巻き込まれ召喚になった私はまったりのんびりスローライフを目指します!

紅子

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頭の痛い事情

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僕の伴侶タナートから探すことをお願いされたミャーサという子がこの街に現れた。名前は違うが、似顔絵にそっくりだ。間違いないだろう。僕は探す気なんて全くなかったんだけどねぇ。だって、ミャーサがこの大陸に連れてこられた経緯やその後の扱いを聞いて胸くそが悪かったんだ。伴侶とはいえ、当分の間タナートを僕の家に出入り禁止にしたほどだ。3・4年は来させるつもりはない。ミーアに会わせたくはないからねぇ。

「あの子の生活が安定するまではそっとしてあげたいよね」

商業ギルドを訪れたミャーサことミーアは、タナートたちからされた仕打ちにもめげずに、ここが何処なのかもわからないまま、それでも半年かけてこの街まで辿り着き、終の棲家を見つけたのだから。ここの島、特にひとり島は、人を選ぶと言われている。どんなに待っても、ひとり島が認めなければ、契約できないのだ。今日のあのどこぞの伯爵のように。そういう意味ではミーアはひとり島に気に入られた。島のみんなもミーアを受け入れるだろう。




ミーアのことを聞いたのは、ちょうど半年前。焦った様子のタナートから通信が入り、僕は急いで王宮に転移したんだ。そこで待っていたのは、怒り狂う皇帝カイゼスだった。

「何があったの?カイゼスの殺気がダダ漏れなんだけど」

僕が来たことを知った、この場にいる全員がほっとした顔をした。甥の怒りはそれ程までに凄まじかった。

「あ″あ″っ!」

「カイゼス。どうしたの?」

事の起こりは、ラスティナ王国が精霊王たちのご神託だと偽り、聖女召喚を強行したことだった。本来なら成功などするはずのないものだったのだが、我が皇帝陛下の番召喚と同日同時刻に重なるという神業的な一致で、聖女が召喚されてしまった。陛下のもとに来たのは箒だったけどね。ぷぷ。これはいつものこと。番の準備が整わないうちは、番の私物が召喚されてくるから、誰も疑問にも思わなかった。

だが、聖女のお披露目があると聞きつけた我々は、その聖女が陛下の番である可能性を否定できず、秘密裏に陛下と側近で確認のため、ラスティナ王国に転移した。この時にダムが少しでもミーアの情報を流してくれていたらと思わないでもないけど、鬼人族のベストオブ脳筋にそれを望んじゃあいけない。タナートは魔術以外はポンコツだし。幸い、違うと分かってすぐに戻ったのだが、ここで不測の事態が発生。陛下の妹君であり、我が姪のアリーシャが陛下の転移にくっついていたのだ。我々はそれに気付かず転移し、そして、アリーシャは行方不明となった。

そもそも、我ら亜種の済む大陸と人族の住む大陸では同じ世界にあれど全く違うんだ。人族は、我ら亜人の大陸には入れない。一部の特殊な亜人が連れてこない限りは。だが、我ら亜人は別だ。人族の大陸に紛れ込ませた多くの亜人が人族を監視しつつ住んでいる。その者たちにアリーシャの行方を追わせたが、見つけたのは、ミーアだった。そのミーアを罪人同様に無理矢理に我ら亜人の大陸に連れ去り放置したのだから、カイゼスの怒りは甘んじて受けるべきだね。

「だいたい、姿隠しを施したアリーシャが見える上に、聖女と同時期にラスティナ王国に現れた身元不明の女性ときたら、陛下の番を疑うと思うんだけど?」

ダム以外の全員が僕から視線を逸らせた。どうやら、ダムはそのつもりで見守りを頼んだつもり・・・だったようだが、誰にも伝わっていなかったようだ。

「で、陛下の番かも」

「番だ!間違いない」

おっと。凄い食いつきだねぇ。

「軟禁されていた貴人牢に匂いがこびりついてた。こいつら、俺の番を軟禁しておいて、誰も様子を見に行かず、食事すら途中から与えられてなかったのも知らず、気付いたら3月の拘束期間を過ぎて、衛兵に釈放された後だったとぬかしやがった」

呆れた。何処の鬼畜の仕業だよ。

「弁護の余地なし。餓死してなくてよかったねぇ。陛下じゃなくても殺したくなる所業だよ。それにしてもさ、こんなに近くにいたのにカイゼスは気付かなかったの?」

「俺は地方に定期視察。3月半」

それは、・・ご愁傷様。

「タイミングが最悪だったね」

「受けたくもない接待を躱し続けて疲れて戻ってみれば、北棟からいい匂いがするじゃないか。行ってみたら、匂いはしても部屋はもぬけの殻。こいつらを問いただして発覚した。クソが。俺は今日限りで皇帝を退くからな!これは決定事項だ」

「そんな。次の皇帝は誰が就けば」

「考え直してください」

「うるせぇ!!!」

「仕方ないじゃない?自分たちの愚行の結果だし。次の皇帝にはアリーシャがなればいい。あの子の愚かな行動も原因のひとつだし。幼くても責任はとらせるべきだよ。君たちが補佐して導くんだね。これも罰のひとつだ。それから、カイゼスの番には関わらないこと。これ以上、追い詰めてカイゼスを拒絶されると困るでしょ?」

そして、それから半年。この街にカイゼスの番が現れるなんて思いもしなかった。僕は、タナートを含むお馬鹿な仲間たちには知らせず、番を探して必死に駆けずり回っているカイゼスに通信した。直ぐさまやって来たカイゼスは、僕に詰め寄ってきたけど、まだ会わせるわけにはいかない。

「今あの子に番だと告げても拒否されるけどいい?」

「・・・・・・」

いいわけないよね。

「君のお気に入りのあのひとり島を皇家名義から君名義にしてあげるから、普通に出会って普通に恋人になって、信用を勝ち取りなよ。あの子、隠してるけど、この世界の人種全てを警戒してるよ」

あいつらのせいでね。

「分かった。俺のひとり島から近いのか?」

「お隣さん。ばあやのひとり島に住んでる。カイゼスのひとり島は、ばあやが管理してたから、すぐに住めるよ」

都合よすぎだよね?

「!!!」

「この島の生活は分かるよね?あの子に教えてあげるといいよ」

コクコクと頷くカイゼスが暴走しないようにだけ見張ればいいかな。番から嫌われるようなことはしないだろうし。漸く番の居場所が分かって、嬉しそうな甥をサポートする日々が始まった。カイゼスよ。お願いだから、ストーカーになってくれるな。
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