チャラ男は愛されたい

梅茶

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生徒会

ハワ…

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*ちょっと無理やり襲われそうになるシーンがあります。ご注意ください。

*****************



なんと詳しく聞いたところ、俺の親衛隊は確かに存在しているらしい。

親衛隊の条件として人数が15人以上、親衛隊長と副隊長がおり、申請書を風紀委員と生徒会に受理されることで成立となるそうだ。…本人の意思とは関係なく。

まあしかし、15人以上集まるということはそれだけ親衛対象が端麗な容姿ということだし、普通は結成直後に挨拶に行き、親衛隊の在り方やルールを決めたりするらしい。場合によっては、その挨拶の場で要らないと断ることも出来るそうだが……親衛対象は将来人の上に立つ立場の人が多いので、断ると親衛隊すらまとめられないのかと侮られることになるとか。怖い世界である。
なんとなく美緒先輩たちの親衛隊嫌いの理由が少しだけだが分かってきた気が、これはやっぱり周りの環境とかに原因があるんじゃないか?この学園変態とか多いし…金持ちの世界闇が深すぎるな。

しかし、親衛隊については分かった、分かったが…挨拶来て貰ってないんだが…??もしかして親衛隊に嫌われてる?いやそんなわけないよな。じゃあなんだ…?チャラ男の親衛隊はやっぱりチャラいやつの集まりだから挨拶なんか来ないってか?解散させるぞ。


「…挨拶は任意とかですかぁ?」
「いや…親衛隊は護衛のためだと銘打っているが、実態はなんとかしてお近付きになりたいヤツらの集まりだからな。お茶会だったり、何かしらの要求のために挨拶には来るはずだが…」
「それにあの人たちなら怠けて来ない、なんてことは万に一つもありえないだろうし」
「えぇ…?」


本当にわかんない。というか、さっきからなんで俺の親衛隊はそんなに信頼されてるの?一体誰がやってるんだよ。本来なら親衛隊からメンバーの資料なんかも渡されるらしいが、それも分からないんじゃこっちから会いに行けないし…

俺のこと好きなんじゃないの??なんでそっちから関わり断っちゃってんだよ。不思議に思いつつう~んと頭を傾げてみても何も思いつかないので、もうこの件については諦めることにする。恐らく卒業するまでには会えるだろう…多分だけど…


「う~ん…まぁいっかぁ…?」
「まぁ、久遠が気にしてないなら別にいいんじゃないか?それに、アイツらも悪い奴らでは無いが…積極的に合わせたい者でもないしな」
「あぁ、そうだね。悪い人ではないんだけど…久遠くんには悪影響かもね。」
「はぁ……悪影響…???」
「ふむ、しかし今学園では暴行事件やごうか…まあ色々問題が起こっているからな。親衛隊がきちんと機能してあるかは気になるな」
「確かに…久遠くん、夜は外出を控えてなるべく放課後も寄り道しないようにね。それに知らない人について行っちゃいけないよ。できるかな?」
「あれぇ、俺の事幼稚園児だと思ってますぅ…?」


悪影響とは。なんだか、琉生くんにも今日のお昼に言われたな…あまりにも皆に子供扱いをされている気がして、少しむくれる。いや確かに先程子供のように泣き喚いていたのは俺ですが…!
これでも男の子なのだ。憧れの風紀委員長様や先輩にそう言われるのは少し不本意というか…普通に恥ずかしい。不満そうにそう思っていたのが顔に出たのか、真剣な顔をした委員長に顎クイされ顔を覗き込まれる……顎クイ????


「しかし久遠はこんなに可愛いんだ。心配してしまうのも当たり前だろう?」
「!!??」


フッと笑いかけられながらそう言われ、あまりの色気に顔がボンッと赤くなる。え?俺ってもしかして女の子だった???そう勘違いしてしまうぐらいに甘い声色に固まってしまっていると、後ろからするりと腕が伸びてきて、抱きしめられる。も、元晴先輩!??ビクッと大袈裟に跳ねると、耳元でクスッと笑われそれにも反応してしまう。


「あぁほら、これぐらいで真っ赤になって…久遠くんは食べちゃいたいぐらい可愛いね?」
「~~ッ!!??よっ、用事を思い出しましたぁ~!!!」


ダメだろこれ!!!

2人とも少しにやけているのでからかわれていることは分かるのだが、いかんせん童貞には刺激が強すぎる。なんだかこのままじゃ新しい扉を開いてしまう気がして急いで立ち上がり、ペコッと頭を下げ風紀室から飛び出す。後ろから逃げられちゃったなんて聞こえるんだからたまったものではない。さ、流石生徒会と並ぶだけある…風紀委員、癖が強かった…



校舎からでて寮に続く道を歩くが、未だに顔が赤い気がする。うぅ、色気がやばかった…最近薄々感じていたが、やっぱり俺って子供っぽいのかな…?まだ中学生の時の方が大人びてた気がする。

そんな考え事をしながら歩いていたのがいけなかったのか、前から歩いていた人が急にこちらにふらついたのでドンッと肩がぶつかってしまう。うわっと思ったが俺も前を見ていなかったからなと咄嗟に謝る。


「わっ、すみませ…」
「うわっ、痛ぇ~~~!!!」
「エッ」


大した衝撃もなかったはずなのに大袈裟に痛がりだしたその人に困惑する。もしかして肩に怪我してた???そういえばこの人、当たる直前にふらついてたし体調が悪いのかもしれない…!どうやら上級生の3人グループで、端にいた人にぶつかってしまったらしく焦っていたら、残り2人が顔を見合せてニヤニヤしだした。


「うわ、ケンちゃん可哀想~」
「これ骨折れたんじゃね?いしゃりょーせーきゅー?とかしなくちゃじゃね?」
「あー肩痛てー、これ折れたわー。君どう責任とってくれんの?」
「あ、あ~…」


矢継ぎ早にそう言われ、ようやくこれが相手の体調不良なんかではなく、かの有名な当たり屋だというものだと思いつく。嘘だろ…ここ金持ち学校じゃないの???そんなチンピラみたいな…よく見れば見た目もだいぶチャラいし、不良っぽい。まぁ俺も人のこと言えないが…

俺も前を見ていなかったので何も言えないが、言っても道の端の方を歩いていたので今考えればわざわざ当たりに来たとしか思えない。俺金持ちだと間違われたのか?金とか持ってないんだけど…
どうすればいいか分からず立ち尽くしていれば、相手が俺を囲うように左右に移動して肩に手をかけてくる。それでガタイのいい年上に囚われてしまったことに気づき、逃げられないじゃんと固まる。


「まあ?俺らにも悪いところはあったしさ、お前が俺らにお詫びするってんなら考えてやるって」
「お、お詫びですかぁ…?」
「そうそう!詳しい話はあっちでするからさ、取り敢えず移動しようよ、ね?」
「い、いやでもぉ」
「えっ、まさか断らねぇよな?こっちは1人骨折れてんだからさ、勿論責任とってくれるだろ?なァ!?」
「ひぇ……」


骨折れてんだったらはよ病院行けや~~~!!!!詳しい話はあっちでと指さされた方は街道から外れた森の中で、人目につかないところに連れ込まれようとしているのは分かる。ふと、さっき風紀委員室で風紀委員長が言っていたことを思い出す。確か学園で暴行事件が増えているとか…?そこまで考え顔が真っ青になる。もしかしてこれは…ストレス発散に集団リンチにされるやつじゃない???

もうそれしか考えられなくてプルプル震えていると、抵抗の意思なしと思ったのか背中を押され、森の方へ歩かされる。大体なんでこんなところに森があるんだよ!!!金の無駄遣いでしょうが!!!!連れられたところは本当に周りに木しかなくて、結構歩いたので大声を出しても気づいてもらえるかどうか、と言ったところだ。
エッ、い、いよいよ不味いんでは…?痛いのはやだよぅ!!


「へへ、そんな緊張しなくても優しくしてやるからよ」
「無理やりに優しくも何も無いんじゃないでしょうかぁ…!」
「え~?でも抵抗の1つもしないし君も乗り気だったんでしょ?」
「いいえ…??」
「ハッ股緩そうだもんなァ?期待通りいっぱい遊んでやるからな」
「…ッ!」


なんだか上手く噛み砕けない言葉を言われ頭にはてなが浮かんでいたが、伸ばされる腕にギュッと目を閉じる。あぁ…な、殴られる…!!しかし予想に反して衝撃は来ず、その腕は俺の胸元に持ってこられ、シャツのボタンを一つ一つ外していく…


………ん????


違う手が俺の頬を撫でたり、股間にまで伸びているのを見て、ようやく悟る。あっ、もしかしてこれそういうやつ????そう思いついたらもうそれしか考えられなくてさっきとは違う意味でサァーと顔の血が引く。ま、待って待って待ってそれは覚悟できてなかったかもぉ!!


「エッなになに、待ってッ…!」
「はっ今更抵抗かよ?淫乱ちゃんは演技がお上手だなぁ?」
「や、やめ…」
「うわっ、肌スベスベ~、はは、いっぱい触ってやろーな?ほら抵抗すんなよ」
「っ、いた…!」
「道歩いてる時も顔真っ赤にして誘ってきやがってよォ?誰彼構わず咥えこまねぇように俺らが躾てやらねぇとな?」
「ひっ、いやっ!誰か、んむっ…!」


今日怒鳴る君に押し倒された時とは全く違う、本当の強姦に腰が抜けそうになる。上半身を撫で回していた手は俺の胸元の飾りを弄りだし、下半身にまで伸びた手はカチャカチャとベルトを外そうとする。それに手を伸ばして抵抗すれば、伸ばした手をそのまま捕まれ地面に押し倒され、取られたベルトで頭上にまとめあげられる。

いよいよ抵抗が出来なくなったんだと気づき、回らない頭のまま助けを呼ばなくてはと声を出すと誰かが口に手を突っ込んでくる。誰も助けになんて来ねぇよとゲラゲラ笑う男たちに見下ろされ、恐怖に涙が出る。
この学園は閉鎖空間のため男同士でも致すことは聞いてはいたが、どこか遠いものだと思ってしまっていた。それが自分の身に起きているのだと今更ながらに気づいた。



ついに下着にまで手をかけられ諦めに目をつぶったとき、後ろの茂みがガサッと音を立てた。それはこの男たちが止まる理由になったようで、だれだ!と叫びそちらを注目するそいつらに、気持ちの悪い手から少しでも解放されたと安堵する。

しかし一体なんだ?と俺も泣きながらそちらを見ると、髪を肩より下まで伸ばし、前髪で目元を隠した猫背で長身の男性が立っていた。その男性は固まるようにそこからうごかず、なんというか…怒ってる…?


「なんだァてめぇ?」
「…よ…」
「ビビって声もでてねぇじゃん!ほら陰キャくん早く帰りな~?」
「シャシャってんじゃねえよ!!」
「…………ない…」
「アァ!?何言ってっか聞こえねぇよ!」


こいつらが良いところを邪魔されたと苛立ちながら怒鳴りつけるが、その人はそこに立ち続け何やら喋っている。俺もその人が敵か味方か分からず泣いているまま息を潜めていたら…前髪で見えないはずだが、なぜか目が合った気がした。すると、その人は1歩こちらに踏み出してきて…


「久遠様に何してんだよって言ってんだよこの社会のゴミクズ共が!!!!」
「うぶッ…!」


一一俺を囲っていた1人を、暴言とともに蹴り飛ばした。え、と俺とこいつらが固まってしまっても、その男は止まらない。


「至宝で至高な唯一無二の久遠様を泣かせるとか万死に値するんだわ死んで詫びろボケェ!!!!オラッ!!!お前らが触れていいお方じゃねぇんだよ屑が!!!!」
「ひっ、やめ」
「死んで詫びろっつってんのが聞こえねぇのかうじ虫が!!!短小粗チンどもにはこんなもん要らねぇよなァ??!」
「っ!?ウグぅッ…!!!」
「オラッ!!オラッ!!!」
「ひぃっ、ごめ…ッなさ、ガハッ…!!」


そこからはあまりにも一方的な虐殺劇だった。いや死んではいないが…どうやら向こうは俺のことを知っているようで、今の状況から助けてくれたらしいことだけは分かる。助かった、そう自覚するとまた震えと涙が止まらなくなる。
危ない危ないと皆に聞いていても、どこかで自分は襲われないなんて根拠もなく思っていた。もしあの人が来てくれなかったら、なんて最悪の未来を想像してこの学園が少し怖くなる。

そして、そうやって俺が震えていたからかあの人の暴行が更に過激になっていく…1人は泣き続け、その他は3人が1人に殴られ続けているというカオスな空間だが、そこにまた新しく人がやって来た。

ガサッと茂みが揺れる音に次はなんだとそちらを見れば、人形のように無表情で綺麗な顔をした男の子が、聖書のような本を持って立っている。その子はあちらの惨劇には目もくれず、ただ泣いている俺に気づくと震えるように近づいてきて、跪いた。…跪いた??


「あぁ久遠様、どうしてその貴きお身体から真珠の如し美しき雫を零していらっしゃるのでしょうか?無知で矮小な私めにどうかその憂いを背負わせてい………は?」


そう朗々と話すその人が何故か泣いて語り出したので、俺は泣くのも忘れて目を見開く。え…?なんか宗教の人…??何を言っているのかいまいち理解できなくて困っていたら、その人は漸く俺の…その、衣服の乱れや、今ボコボコに殴られる人たちを認識したらしい。…無視じゃなくてまじで気づいてなかったのか。


「く、久遠様…なぜそのような格好で…も、もしやあそこの不届き者に、その玉のような美しい体をまさぐられるような辱めを受けたのですか?あぁ、あぁ神よ!天から授かり賜うた至宝を守りきれなかったこの私をどうか罰してください!っ久遠様の痛みを思うだけで胸が裂けそうです。久遠様が望まれるならば、あの者達を殺して私も心の臓を捧げましょう…しかしその前に、その尊きお体を整える許可を頂けませんでしょうか…?」
「えっ…?あ、はい…?」
「あぁ!ありがとうございます!決して素肌にはお触れ致しませんので御安心を。少々失礼致します。」


どうやら俺が襲われかけたことに大変ショックを受けているらしい。その熱量に反射で返事をしてしまうと、俺に許可をとってから乱れていた服を直し、上からブレザーをかけてくれた。そしていまだ殴られている男たちをキッと睨み、聖書を持って立ち上がり、そのまま逃げようと這いつくばっいた男の上に馬乗りになると聖書で殴り付けた。………え???


「このっ!!お前たちのような下民はッ!久遠様のような尊きお方の視界に入ることする許されないのに、その上恥辱などと…到底許される行為ではない!!!死んで償いなさい!!」
「うがっ、がぁッ、ゆるじでぇ」
「久遠様に触れた汚ぇ手はどれだぶっ潰してやるよ!!オラァ!!」
「ひぃ…ひぃ…!」


もうここは強姦現場などではなく殺人現場になりかけている。死屍累々といった有様で、誰の体から出たのか地面に血が落ちて悲鳴が木霊するほどの大乱闘…いや一方的なのは乱闘とは言わないか…?とにかくこのままじゃ死人が出てしまいそうだ。

言動から既に俺の味方っぽい気はするので、取り敢えず俺がすることは殺人犯の誕生を止めることだろう。展開の速さに未だ回らない頭でそう考えつき、どうか届いて、そしてなんとかなって欲しいと言う気持ちで、震えながらも声をかける。


「あ、あの~…」


その声でぐりんッとこちらを勢いよく向く瞳孔の開いた顔に、味方かも分からなくなりもはや逃げ出したくなってきた。ゴクリと唾を飲み込み、乾いた口を開く。そう、取り敢えずは…


「取り敢えず…移動しませんかぁ…?」
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