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喧嘩 ー輝 sideー

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 隠されてたことが悔しくて悲しくて。

ミキが泣いたのを見て言い過ぎたと思った。

でも、ミキは何も答えてくれないから謝る気にはなれなくて。

大泣きするミキを見ていつもなら慰めもするけど今回ばっかりは腹しか立たなかった。

子どものようにわんわん泣いて俺の不安はそっちのけで自分の意見ばかりを通そうと必死で。

こんな状態で話しても意味がないと思って突き放した。

部屋から出てすぐに椎名に電話をかける。

まだ学校にいると言ってたから学校に行った。

椎名は昇降口で待っていて。



「やぁ、帰ったんじゃなかったの?」


「……帰ったよ。お前が学校だって言うから戻ってきたんだろ」



本当に腹が立つ奴だ。

何食わぬ顔で待っていて俺が何を聞きに来たか分かってるくせに話さない。

コイツのこの態度が本当に嫌いだ。

こんな奴に感謝をした自分を殴りたいほどに。



「お前なら全部知ってるだろ?包み隠さず話せよ。俺、今、すごくイライラしてるから」


「そんなの見ればわかるよ。立ち話もなんだしボクとみのりんの教室に行こうか」



そう言われ大人しくついてく。

教室に着いて椎名の席に促される。



「ここに座って。前を向いて」



言われた通りにそこに座りミキの席を向く。

そこには何もなくて。

俺は椎名を睨み付ける。



「……お前、ふざけてんのか?何もな……!」


「そうだよ。何もないんだ。普通、何かしら置いておくと思うんだよね。教科書とか重いじゃん。でも、みのりんは置いてない。始めは置いてたんだよ?最近になって持って帰るようになった」



どうして……なんて聞くまでもなくて。



「嫌がらせされたのは一週間くらい前かな。最初は一、二通の手紙だった。中身は君が今日読んだ内容と同じだと思ってくれていいよ。それが日を増すごとに枚数が増えて行ったんだ。でも、怪我をするようなことはなかった。みのりんが必要最低限しか君といなかったからね。それでも、やっぱり、警戒はしてたみたいで持ち物を持ち帰るようになってボクがいないときは席から離れなかったよ。席を離れるときは鞄に荷物を入れて一緒に持って行ってた。だから、ボクは言ったんだよ?輝くんに話したらって」


「……それで?」



俺に話せって言われたんじゃないか!

あの椎名に!

なのになんで……っ!



「みのりんはね?輝に言ったら輝は犯人を捜すでしょ?そして見つけた犯人に同じことすると思う。でも、私は輝にそんなことしてほしくないし何よりそれを知った輝が私から離れるかも知れないのが一番嫌って言ってたよ。だから、害がない今は何も言わないんだって。害が出るようになったらまた考えるって言うからもうボクは何も言わなかったんだけど……まさか考える時間もなく君にバレるとはね。みのりんは運がないと思うよ」



あぁ、もう、本当……

腹が立つほど俺を頼らないんだから。

害が出てからじゃ遅いって気付けよ。

本当に頭良いのか疑問になるだろ。

でも、全部俺との関係を守るためで。

ミキはミキなりに一生懸命考えてたんだ。

きっとその結果が原因で俺がここまで怒るとは思わなかったんだろうな……

普通は気付くと思うけど。

そこら辺の常識はないんだよなー……

まぁ、確かに俺なら犯人にはミキが受けた倍以上の嫌がらせをするだろうけど。

そもそも、ミキに手を出したらただじゃおかないって言ってあったし。

それでもなおミキに手を出すんだから覚悟出来てるってことだろ?

でも、ミキがそれを嫌がるんなら仕方ないよな……



「おい、椎名。お前、ミキのためなら何でも手伝ってくれるよな?」


「はっ!?そりゃあ、みのりんのためなら出来ることは手伝ってあげるけど何でもじゃないよ」


「じゃあ、明日、俺が登校する前までに手紙の差出人全員探し出しといて」


「はぁっ!?何言ってんの!君!それ、遠回しに今すぐ探し出せって言ってる様なものだよ!?」


「まさにその通りだけど?お前の根性もかなり曲がってるっぽいからな。もう大体は分かってるだろ?」


「……君も本当にいい性格してるよね。どこが人気あるのか全くもって分からないよ」



そう言いながらも椎名はその役割を承諾した。

もう少し待てば出来ると言っていたから待つことにして校内を回る。

何となく自分の教室に行ったら俺の机で誰かが何かをしていて声をかける。



「なぁ、俺の机で何やってんの?」



ソイツはビクッと肩を震わせて慌てて俺の方を向く。



「さ、坂本……帰ったんじゃ……」


「あぁ、忘れ物取りに戻ってきたんだよ」



俺はそのまま自分の席に行く。



「あれ……ここにもないな……ん?こんなの入れてたっけ」



そう言って見覚えのない紙を取り出す。



「う、うわぁぁぁあっ!や、止めろ!見るな!」



俺は中身を読んでニヤリと笑うと手紙を返す。



「何?お前もみのりん親衛隊?……内村潔うちむらきよしくん?」



俺がそう言うとソイツは何も答えず慌てて飛び出していった。

丁度そこに椎名がやってきた。



「やっと見つけた……勝手に動き回らないでくれないかな。って言うか、今の彼、どうかしたの?真っ青だったよ?」


「さぁね。で?出来たんだろ?」


「まぁね。これだよ。それで?それが分かったところでどうするの?みのりんは逆襲したいんじゃないよ?」


「分かってるよ。ちょっといい思いさせてやるだけ。だから、ミキのことよろしくな」



椎名は意味が分からんと言う顔をしていたが頷いた。

俺は紙をポケットに入れて家に帰る。

部屋に戻るとまだミキがいて驚いた。

何でいるんだよと思いつつ口を開く。



「……自分の部屋に行けって言っただろ」


「わ、私!ちゃんと輝と話がしたくて!今度はちゃんと輝の話も聞くから!」



必死にミキに懇願される。

でも、俺は心を鬼にしてミキを追い出した。



「お前と話すことはもうない。お前の好きにすればいいだろ。俺も俺の好きなようにするから」



そう言ってドアを閉める。



「あ、輝!輝!開けてよ!お願い!」



何度も呼びかけられたが俺は返事をしなかった。


ごめん、美紀……

もう少しだけ待ってて――――
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