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Sクラス
相性最悪
しおりを挟む「す、好き!?好きってのはそ、そんな軽々しく言うもんじゃないんだぞ!それに俺は男だ!からかうなよ!」
好きだとイケメンくんが告げた瞬間至る所から悲鳴が上がった。は?昨日のクソ失礼な見た目補正もないマリモ状態で好きになったって??衝撃が抜けきらず呆けながら悲鳴の方を見ればチワワみたいな男の子中心に皆が悲壮な顔をしている。
その中でも倒れそうなほど青くなっている子がいて他の子が支えていたが、もしかして親衛隊の子かな…?
視線を戻すと真っ赤になって照れている茜くんの手を掴み、イケメンくんが本気で好きなんだとまだイチャイチャしている。
…俺たちは一体何を見せられてるんだろうか。というかあの流れで昨日の茜くんが好きだと言うやつが現れるなんて俺への当てつけなのか?なんてバカげたことまで考えてしまう。
まあ茜くんの言葉で救われた人がいるというのは喜ばしいことなのかもしれないが…気に食わない。昨日は琉生くんに地味とか言ったくせに。
大体顔がいいっていうのもその人の個性だしステータスなんだから、別に顔だけ見て好きになっても好きは好きじゃないかと少し納得がいかなくてやさぐれていると、教室の扉が開いてホスト先生改め翔先生が入ってきて次は黄色い歓声が上がる。き、切り替えが早すぎる…
「チッうるせ~。お前らなに騒いでんだ、廊下まで聞こえてんぞ。さっさと席つけー」
「「「きゃ~~~!!!」」」
「む、睦月様が先生…!?」
「僕、Sクラスで良かったぁ~!!」
「あぁん今日も大人の色気が~!」
そうやって思い思いに叫びながら席に着いていく周りの生徒と同じように俺も千歳と琉生くんと別れて席に着く。しかし、1人だけ空気が読めてないやつが…さっきイケメンくんに迫られて真っ赤になっていた茜くんが大きい目をさらに大きくさせ翔先生に詰め寄っていた。
ただでさえ先ほどの告白でヘイトが集まっているのに無謀すぎないか???いや、別に告白とかは茜くんとせいじゃないけどさぁ…!!
「な、あ、あんた教師なのになんて格好してんだよ!!」
「ん?お前…もしかして、鬼十か?写真とはまただいぶ格好が違うなァ」
「うっ、昨日風紀委員長とか言うやつに怒られたから…美緒はいいって言ってくれたのに…」
なるほど、あの後風紀委員長に怒られてたのか。縮こまって悔しそうに告げる茜くんをみて納得する。というか茜くんに言う事聞かせられるって凄いな…昨日のあの感じだったら反抗しそうだかならなぁ…。
と思ったところでピタッと固まってしまう。み、美緒…?それはもしかして生徒会副会長様のことだろうか。周りもそう思ったようで教室中がざわざわとやかましくなる。そりゃ…まだこの学校に来て日が浅い俺でもわかるが、流石に生徒会のメンバーを呼び捨てって、親衛隊的にまずいんじゃないのか…?その証拠に…
「は?い、今あいつ…美緒様のこと呼び捨てにした?」
「顔はまあまあだけど…なにあの子」
「あいつ特待生?じゃあ一般人じゃん。なに美緒様のこと呼び捨てにしてんの?」
「さっきも紫陽花の君に馴れ馴れしく話しかけてたよね?」
「紫陽花の君が睡蓮の君と話してたのに」
「怜様…うぅ…」
「なにあいつなにあいつ怜様とどういう関係なの!?」
ざわざわとざわめきがどんどん大きくなっていく。これイケメンくんが告白したのもダメージ入ってるな…というか俺はそれよりも副会長はあのダサい格好でもいいと言ったというところに詰まってしまう。さ、流石にイケメンくんみたいに茜くんに落ちたとか、ないよな?でも呼び捨てを許してるし…風紀委員長も、茜くんの素顔を見てどう思ったんだろうか。なんだかまた思考が暗くなりそうなところで先生の声が聞こえる。
「はは、そりゃまぁ、あの二ノ宮様がダサいカツラなんて見逃すわけないよな。それにしても…写真じゃハズレだと思ったが、なかなか可愛い顔してるじゃねーか」
そう言って顎に手を当てて怪しく笑う翔先生は壮絶な色気をまとっていた。そ、そういえば昨日千歳に翔先生は生徒にも手を出してるとか出してないとか聞いた気が…あ、あわわわわ。大人の色気にそういったものを想像してしまい見てるこちらが赤くなってきた。というか俺の隣の子なんか鼻血を吹いて倒れてしまったし、教室はもう死屍累々という有様である。
というかこれは…周りの空気を察して茜くんが副会長を呼び捨てにしたことを誤魔化そうとしているんだろうか?サッと周りに視線を走らせる先生を見てやっぱり見た目はあれだが先生なんだなとキュンとする。
けど言われた当人は気づいてなさそうというか…顔を赤く染めてはいるが、あれは怒ってる…?
「っ!俺は男だ!どいつもこいつも可愛いとかバカにしやがって…!それに、俺は外見で人を判断するやつは大嫌いだ!!なりたくてこんな姿になったんじゃねぇ!!」
そのセリフに、ドクンと胸が鳴り、思わず過去に言われたことを思い出してしまう。
『遥くんって絶対遊びまくってるでしょ~?私も混ぜてよ♡』
『遥くん今更照れてる?ホテルとか何回も行ったことあるんじゃないのぉ?』
『なんか遥くんって案外奥手なんだよなぁ、あの見た目で童貞だったらウケる』
『あんなチャラいんだしないだろ笑』
『あいつ絶対先輩の彼女に手ぇ出してるよな。人の女に色目使いやがって』
『あの格好絶対誘ってるだろ。金払えばやらせてくれんじゃね?笑』
分かってる、俺が言われてきたことと茜くんが言われてきたことはおそらく違う。だって俺は…なりたくてなった訳では無いけど、自分から選んだことだから。最初はこんなのは自分じゃないんだって、本当は違うんだってずっと思っていたけど、俺が疲れて悲しそうにする度にごめんねと謝りながら泣いしまう父を思い出す。
周りを変えるなんて俺にはできなかったし、父を泣かせたくなくて…俺は諦めてしまった。自分自身がこの格好を受け入れられるようにこの姿の方がかっこいいとか、自分に似合う格好をしてるんだって言い聞かせて…まあそのせいで黒髪に1度戻した時に拒絶反応がすごくなってしまったが。
何も言い返せなくて諦めた俺と、カツラを被ったり先生に反抗してまで自分を貫く茜くんを比べてしまって頭のなかがグルグルする。さっきまで馬鹿だろって思ってたのにそれを否定するように彼の元に人が集まっていく。
茜くんの言葉に感じいったような反応をする先生やイケメンくん、彼らを中身で惹き付ける茜くん自身にもイライラするが、それ以上に醜い嫉妬をしてしまう自分に1番腹が立つ。茜くんといる自分は好きになれない。吐き気を堪えながら思う。
あぁ、俺……茜くんと相性最っっ悪だわ…
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