チャラ男は愛されたい

梅茶

文字の大きさ
上 下
23 / 32
生徒会

穴があったら入りたい

しおりを挟む



場所は移り代わり、風紀員室に入ってすぐの右のソファの上で、風紀委員長にしがみつきながらギャン泣きしている男が1人。


「ぐすっ、お"れ、ほんとにっ、ヒッグ…しごとしに…っ…きただけでぇ…っ!」
「あぁ、とても立派だな」
「なのに"ぃ、き、きゅうに…っどなられてぇ"!…っ…みんな、にらんでぐる"し"ッ!!」
「怖がらせてしまってすまなかった」
「お、おれ、…っふ…ふうきも、…っ…せ、とかいもぉ、きらいぃ…っ!」
「……それは困ったな」
「…ぐす…ぅ…っ……ふっ、うぅぅぅ~…」
「よしよし、いい子だ久遠。辛かったのによく耐えたな」


 *****************


「……落ち着きました…ご迷惑おかけして本っっっ当にすみません…」
「いや、こちらが全面的に悪かった。すまなかったな久遠」
「うぅ謝らないでくださいぃぃ~!!」


もう思い出したくもなくてわっと真っ赤になった顔を覆う。恥ずかしすぎて穴があったら入りたい!!!あの後、泣き声を聞きつけた他の風紀委員まで取調室に入ってくるので更に俺は子供のようにわんわん泣いてしまい、手がつけられなくなったところで風紀委員長が来てくれたのだ。

唯一の知り合いであり風紀委員長に絶対的信頼を置いている俺は目に入った途端ギャンっとしがみつき、子供のように甘えてしまった訳だが…有り得なさすぎるだろ。高校生にもなって??ギャン泣きしながら上級生に甘えた??は~~もう生き恥すぎるかえりたい。

言い訳をさせて頂くなら、本当に昼からキャパオーバーだったのだ。親衛隊との不仲に千歳と距離ができたり、生徒会での心労とか…トドメに風紀でのあれで、完全に抑えていたものが溢れでてしまった。

ちなみに風紀委員の方たちは風紀副委員長にしこたま叱られ、俺は土下座というとんでもない謝罪を受けた。いや、そりゃ辛かったけど高校生のギャン泣きが許されるほどの対応をされた訳では無いので、こちらは申し訳ないの気持ちでいっぱいだ。俺のせいですまねぇ…。

ちなみに風紀副委員長の二階堂 元晴にかいどう もとはるさんはとても優しそうな美人さんだった。今も俺の隣でニコニコ笑いながら甲斐甲斐しくお世話をしてくれているのだが……怒ったらとてつもなく怖かった。普段温厚な人ほど怒らしちゃいけないって本当だったんだなぁ。


「あぁ、目元が少し赤くなって…可哀想に、今冷やすものを持ってくるからね」
「へっ?や、これぐらい大丈夫です~…」
「…僕がしてあげたいんだ。ダメかい?」
「うっ…そ、それなら?…ありがとうございます。」


彼はぽんと俺の頭に手を乗せてから手際よく冷えたタオルを用意し目元に当ててくれる。上級生にこんなことやらせる後輩って普通にダメだよな。誰かそれぐらい自分でやれって言ってくれよ…
しかし風紀の皆様は何故か見守る体勢というか仕事をしながらチラチラ見てくるだけで何も言わない。もうこういうものだと諦めたところで、本来の用事を思い出した。あっ、そういえば書類!!


「…あっ!あの、いいんちょう、これ、遅くなったけど書類です…」
「あぁ、あんなことがあったのにきちんと仕事が出来る久遠は偉いな。」
「いや、せ、生徒会の仕事なんでぇ…」
「それでも立派だよ。久遠君は凄いね。ご褒美に甘いお菓子でもどうだい?」
「やはり久遠は優秀だな。ほら、こっちのクッキーも美味いぞ」
「うっ、うぅぅ…」


両サイドからでろでろに甘やかされて顔が熱い。俺は幼児か??そう言ってしまいたいが子供のように泣き喚いた自覚はあるので何も言えない。口元にあーんとお菓子を持ってこられて仕方なく口を開けると、風紀の皆様方にも微笑ましそうに見られる。

やめて!俺のライフはもうゼロよ!!すっかり燃え尽きている俺を他所に、真剣モードになった2人は仕事の話を始める。しかしその間も頭を撫でる手と口元に持ってこられる手は止まらないのだからどうなってんだい。俺って高校生じゃなかったっけ…?


「今年も鬼ごっこか。まあ予定通りだな」
「風紀からは何人出せるかな?」
「食堂のこともあるし、今年は見回りを強化しなければいけないからな…」
「親衛隊もだけど…親衛隊持ちも困ったものだね。自分の親衛隊ぐらい統制して欲しいよ…」
「今に始まった話ではないだろう。しかしそれにしても最近は風紀の負担が大きすぎるな。学園もどこかピリついている。」
「このままだと間違いなく新歓でなにか起きるだろうね。…何人か特に注意してみておかないと行けない子もいるし、やっぱり人手がね…」
「…1年生には悪いが、やはり今回風紀の参加は見送るべきか。」


……これはもしかしなくても生徒会のことだろうなぁ…ほらぁ!あんなところで騒ぐからやっぱりヤバいことになってんじゃん!!生徒会が親衛隊を解散させようとしてるなんて知れ渡ったら暴動が起きるんじゃないか?と昼間の食堂の様子を思い出して身震いする。そして重ね重ね風紀の皆さんに罪悪感が募っていく。ごめんね。

ふと、俺に出来ることってなんだろうなぁと考える。いや、まずそれを考えてるための前提知識が無さすぎるか。この学園について、そして親衛隊についても俺は何も知らないし。せめて自分の親衛隊があれば統率とかその話したりとかできたんだろうけど…俺親衛隊持ってないし。


「…親衛隊かぁ……」
「あぁ、そういえば…久遠の親衛隊は随分と穏やかだな。」
「……え?」
「ふふ、そういえばそうだね。彼に申請された時は驚いたけど…上手く統率できているようで何よりだよ。」 
「???」
「久遠は親衛隊と上手くやれているか?」
「久遠君のところは確か癖が強い人多いからね。」

「え、ちょ、待ってください…!あのぉ、俺……親衛隊あるんですかぁ…?」


そう、先程から当たり前のように話される俺の親衛隊。しかし、そんなもの全く知らないんだが??そう問いかけると委員長と副委員長はキョトンとした後目を見合せ、首を傾げながらこちらに問いかけてくる。


「もしかして…知らなかったのか?」
「全っっ然知りませんでした…」


初耳なんだが???
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

運命を知っているオメガ

BL / 完結 24h.ポイント:667pt お気に入り:3,714

そのジンクス、無効につき

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:29

桃野くんは色恋なんて興味ない!

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:271

怜くん、ごめんね!親衛隊長も楽じゃないんだ!

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:1,852

いちゃらぶ話あつめました

BL / 完結 24h.ポイント:1,178pt お気に入り:300

初めての、そのあとは…

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:13

甘雨ふりをり

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:368

尻軽男は愛されたい

BL / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:193

処理中です...