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2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第7話 不安な回答
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「俺の純然たる興味だ。間違っているかもしれないなんて恥ずかしがらずに言ってみてくれ」
アシュレイに促され、思考を巡らせる。
「整理ができていないのですが……アシュレイの言う通り軍事の観点でも研究をすればよかったと悔いています」
「まずは王都の研究だったのだ。そんなことを悔いたりしないでくれ」
アシュレイの目は真剣そのものだった。どう言い逃れしても僕の考えを聞くまで態度を変えないようだ。
「アシュレイが以前出征した際の戦は約半年膠着状態の末、奇襲を返り討ちにした。その前の侵攻は7年前です。その時には1年かけて撃破していました。史料上の知識ですが……」
「史実の方が客観的で正しい場合もある。少なくとも先の大戦ではその通りだ」
「戦争状態が10年続いていますが、侵略は2度。アシュレイが出征された戦はその前の戦よりも小規模なものでした。つまりは7年かけても国の体力が戻らなかった」
僕は上が北になるよう地図を回した。
「仮に知り得ないルートで戦力を補給したとしても、人は人です。魔人でさえも食料なしには戦もできません。ゴルザ帝国は国土の殆どが冬は厳しく蓄えが必要となる季節です」
想像上の仮説でしかないが、この国の冬も十分に厳しい。これがゴルザ帝国は更に北に伸びているのだ。これが豊かではないといえる所以だった。仮に、先の戦が10年を見据えて欺くための捨て駒だったとしても、時期があまりにも不自然だった。
「つまりこの時期に攻め入るのは余程の秘策があると?」
僕は黙ってしまう。
「ノア」
「侵攻は向こう3年はないと考えていました」
「その心は?」
「なんの秘策もありません。ゴルザ帝国は侵攻をしません」
今度はアシュレイが黙ってしまった。
「1番信憑性のある情報だから、惑わされている気がするのです。前例があり、不自然だから戦力も確かめずに兵を送り込ませるように仕向ける」
「仕向ける?」
「王都から戦力を遠ざけるために。僕の考えはここまでです。一体誰がどんな目的でというのは、僕の理解では……」
アシュレイは考え込んでしまった。説明が抽象的過ぎただろうか。
「こんな答えでは……今日は愛していただけませんか……?」
「いいや、でももう少し質問に答えてくれたら、ノアが失神するまで愛する。激しく、何度も、俺の欲望のまま奥を突いて、泣いても喚いてもやめない。忘れられない夜にすることを約束する」
僕の耳元で聞いたこともないような甘い声でアシュレイが囁く。アシュレイの浮いた話を聞いたことがないとルークから聞いていたのに。あれは嘘だったのではないかと思えるほど甘美な響きだった。
「は……あ、アシュ……」
「ノアが出征を指示する立場ならば、真っ先に何を疑い、そして確かめる?」
「わから……」
わからないと言いかけた時、彼の熱い舌が耳に滑り込んできた。
「あぁっ……! アシュレイ……やめて……」
反対側の耳にも指を入れられて、僕は犯される水音しか聞こえなくなってしまう。
「教えてくれ」
「領主……領主を……買収できる……この国の者を……」
「ノア……もっとだ……」
「売国か……乗っ取りか……でも……あっあっ! だめぇ!」
下半身に伸びてきたアシュレイの手を必死に押さえつける。
「はぁっ……この国は……魔法科学ごと乗っ取らなければ……何の価値も……アシュレイ……やめて……」
パニック状態で涙声になったところで、アシュレイが手を止めた。
「すまない。つまり宮中に敵がいる可能性が高いということだな」
唐突なアシュレイの変わり身に、僕はショックを受ける。
「あ、あ、アシュレイは、そうやって、そうやって、他の人にも迫って、秘密を暴くのですか?」
「ノアだけだ」
「そんな、そんなの嘘です! あんな声……!」
「領主の身辺から調べるにしては少し土地が離れ過ぎているな……」
「師団に遣いガラスでも飛ばせばよろしいではないですか! 僕なら並行して7賢者とつながりの深い者を探します!」
「なぜだ?」
「先ほども申し上げた通り、魔法科学がなければこの国を乗っ取ったところで何の価値もないからです!」
僕がなりふり構わず喚いて振り返ると、アシュレイはニッコリと微笑んだ。
アシュレイに促され、思考を巡らせる。
「整理ができていないのですが……アシュレイの言う通り軍事の観点でも研究をすればよかったと悔いています」
「まずは王都の研究だったのだ。そんなことを悔いたりしないでくれ」
アシュレイの目は真剣そのものだった。どう言い逃れしても僕の考えを聞くまで態度を変えないようだ。
「アシュレイが以前出征した際の戦は約半年膠着状態の末、奇襲を返り討ちにした。その前の侵攻は7年前です。その時には1年かけて撃破していました。史料上の知識ですが……」
「史実の方が客観的で正しい場合もある。少なくとも先の大戦ではその通りだ」
「戦争状態が10年続いていますが、侵略は2度。アシュレイが出征された戦はその前の戦よりも小規模なものでした。つまりは7年かけても国の体力が戻らなかった」
僕は上が北になるよう地図を回した。
「仮に知り得ないルートで戦力を補給したとしても、人は人です。魔人でさえも食料なしには戦もできません。ゴルザ帝国は国土の殆どが冬は厳しく蓄えが必要となる季節です」
想像上の仮説でしかないが、この国の冬も十分に厳しい。これがゴルザ帝国は更に北に伸びているのだ。これが豊かではないといえる所以だった。仮に、先の戦が10年を見据えて欺くための捨て駒だったとしても、時期があまりにも不自然だった。
「つまりこの時期に攻め入るのは余程の秘策があると?」
僕は黙ってしまう。
「ノア」
「侵攻は向こう3年はないと考えていました」
「その心は?」
「なんの秘策もありません。ゴルザ帝国は侵攻をしません」
今度はアシュレイが黙ってしまった。
「1番信憑性のある情報だから、惑わされている気がするのです。前例があり、不自然だから戦力も確かめずに兵を送り込ませるように仕向ける」
「仕向ける?」
「王都から戦力を遠ざけるために。僕の考えはここまでです。一体誰がどんな目的でというのは、僕の理解では……」
アシュレイは考え込んでしまった。説明が抽象的過ぎただろうか。
「こんな答えでは……今日は愛していただけませんか……?」
「いいや、でももう少し質問に答えてくれたら、ノアが失神するまで愛する。激しく、何度も、俺の欲望のまま奥を突いて、泣いても喚いてもやめない。忘れられない夜にすることを約束する」
僕の耳元で聞いたこともないような甘い声でアシュレイが囁く。アシュレイの浮いた話を聞いたことがないとルークから聞いていたのに。あれは嘘だったのではないかと思えるほど甘美な響きだった。
「は……あ、アシュ……」
「ノアが出征を指示する立場ならば、真っ先に何を疑い、そして確かめる?」
「わから……」
わからないと言いかけた時、彼の熱い舌が耳に滑り込んできた。
「あぁっ……! アシュレイ……やめて……」
反対側の耳にも指を入れられて、僕は犯される水音しか聞こえなくなってしまう。
「教えてくれ」
「領主……領主を……買収できる……この国の者を……」
「ノア……もっとだ……」
「売国か……乗っ取りか……でも……あっあっ! だめぇ!」
下半身に伸びてきたアシュレイの手を必死に押さえつける。
「はぁっ……この国は……魔法科学ごと乗っ取らなければ……何の価値も……アシュレイ……やめて……」
パニック状態で涙声になったところで、アシュレイが手を止めた。
「すまない。つまり宮中に敵がいる可能性が高いということだな」
唐突なアシュレイの変わり身に、僕はショックを受ける。
「あ、あ、アシュレイは、そうやって、そうやって、他の人にも迫って、秘密を暴くのですか?」
「ノアだけだ」
「そんな、そんなの嘘です! あんな声……!」
「領主の身辺から調べるにしては少し土地が離れ過ぎているな……」
「師団に遣いガラスでも飛ばせばよろしいではないですか! 僕なら並行して7賢者とつながりの深い者を探します!」
「なぜだ?」
「先ほども申し上げた通り、魔法科学がなければこの国を乗っ取ったところで何の価値もないからです!」
僕がなりふり構わず喚いて振り返ると、アシュレイはニッコリと微笑んだ。
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