チャラ男は愛されたい

梅茶

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入学式編

風紀委員長ぱねぇ…!

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千歳に場所を教えてもらい急いで風紀委員室まで行く。たしか今年の特待生って俺含め3人だけだよな?他のクラスではまだ生徒会立候補枠の取り合いをしていたから最後では無いはず…!………最後だとしても入学したばっかだし怒られなかったらいいなぁ~~!!

そう思いながらも入学式での風紀委員長を思い出して顔を青くする。あれは絶対自分にも他人にも厳しいタイプだ。うわ嫌な汗かいてきた。俺叱られるの嫌いなんだよな…褒めて伸びるタイプです…!

行きたくなさすぎて重くなっていく足を何とか動かし最後の角を曲がる。そこには特待生試験の時に見かけた爽やかな男の子が1人ぽつんと立っていた。周りを見ても風紀委員長も、あと一人の特待生もいない。何とか最後にたどり着くことは防げたようだ。男の子もこちらに気づいたのか目が合ったのでニコッと笑って話しかける。


「よ、よかったぁ~俺最後かと思って焦っちゃったぁ!初めまして、でいいのかなぁ?久遠 遥くおん はるかだよぉ」
「ふふ、一度会ってはいるけど挨拶するのは初めてだから一応初めましてかな?僕は三枝 琉生みえだ るいだよ久遠くん。」
「あ、俺のことは遥でいいよぉ、俺も下の名前で呼んでいい?」
「じゃあお言葉に甘えて遥って呼ぶね。僕のことも好きに呼んでくれていいよ。」


や、優しい~~!!正直言った後に自分の事下の名前呼びでいいよって厚かましすぎね?って焦ったけどるいくんめっちゃ優しく流してくれた。そしてこのニコッと笑った綺麗な笑顔。琉生くんは凄い美形ってタイプでは無いが、整った顔立ちで柔和な雰囲気の男の子だ。落ち着いてるしほわほわしていて一緒にいて癒される…!
こんな素敵なこが一緒の特待生という事実に、なんだかこれからの学園生活を素敵に過ごせる予感がして嬉しくなってきた。その気持ちのまま琉生くんに笑いかける。


「えへへ、じゃあるいくんって呼ぶ~!改めてよろしくね!」
「ふふ、よろしくね遥」

「はぁ~可愛い…あの二人今すぐ生徒会に入れちゃダメですか?」
「…本人の意思を尊重すべきだ」
「…琉生は絶対入ってくれませんね…せめてあの金髪の子だけでも…」
「勝手にすればいいが風紀を乱すようなことだけは控えるように」


急にそんな話し声が後ろから聞こえてきて、思わず大袈裟に肩が跳ねビクッとなる。ちょっと恥ずかしくなって琉生くんの方を見るが、琉生くんはニコニコしたままなんなら大丈夫?なんて声をかけてくる。ははぁ琉生くん強すぎるな…

恐る恐る振り返ると、何となく声で察していたがそこには俺たちが待っていた風紀委員長様と、何故か生徒会副会長様が立っていた。な、何だこの組み合わせ…?というかこの空間の顔面偏差値高くない??美の暴力か???


「久しぶりですね、琉生」
「ええ、お久しぶりです美緒様。」
「様だなんて…学園では呼び捨てでも構わないと言っているでしょう」
「流石にそんな訳には…」
「ふふ、まあ別にいいですが。それより琉生、生徒会に入りませんか?」
「えっ」


なんか…会話の金持ち感がすごい…る、琉生くん特待生じゃなかったっけ!??というかこの学園って大体権力者の子供とかばっかなんだよな!?こ、こういう時って俺から挨拶しなくちゃいけないのか??それとも向こうが話すのを待つべき?
庶民的すぎて1人であわあわしていたら、なんと風紀委員長が話しかけてきた。


「君は…特待生の久遠遥だな?」
「そ、そうで~す…!」
「ふむ、一先ず入学おめでとう。優秀な外部生が内部生にもいい刺激となってくれることを期待している。」
「あ、ありがとうございまぁす…?」
「…だが、確か風紀委員の報告では今朝早速問題を起こしたと聞いたが…?」
「ぅぇっ!?そ、それは…あの、えへ、わざとじゃなくてぇ……ご、ごめんなさぃ…!」


そう言ってギロリとこちらに視線を向けてくる風紀委員長に体が震える。や、やっぱり今朝のって問題だよな!?くそぉこんな格好だし絶対風紀委員長にチャラいって思われた!いやチャラいキャラでいってるのは俺なんだけど…!でも俺誘惑なんかしてないし、あっちから迫ってきたし!…でもたしかに最後は意図的に腰抜けさせました…!!

地味に憧れていた風紀委員長に嫌われたかもというショックと今から怒られるという恐怖でプルプル震えながら、おそらく朝のその後の処理でご迷惑をおかけしただろうと思い謝る。もう最後の方なんて涙声である。ひぃ~と思いながら目をぎゅっとつぶって胸の前で手を握る。

あぁ、風紀委員長様に目をつけられたなんて、俺の特待生人生もこれで終わりだ。この学園辞めたらどこに行こうかな。お父さんガッカリさせちゃわないかな…いやむしろ家に帰ったら喜ぶか…
そんな想像をしていたら、急に頭をポンポンされ、頭上からくぐもった笑い声が聞こえたのでハッと顔を上げる。


「くく、冗談だ」
「……ぇ?」
「もちろん今朝のことは報告を受けている。新入生に無理矢理迫って返り討ちにあった上級生がいる、とな。」
「あ、で、でもなんかぁ、俺が最初にゆーわく?しちゃった…らしくてぇ…」
「君は特待生だからこの学園について詳しくなかったんだろう?…理事長がこのような醜聞を外に出ないよう情報統制しているというのもあるがな。それに報告通りならあの変態が勝手に盛っただけで、君のあの程度の言葉誘惑とは言わん。…まあ本当に誘惑してないのかは正直半信半疑だったが、君と会話をして君はそんなことをしないと判断した。」
「!!」
「また何か困ったことが起きたら、風紀に相談するように。」


う、う、嬉しい~~~~~ッ!!!!
な、何だこの人俺のツボを完璧に押さえてらっしゃる…!こんな格好をするようになってからもう俺は怪物級の承認欲求の塊になっているので、この、格好とかで判断せずきちんと話したうえで君を信じたなんてニュアンスで話されたらめっちゃ嬉しくなっちゃうよね!正直どこで判断してくれたのかは分からないが!

しかも、それをこんな自分にも他人にも厳しそうな風紀委員長が言うんだよ!?や、やばいドキドキしてきたんだが…!撫でられた頭を両手で押えてキラキラした目で風紀委員長を見てしまう。はぁぁというか風紀委員長かっこよすぎる…こんなん惚れない人いなくない??いや恋愛とかじゃなくてもう人として素晴らしすぎるというか。もう今日髪の毛洗わないでおこうかな。


「………」
「ふふ、新入生は可愛いですねぇ龍?」
「…久遠、風紀委員に興味無いか?」
「おや、抜け駆けですか?」
「フッ、優秀な生徒を勧誘して何が悪い」


う、嘘だろ…!?俺もしかしてあの風紀委員長様に勧誘されてる!?しかも幻聴じゃなければ優秀な生徒って言った!!!こんな男前で素晴らしい人の元で働けるなら働きたい……けど、風紀を正す委員なのに俺みたいなのが入ったら絶対迷惑かける…!多分俺、今更元の髪色とか格好に戻したら自信なくしすぎて学校通えない…メンタルよわよわでごめんなさい…


「め、めっちゃ興味あるんですけどぉ…!お、俺…こんな格好なんで…!」
「ふむ、こだわりがあるのか?」
「うぅ、元の格好が落ち着かなくてぇ…もしかしてこれ、校則違反ですかね…?」
「校則違反では無い、が…たしかに風紀委員に入るのは難しいな。そういう理由なら無理に勧誘するのはやめておこう。」
「それなら久遠くん、生徒会なんてどうですか?お菓子もありますよ。」
「一応、と、友達に誘われて立候補はしましたぁ~!入れるかはわかんないですけど…」
「まあ、本当ですか?それなら私が裏から少し動いて…」
「んんっ、美緒様。そういえばなにか御用があってきたのでは?それに…もう1人の特待生さんも随分遅いようですし…?」


は、入りたかったなぁ風紀委員…!いやでも正直この麗しい生徒会副会長がいる生徒会も、最初はチャラいしって思ったけど風紀委員長が何も言わないなら本当に校則違反じゃないんだよね!?ならちょっと入りたくなってきたかも…!!もちろん千歳がいることが前提だけどね!?

って、たしかに琉生くんの言う通りだ。風紀委員長はまだ分かるけど、なんで生徒会の副会長までいるんだろう?特待生の子もさすがに遅すぎるし…まさか遅刻…??いや、流石にないか~。だってここ一応名門校だし、そんなとこに入れる外部性が遅刻とかするわけ…


「あぁ、そうでした。実はもう1人の特待生の方が遅刻しているのですが、何故か風紀委員長と生徒会の者が直々に出迎え、校内を案内しろと理事長から通達がありまして…」
「しかしそれではお前たちへの案内が出来ないからな、どうせなら一緒に行動しようと考えた訳だが大丈夫だろうか?もし時間が厳しいならまた日時を改めるが。」
「俺は大丈夫です~」
「僕も大丈夫です」
「無理を言ってすみません。では早速校門まで出迎えて差し上げましょうか」


まさかの遅刻でびっくりしてしまった。しかもその遅刻した生徒を出迎えろって謎すぎるな。……ハッもしかして理事長は怒ってるんだろうか?!だって遅刻して急いで学校に来たら校門で風紀委員長と生徒会副会長が待機してるとか、俺なら絶対嫌だもん!!怖すぎるだろ普通に。

なんだか遅刻した人が不憫に思えてきた。案内中、2対1で説教されないように俺と琉生くんが着いててやるからな…!そう思いながら副会長についていき、いつ見てもドデカすぎる校門に辿り着く。あれ、でも門閉まってない…?ま、まさかこれも理事長の嫌がらせなのか…??


「…ふふ、久遠くん、実はこの門にはインターホンが付いていているんですよ」
「え、あっ、そ、そうですよねぇ~!じゃないと開けれませんもんねー!…あのぉ、顔に出ちゃってましたぁ?」
「ええ、それはもう」
「……えへへ」


は、恥ずかし~!!そりゃそうだよな考えたらわかるよなぁ!!思わず気持ち悪い笑いで誤魔化してしまったが、多分耳どころか顔が赤くなってしまっている気がする。気まず過ぎて門の方にふいっと視線を泳がせてしまう。

……ん?なんか、門の上に誰かいない…?さっきまでこちらを見てニコニコ笑っていた副会長も、俺の視線の先に気がついて驚いた顔をする。風紀委員長なんて顔が険しいなんてもんじゃない。そりゃそうだよこの門クソでかいから縦に6mぐらいあるよ!?落ちたら一大事だ。

俺と琉生くんも目を合わせてあたふたしてしまう。声掛けたいけどあんなところにいる人に不用意に声掛けて落ちちゃったら怖すぎるので何も言えないし!!風紀委員長は落ちても大丈夫なように門の下にスタンバイし、副会長はどこかに電話している。
門の人はやっとこちらに気づいたようだ。


「ん?おー!!なんだ人いるじゃん!お~~い!!」
「ヒッなんでそんな高いところで手ぇ振ってんの!?落ちちゃうってぇ!!」
「遥、お、落ち着いて」
「おいお前!今三葉が業者を呼んでいる。そこで少し待っているんだ」
「む、これぐらい降りれるっつーの!」


もう現場はカオスである。普通命綱もなしに門の上で手ぇ振れるか!?もう怖すぎて俺は琉生にしがみついて目をつぶっている。落ち着けないよー!!そして何をとち狂ったのか委員長に待っているように言われて自分で「む」なんて言う門の人。え、まさかまさか飛び降りたりしないよな…??思わず薄めに目を開けてちらっと見てしまう。

そして目に見えたのはちょうど門を猿のようにするする降りていく人の姿だった。き、器用~~……あまりの安定っぷりに思わずぽかんとしてしまう。そっか…登れたんだから降りれるの、か…?ほっとすると同時に琉生くんにしがみついていたことに気づき、慌てて離れる。


「あ、る、るいくんごめんねぇ~!びっくりしちゃって思わず…!」
「はは、僕もびっくりしちゃってたから気にしないで遥。」
「うぅありがとるいくん~…!」
「ふぅ、理事長が出迎えにいけと言った理由がわかった気がします…すみません、お2人を私が誘ったせいで怖がらせてしまいましたね。」
「え、ふ、副会長が謝らないでください~ちょっと驚いちゃっただけなんでぇ…!」
「はい、僕も少し驚いただけなので大丈夫です」
「ふふ、ありがとうございます。しかしこれは…一度理事長室に向かった方がいいですね…」


相変わらず琉生くん優しいなぁ~!とほわほわしていたら、もしものためにスマホを構えていた副会長も大丈夫だと判断したのかこちらに謝ってきた。いや、あんなん誰も予想できないでしょ…!!
そうやって話しているうちに、門の上にいた人も降りきったようである。風紀委員長が何故あんなところに登っていたのだと問い詰めていたので3人で近づいていく。


「だ~か~らぁ~!門が閉まってたんだからしょうがねぇだろ!!」
「いや、そもそも遅刻したお前が悪いだろう。それに、インターホンも見えるところにあったのにそれを探さずに門を登ろうとするなんて短絡的すぎる。大体落ちたらどうするつもりだったんだ?この高さでは大怪我では済まないと考えられなかったのか?特待生としての自覚がないとしか言いようがない。」
「な、なんだお前!こんな高さぐらいじゃ落ちたりしねーし!!それに難しいことばっか言って、俺をバカにしてるのか!?」
「はぁ、埒が明かないな。だいたいこの世に絶対なんてものは無い。門の上にいる時に強い風か吹くなりして転落する可能性も十分にあったのだ。この学園に入学したからには、そういった軽はずみな行動は控えるように。」
「うっ、その…たしかに…危険だったかもだけど…!でも、」


す、すげぇあの特待生…なんであの風紀委員長を前にしてあんなに反抗できるんだ???それに…格好がなんて言うかその俺が言うのもなんだがとてもユニークだ。マリモのようにモサモサの髪はどう見てもカツラだし、とても分厚い瓶底メガネ、制服はヨレヨレで…なんていうか…はっきりいってダサい……なんで若いのにカツラしてるの…?
尚も続く言い争いを副会長が手をパンと叩いて終わらせる。


「はいはい、お2人とも少し落ち着いてください。龍も、今は琉生や久遠くんがいるんですからその話は後でお願いします。」
「…はぁ、失礼した。三枝も久遠もすまなかったな。」
「ん?おまえ誰だよ?」
「ふふ、初めまして。この学園の生徒会で副会長をさせて頂いています、三葉 美緒みつば みおと申します。(ニコ)」
「お前…なんでそんな変な笑い方するんだ?笑いたくないなら無理に笑わなくていいんだぞ!」
「……」
「クク、変な笑い方だそうだぞ、三葉」
「………また、面白い特待生くんが入りましたね」


風紀委員長に謝られてのでそれぞれ平気だと伝えていると、馴れ馴れしくマリモが副会長に話しかけてきた。それにしても初対面の相手に変な笑い方って……な、なんかこのマリモちょっと分かってたけどヤバいやつかもしれない…愛想笑いとかって知らないのかな?すると、マリモは次はこちらに標準を定めてきた。


「お前らは?」
「…俺は君とおんなじ特待生の久遠 遥くおん はるかだよぉ~」
「同じく特待生の三枝 琉生みえだ るいだよ。よろしくね」
「えっ、お前らも特待生なのか!?えーそんなチャラそうな見た目なのに…?それにもう1人はなんか地味だし…」


挨拶した後の返事で思いっきり笑顔が引き攣っちゃった気がする。まあ俺はこんな格好をしているので人からそういう風に見られる覚悟は出来てるよ!?でも琉生くんの素晴らしさが分からないなんてどうかしてる!横目で琉生くんを確認すると、少し顔に影が指すのが見える。
……お、俺こいつ嫌いだわ!デリカシーが無さすぎる!!よろしい戦争だの気分でマリモの前に立って腕を組む。


「え~?そういうマリモ君の方が特待生っぽくなけど~??」
「なんだと!?それに俺はマリモじゃねぇ!鬼十 茜きとう あかねだ!!」
「はぁ~?人に名乗らせといて自分は名乗らなかったのあかねくんじゃん!!礼儀がなってないんじゃな~い!?」
「はぁ!?それは…確かにゴメンだけど…お、お前だって変な喋り方だし、そんな格好で学校来てておかしいだろ!!」
「た、確かにチャラいけど…そ、そんな変なカツラ被ってるあかねくんに言われたくないんだけど~!?」
「う、うるさい馬鹿!!お前なんてそんなチャラい格好して女の子と遊びまくってるんだろ!?俺、お前嫌いだ!!」
「特待生だから馬鹿じゃないです~!俺だって初対面で人の容姿についてあれこれ言うやつ嫌いだよ!!」
「なんだとモガッ!!」
「なんだよンン!!」
「…少し落ち着け」
「よーしよし遥、僕気にしてないからね」


副会長とか琉生くんに失礼なこと言ってきたのが許せなくて言い返したら、段々ヒートアップしてしまって最終的に胸ぐらをつかみあっていた。ついに茜くんは風紀委員長に口を塞がれ、俺は琉生くんに口を塞がれ頭を撫でられる。ちなみに副会長は口元を抑え下を向いて震えていた。る、琉生くん…こいつにあんな失礼なこと言われたのに気にしてないなんて、いい子すぎる…!


「んふ、ふふ、ンンさて、本当はこのまま校内を案内したいところですがそうもいかなくなりましたね…この特待生さんを連れて理事長室で話を聞きたいので、本当に申し訳ないですが今回は案内を中止して先にお2人を寮まで案内しましょうか。門のことだけでなく、その服装についても話を伺いたいですからね。」
「そうだな。俺も理事長には少し聞きたいことがある。三枝、久遠、予定を大幅に変えてしまってすまない。校内の案内は後日必ず埋め合わせをしよう。今日はとりあえず寮長アホに頼んでお前たちが入る寮を案内してもらうが…2人はそれでも構わないか?」
「は~い大丈夫で~す!」
「僕もそれで大丈夫ですよ」


そんなこんなで案内は中止になってしまった。まあ確かにこれはしょうがない。ドタバタしてたからもう時間も時間だしね。だいたいあいつと一緒に案内受けたくないし!!そう思って琉生くんと一緒に了承し寮まで案内してもらう。ちなみに茜くんはムスッとしながら俺から1番離れたところにいる。たまにこっちを睨んでくるので俺も睨み返している。門から10分ほど歩いたところに寮はあった。遠ぃ…なんで学校に森エリアとか庭園がある訳…?


「あぁ、きちんと起きていましたね。2人とも、寮の前に立っているあの人が寮長です。もう話はつけてありますのであの人に案内してもらってくださいね。本当は私たちが案内できたらいいんですが…後でお詫びをさせてくださいね。」
「俺からも謝罪をさせてくれ。それと寮長あいつは適当なところがあるがきちんと話しているのでしっかりと教えてくれるはずだ。分からないことは積極的に質問するように。」
「はぁい。委員長も副会長も今日はありがとうございました~!」
「分かりました。お二人ともありがとうございました。」


そう言って2人とは別れ、寮長と合流する。例に漏れず美形な寮長は少し長い黒髪を後ろで結んでいて、とても背が高い人だった。そしてなんというか…チャラい。俺みたいな人工なチャラさとは違って本当にチャラそうな人だ。


「やぁやぁ、三葉くんと龍くんから話は聞いてるよ~。俺はこのS寮の寮長の如月 夏きさらぎ なつ、3年生だ。」
「初めまして~、特待生の久遠 遥くおん はるかです。よろしくお願いしま~す!」
「初めまして、同じく特待生の三枝 琉生みえだ るいです。今日はよろしくお願いします」
「はいよろしく~。ん~、とりま1階から案内してくかぁ」


そう言ってぐんぐん進んでいく寮長の後をついて行く。寮長が今日の食堂の献立を話している間に、今のうちしかないと思い、裾を少し引いてコソッと琉生くんに話しかける。


「ねぇねぇるいくん。」
「どうしたの?」
「俺はるいくんの落ち着いた雰囲気とか、にこって綺麗に笑う顔とか、誰にでも丁寧に話すところとか素敵だと思う!…あと、俺と仲良くしてくれてありがとう」
「えっそんな…ふふ、こちらこそありがとう遥」


驚いた顔をした後、少し頬を染めてはにかむように笑う琉生くんは本当に綺麗で、俺まで顔を赤くしてしまい、顔を見合せて笑ってしまった。
今日だけでとても得がたい出会いを沢山したように思う。最初は同性の恋愛のこととか親衛隊とか意味がわからないことがいっぱいで最悪だと思っていたけど、今はこの学園に来てよかったと心から思えた。

…まあ最悪の出会いもあったが。あぁ、嫌なことを思い出してしまった。取り敢えず今は寮長の案内に集中しよう…!



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