18 / 28
頭の痛い事情
しおりを挟む
僕の伴侶から探すことをお願いされたミャーサという子がこの街に現れた。名前は違うが、似顔絵にそっくりだ。間違いないだろう。僕は探す気なんて全くなかったんだけどねぇ。だって、ミャーサがこの大陸に連れてこられた経緯やその後の扱いを聞いて胸くそが悪かったんだ。伴侶とはいえ、当分の間タナートを僕の家に出入り禁止にしたほどだ。3・4年は来させるつもりはない。ミーアに会わせたくはないからねぇ。
「あの子の生活が安定するまではそっとしてあげたいよね」
商業ギルドを訪れたミャーサことミーアは、タナートたちからされた仕打ちにもめげずに、ここが何処なのかもわからないまま、それでも半年かけてこの街まで辿り着き、終の棲家を見つけたのだから。ここの島、特にひとり島は、人を選ぶと言われている。どんなに待っても、ひとり島が認めなければ、契約できないのだ。今日のあのどこぞの伯爵のように。そういう意味ではミーアはひとり島に気に入られた。島のみんなもミーアを受け入れるだろう。
ミーアのことを聞いたのは、ちょうど半年前。焦った様子のタナートから通信が入り、僕は急いで王宮に転移したんだ。そこで待っていたのは、怒り狂う皇帝カイゼスだった。
「何があったの?カイゼスの殺気がダダ漏れなんだけど」
僕が来たことを知った、この場にいる全員がほっとした顔をした。甥の怒りはそれ程までに凄まじかった。
「あ″あ″っ!」
「カイゼス。どうしたの?」
事の起こりは、ラスティナ王国が精霊王たちのご神託だと偽り、聖女召喚を強行したことだった。本来なら成功などするはずのないものだったのだが、我が皇帝陛下の番召喚と同日同時刻に重なるという神業的な一致で、聖女が召喚されてしまった。陛下のもとに来たのは箒だったけどね。ぷぷ。これはいつものこと。番の準備が整わないうちは、番の私物が召喚されてくるから、誰も疑問にも思わなかった。
だが、聖女のお披露目があると聞きつけた我々は、その聖女が陛下の番である可能性を否定できず、秘密裏に陛下と側近で確認のため、ラスティナ王国に転移した。この時にダムが少しでもミーアの情報を流してくれていたらと思わないでもないけど、鬼人族のベストオブ脳筋にそれを望んじゃあいけない。タナートは魔術以外はポンコツだし。幸い、違うと分かってすぐに戻ったのだが、ここで不測の事態が発生。陛下の妹君であり、我が姪のアリーシャが陛下の転移にくっついていたのだ。我々はそれに気付かず転移し、そして、アリーシャは行方不明となった。
そもそも、我ら亜種の済む大陸と人族の住む大陸では同じ世界にあれど全く違うんだ。人族は、我ら亜人の大陸には入れない。一部の特殊な亜人が連れてこない限りは。だが、我ら亜人は別だ。人族の大陸に紛れ込ませた多くの亜人が人族を監視しつつ住んでいる。その者たちにアリーシャの行方を追わせたが、見つけたのは、ミーアだった。そのミーアを罪人同様に無理矢理に我ら亜人の大陸に連れ去り放置したのだから、カイゼスの怒りは甘んじて受けるべきだね。
「だいたい、姿隠しを施したアリーシャが見える上に、聖女と同時期にラスティナ王国に現れた身元不明の女性ときたら、陛下の番を疑うと思うんだけど?」
ダム以外の全員が僕から視線を逸らせた。どうやら、ダムはそのつもりで見守りを頼んだつもりだったようだが、誰にも伝わっていなかったようだ。
「で、陛下の番かも」
「番だ!間違いない」
おっと。凄い食いつきだねぇ。
「軟禁されていた貴人牢に匂いがこびりついてた。こいつら、俺の番を軟禁しておいて、誰も様子を見に行かず、食事すら途中から与えられてなかったのも知らず、気付いたら3月の拘束期間を過ぎて、衛兵に釈放された後だったとぬかしやがった」
呆れた。何処の鬼畜の仕業だよ。
「弁護の余地なし。餓死してなくてよかったねぇ。陛下じゃなくても殺したくなる所業だよ。それにしてもさ、こんなに近くにいたのにカイゼスは気付かなかったの?」
「俺は地方に定期視察。3月半」
それは、・・ご愁傷様。
「タイミングが最悪だったね」
「受けたくもない接待を躱し続けて疲れて戻ってみれば、北棟からいい匂いがするじゃないか。行ってみたら、匂いはしても部屋はもぬけの殻。こいつらを問いただして発覚した。クソが。俺は今日限りで皇帝を退くからな!これは決定事項だ」
「そんな。次の皇帝は誰が就けば」
「考え直してください」
「うるせぇ!!!」
「仕方ないじゃない?自分たちの愚行の結果だし。次の皇帝にはアリーシャがなればいい。あの子の愚かな行動も原因のひとつだし。幼くても責任はとらせるべきだよ。君たちが補佐して導くんだね。これも罰のひとつだ。それから、カイゼスの番には関わらないこと。これ以上、追い詰めてカイゼスを拒絶されると困るでしょ?」
そして、それから半年。この街にカイゼスの番が現れるなんて思いもしなかった。僕は、タナートを含むお馬鹿な仲間たちには知らせず、番を探して必死に駆けずり回っているカイゼスに通信した。直ぐさまやって来たカイゼスは、僕に詰め寄ってきたけど、まだ会わせるわけにはいかない。
「今あの子に番だと告げても拒否されるけどいい?」
「・・・・・・」
いいわけないよね。
「君のお気に入りのあのひとり島を皇家名義から君名義にしてあげるから、普通に出会って普通に恋人になって、信用を勝ち取りなよ。あの子、隠してるけど、この世界の人種全てを警戒してるよ」
あいつらのせいでね。
「分かった。俺のひとり島から近いのか?」
「お隣さん。ばあやのひとり島に住んでる。カイゼスのひとり島は、ばあやが管理してたから、すぐに住めるよ」
都合よすぎだよね?
「!!!」
「この島の生活は分かるよね?あの子に教えてあげるといいよ」
コクコクと頷くカイゼスが暴走しないようにだけ見張ればいいかな。番から嫌われるようなことはしないだろうし。漸く番の居場所が分かって、嬉しそうな甥をサポートする日々が始まった。カイゼスよ。お願いだから、ストーカーになってくれるな。
「あの子の生活が安定するまではそっとしてあげたいよね」
商業ギルドを訪れたミャーサことミーアは、タナートたちからされた仕打ちにもめげずに、ここが何処なのかもわからないまま、それでも半年かけてこの街まで辿り着き、終の棲家を見つけたのだから。ここの島、特にひとり島は、人を選ぶと言われている。どんなに待っても、ひとり島が認めなければ、契約できないのだ。今日のあのどこぞの伯爵のように。そういう意味ではミーアはひとり島に気に入られた。島のみんなもミーアを受け入れるだろう。
ミーアのことを聞いたのは、ちょうど半年前。焦った様子のタナートから通信が入り、僕は急いで王宮に転移したんだ。そこで待っていたのは、怒り狂う皇帝カイゼスだった。
「何があったの?カイゼスの殺気がダダ漏れなんだけど」
僕が来たことを知った、この場にいる全員がほっとした顔をした。甥の怒りはそれ程までに凄まじかった。
「あ″あ″っ!」
「カイゼス。どうしたの?」
事の起こりは、ラスティナ王国が精霊王たちのご神託だと偽り、聖女召喚を強行したことだった。本来なら成功などするはずのないものだったのだが、我が皇帝陛下の番召喚と同日同時刻に重なるという神業的な一致で、聖女が召喚されてしまった。陛下のもとに来たのは箒だったけどね。ぷぷ。これはいつものこと。番の準備が整わないうちは、番の私物が召喚されてくるから、誰も疑問にも思わなかった。
だが、聖女のお披露目があると聞きつけた我々は、その聖女が陛下の番である可能性を否定できず、秘密裏に陛下と側近で確認のため、ラスティナ王国に転移した。この時にダムが少しでもミーアの情報を流してくれていたらと思わないでもないけど、鬼人族のベストオブ脳筋にそれを望んじゃあいけない。タナートは魔術以外はポンコツだし。幸い、違うと分かってすぐに戻ったのだが、ここで不測の事態が発生。陛下の妹君であり、我が姪のアリーシャが陛下の転移にくっついていたのだ。我々はそれに気付かず転移し、そして、アリーシャは行方不明となった。
そもそも、我ら亜種の済む大陸と人族の住む大陸では同じ世界にあれど全く違うんだ。人族は、我ら亜人の大陸には入れない。一部の特殊な亜人が連れてこない限りは。だが、我ら亜人は別だ。人族の大陸に紛れ込ませた多くの亜人が人族を監視しつつ住んでいる。その者たちにアリーシャの行方を追わせたが、見つけたのは、ミーアだった。そのミーアを罪人同様に無理矢理に我ら亜人の大陸に連れ去り放置したのだから、カイゼスの怒りは甘んじて受けるべきだね。
「だいたい、姿隠しを施したアリーシャが見える上に、聖女と同時期にラスティナ王国に現れた身元不明の女性ときたら、陛下の番を疑うと思うんだけど?」
ダム以外の全員が僕から視線を逸らせた。どうやら、ダムはそのつもりで見守りを頼んだつもりだったようだが、誰にも伝わっていなかったようだ。
「で、陛下の番かも」
「番だ!間違いない」
おっと。凄い食いつきだねぇ。
「軟禁されていた貴人牢に匂いがこびりついてた。こいつら、俺の番を軟禁しておいて、誰も様子を見に行かず、食事すら途中から与えられてなかったのも知らず、気付いたら3月の拘束期間を過ぎて、衛兵に釈放された後だったとぬかしやがった」
呆れた。何処の鬼畜の仕業だよ。
「弁護の余地なし。餓死してなくてよかったねぇ。陛下じゃなくても殺したくなる所業だよ。それにしてもさ、こんなに近くにいたのにカイゼスは気付かなかったの?」
「俺は地方に定期視察。3月半」
それは、・・ご愁傷様。
「タイミングが最悪だったね」
「受けたくもない接待を躱し続けて疲れて戻ってみれば、北棟からいい匂いがするじゃないか。行ってみたら、匂いはしても部屋はもぬけの殻。こいつらを問いただして発覚した。クソが。俺は今日限りで皇帝を退くからな!これは決定事項だ」
「そんな。次の皇帝は誰が就けば」
「考え直してください」
「うるせぇ!!!」
「仕方ないじゃない?自分たちの愚行の結果だし。次の皇帝にはアリーシャがなればいい。あの子の愚かな行動も原因のひとつだし。幼くても責任はとらせるべきだよ。君たちが補佐して導くんだね。これも罰のひとつだ。それから、カイゼスの番には関わらないこと。これ以上、追い詰めてカイゼスを拒絶されると困るでしょ?」
そして、それから半年。この街にカイゼスの番が現れるなんて思いもしなかった。僕は、タナートを含むお馬鹿な仲間たちには知らせず、番を探して必死に駆けずり回っているカイゼスに通信した。直ぐさまやって来たカイゼスは、僕に詰め寄ってきたけど、まだ会わせるわけにはいかない。
「今あの子に番だと告げても拒否されるけどいい?」
「・・・・・・」
いいわけないよね。
「君のお気に入りのあのひとり島を皇家名義から君名義にしてあげるから、普通に出会って普通に恋人になって、信用を勝ち取りなよ。あの子、隠してるけど、この世界の人種全てを警戒してるよ」
あいつらのせいでね。
「分かった。俺のひとり島から近いのか?」
「お隣さん。ばあやのひとり島に住んでる。カイゼスのひとり島は、ばあやが管理してたから、すぐに住めるよ」
都合よすぎだよね?
「!!!」
「この島の生活は分かるよね?あの子に教えてあげるといいよ」
コクコクと頷くカイゼスが暴走しないようにだけ見張ればいいかな。番から嫌われるようなことはしないだろうし。漸く番の居場所が分かって、嬉しそうな甥をサポートする日々が始まった。カイゼスよ。お願いだから、ストーカーになってくれるな。
92
あなたにおすすめの小説
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
猛獣のお世話係
しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」
父は頷き、王家からの手紙を寄越す。
国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。
条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。
猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。
猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など
「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」
「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」
婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み!
いつまでもモフっていたい。
動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。
もふもふはいいなぁ。
イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。
完全自己満、ハピエン、ご都合主義です!
甘々です。
同名キャラで色んな作品を書いています。
一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。
他サイトさんでも投稿してます。
平民に転落した元令嬢、拾ってくれた騎士がまさかの王族でした
タマ マコト
ファンタジー
没落した公爵令嬢アメリアは、婚約者の裏切りによって家も名も失い、雨の夜に倒れたところを一人の騎士カイルに救われる。
身分を隠し「ミリア」と名乗る彼女は、静かな村で小さな幸せを見つけ、少しずつ心を取り戻していく。
だが、優しくも謎めいたカイルには、王族にしか持ちえない気品と秘密があり――
それが、二人の運命を大きく動かす始まりとなるのであった。
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
カードガチャでリスタート‼︎〜パーティーを追放されたカード戦士は導き手となって最善ルートを突き進む〜
犬社護
ファンタジー
その日は、フィックス十五歳の誕生日だった。十五歳の誕生日を迎えると、誰もが女神から職業を授かるのだが、彼だけ何も貰えないまま、時間だけが過ぎていく。仲間に心情を打ち明け励まされたことで、何とかいつもの自分を取り戻し、皆で新たなダンジョンへ行ったものの、地下奥深くにて仲間達に裏切られ、おまけに追放処分となり、一人置き去りにされ、魔物達に殺されてしまう。
本来、物語はここで終幕となるのだが、女神がフィックスのエラーに気づいたことで、事態は急展開をみせる。女神の計らいで生き返ることに成功したフィックスは、彼女の気まぐれにより、職業【カード戦士】と固有スキル【カード化】、【カードガチャ】を授かったのだが……
《痛い上での針》カード
《うんち》カード
《お立ち台》カード
《砂塵》カード
《三百六十歩歩いて三百六十歩戻る》カード
カードガチャで引いたものは、あまりにも独創的なものばかりだった。
「俺のスキルだけ、何かおかしくないか‼︎」
職業を授かって以降、彼の人生は大きく激変していくこととなる。
《30話程で完結予定です》
【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。
まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」
ええよく言われますわ…。
でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。
この国では、13歳になると学校へ入学する。
そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。
☆この国での世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる