役員は全員集合だって…」
「生徒会長が…?うーんわかった~、教えてくれてありがとねちとせ」


 何を言われるのかと身構えていたら生徒会のことだったので少しほっとし、取り敢えずお礼を言って潤くんの方に向き直る。どうやらまだ茜くんと話していたようで、お互い気安そうに話しているのを見て少し嫉妬してしまう。
 …潤くん俺と話してる時より楽しそうに笑ってるなぁ…なんか小突きあったりしてるし…ちょっと寂しくなってキュッとする胸を無視して、茜くんと話が一段落ついたっぽいところで潤くんに話しかける。


「話してるのにごめんねじゅんくん、俺生徒会の用事が出来ちゃったから行ってくるね~」
「えっ、ま、まじか…!くっ、遥ともっと一緒に居たかったが、生徒会の仕事だったら仕方ねぇよな…」
「!あのっ……ぁ、っいや、お、俺ももっとじゅんくんと喋りたかったなぁ。とりま今日は一緒にご飯食べてくれてありがとね!めっちゃ楽しかった!じゃあね!」
「あぁ、またな」


 嬉しいことを言われてテンションが上がったが、なんだかさっきの茜くんと潤くんの楽しそうな会話を見てしまったあとだから明日のご飯を誘う勇気もしぼんでしまい、お礼だけ伝えて席を立つ。茜くんも潤くんや周りのイケメンにじゃあなと軽く挨拶して近づいてくる。

 …いやまぁ俺に近づいてるんじゃなくて行き先が一緒だからなのは分かるんだが…そうだよなみんな呼ばれてるんだから普通一緒に行く流れになっちゃうよな~!!茜くんもげっというような顔をしているし、多分俺も似たような顔をしていると思う。茜くん、千歳、俺の横並びで生徒会室に向かう途中も無言の千歳を挟んで軽く言い合いをしてしまった。






「失礼しまぁ~す」
「あっ、雅彦じゃん!!」
「あぁ、久遠たちか。まだ他のやつは来てないからそこのソファに座って待ってていいぞ。あと鬼十は先生をつけろ。」
 

 煌びやかな扉を開き生徒会室に足を踏み入れると、どうやら会長たちはまだ来てないようで鈴木先生だけが中にいた。ダッと鈴木先生に話しかけに行った茜くんを置いて千歳とふたりソファに座る。奇しくも昨日と同じ並びだ。その時、ずっと黙っていると思っていた千歳から話しかけられる。


「…もうご飯食べたの?」
「えっ、あ、うん…」
「そっか…残念…」


 …………え…???

 思っていなかった質問と返事に目が点となる。ご飯?残念…?ど、どういうこと?それは俺と一緒に食べたかったってこと??理解できなくて頭の中がハテナマークで溢れる。昨日の反応からしてもう茜くんにゾッコン?みたいな感じだし、なんか無視されたしで俺とはもう話してくれないかなとか思っていたが、俺のその考えがおかしかったのだろうか。

 い、嫌々でも!!そりゃ茜くんと仲いいから俺とは関わらない気なのかなとかちょっと自分も考えが飛躍してしまっていたのは否定出来ないけどさ!?普通友達の嫌いな人を嫌いになる必要は無いけど、友達になろうとかにはならないじゃん!!え、金持ちは違うのかな!?俺がおかしいのかな!?わ、わかんない。もうわかんないよ千歳さん……っ!!!

 大混乱の俺の頭にぽんと手を置き、「明日は一緒に食べよ」と言ってくる千歳に完全に固まってしまう。嬉しいはずなのに、素直になりきれない自分がそれって俺も茜くんと一緒に食べようってこと?なんて聞いてしまいそうになる。流石に茜くん本人もすぐそばにいるのに失礼すぎるかと口を噤むけど。


「…い、いいけどぉ…」


「なっ、千歳は明日も俺と食べるだろ!?こいつと一緒とか俺は嫌だぞ!!!」
「はァ~ッ!?俺も嫌ですけど!?!?」


 とか思ってたけど茜くんがそんなん気にするわけないよね!!というか俺だって嫌でしたけど??!大人な対応しただけなんですけど!?!?頭の片隅でここは落ち着くんだ俺と理性が宥めてくるが、瞬間湯沸かし器の如く火がついてしまった俺は止まることができず即座に言い返してしまう。

 なんだろうか、茜くんが俺につっかかって来るのも原因ではあるのだが…相性最悪だと自覚しているし気に入らないとも思っちゃっているからか、今までだったら流せていたこういった軽口にもつい負けん気が発動してしまう。

 ふん、昨日からちょ~っと話すようになっただけのくせに千歳とご飯を食べるのは俺だ~~???千歳は俺を誘ってんだから茜くんと一緒に食べるわけないよね!?

 先程まで千歳は茜くんと食べたいのかな、明日一緒に食べるとしたら茜くんグループも一緒なのかな、なんて考えていたことなどすっかり忘れて脳内でアップを始める。


「というか、ちとせは俺を誘ってきたんです~~!!茜くんとかおよびじゃないんです~~!!!」
「ぐっ、で、でも!俺と千歳はもう友達だから明日も一緒に食べるんだっ!!!」
「なっ、お、俺だって友達だもんっ!!!俺の方が先に友達だったし!!!」
「そんなん関係ないだろ!!俺の方が千歳と仲良しだ!!!」
「俺の方がちとせと仲良しだもん!!!」


 小学生レベルの言い合いはヒートアップしていき、埒が明かないと互いに察した俺たちは千歳の方に顔を向ける。


「「ちとせ/千歳は明日俺と食べたいよね(な)!!??」」


 はぁはぁ、と息切れしながら言い切り、ぽかんとした顔の千歳を茜くんと見つめる。 そして感じる後ろからの視線。

…ん??後ろから…??

冷静になった頭はその意味を正確に読み取り、勢いよく振り返る。これまたぽかんとした顔の鈴木先生がこちらを注目しているのがわかり、サァーと顔から血の気が引く。

まってまってまって俺今茜くんと何言い合ってた…?なんか高校生にもなってガキの喧嘩みたいな低レベルの言い合いしてなかった??しかも結構恥ずかしいことを大声で………

 血の気の引いていた顔が次はじわじわと赤くなっていくのを感じる。え、だもんとか俺の方がなかよしとか言ったのおれ?????正気?????いや正気じゃないね。

 千歳に好き勝手言ってしまった恥ずかしさも相まって千歳の顔を見ていられなくなり、真っ赤になって目が潤んでしまいそうな顔をバッと生徒会室の扉の方に向ける。そして目が合う生徒会の皆様。いつから来ていたのか面白そうに笑うその顔に俺は今度こそ顔から耳までボンッと真っ赤に染ってしまった。


 …ア"ァァーーッッ!!!!!!!(恥死)
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