特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -13話-[異世界の様子を仲間へ伝えよう]

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 宗八そうはちとアルカンシェが案内された複数の部屋に仲間たちは分かれて休んでいた。
 無事に戻った事と異世界の説明も含めて一度全員が入れる部屋に移動してもらった。

「改めて心配を掛けたようで申し訳なかった。時間の流れが考えていた以上に違い過ぎていた事が原因だ。すまんかった」
「皆、ごめんなさい」
 宗八そうはちの隣に立つアルカンシェと共に頭を下げて仲間に謝罪する。まず反応したのは侍女メリー。
「アルシェ様が無事で安心いたしました。しばらくはご一緒させていただきますよ?」
「ふふふ、構わないわよ。さっそくお茶をお願いできるかしら」
「かしこまりました」
 主従の心温まるやり取りが終わると続いてマリエルが動き出す。
「姫様の無事のお戻りお喜び申し上げます。隊長の話ではあっちは時間の流れがこちらよりも遅いという事でしょうか?」
「その通りよ。私達は予定通り夕刻に戻って来たつもりだったし時間帯は確かに夕刻だったから三日も経っているなんて考えもしなかったくらいよ。おかげで余計な心配を掛けちゃってごめんなさいね」
 マリエルは首を振り否定する。
「最悪姫様だけは隊長が異世界から戻すだろうと信じておりましたからそこまで心配はしていませんでした。実際危ない状況ではなかったんですよね?」
 今度は宗八そうはちに向けた言葉だ。宗八そうはちも答える。
「Sランクの魔物が群れで襲ってきたくらいで他は特に危ない場面は無かった。危ないと言っても互いに精霊と一体化していたし楽しめたほどだぞ」
「でしょうね。姫様も楽しめたようで宜しゅうございました。こちらもゼノウさんが落ち着いて行動してくださったおかげで特段混乱もなく集まることが出来ました」
 マリエルの報告に皆の視線がゼノウに向けられた。

 突然のリーダー二名の行方不明に混乱が起こらなかったのは皆の信頼も当然としてゼノウが声掛けと帰還を手助けしたからだ。
 今までは宗八そうはちとメリーしか闇魔法[ゲート]を使用出来なかったが、少し前からゼノウも独自のゲートを描くことで同様に遠距離の移動が出来るようになっていた。距離によって開く際に要求される魔力も総じて多くなってしまうデメリットは存在するものの自分達だけではなく仲間が個別に運用出来る点において、ゼノウの評価は更に高くなった。

「ラッセン殿下からもゼノウが仲間を集めたようだと報告を受けている。助かったよ、流石はゼノウだな!」
 宗八そうはちのストレートな賞賛に珍しくゼノウが嬉しそうな表情を一瞬浮かべた後にスッと頭を下げる。
「礼には及ばない。俺達も宗八そうはちとアルカンシェ様に何かあったとか考えなかったからな。ただ、予定とは違う事が起こったから念の為戦力を一か所に集めただけだ」
「それでも感謝します、ゼノウ。私からも礼を言わせてください。ありがとう」
 アルカンシェからのお褒めの言葉には流石に礼を尽くして恭しく頭を下げるゼノウ。
「勿体ないお言葉です。これからも精進致します」

 再会の話はこれくらいにしておいて、と宗八そうはちが考えを切り替えると全員が空気が変わったのを察して真剣な表情になる。
 皆に一室に集まってもらったのはメインディッシュである異世界の話をする為と理解しているからだ。

「まず今回の異世界はやはり炎属性の魔神族の世界で間違いないと思う。ナユタの時は雷鳴と落雷が酷い世界だったが今回も同様にマグマの河に高温の大地、燃えて炭化した木々、遠目には火山も活性化していたし常に降っている灰と瘴気が混ざった空気で以前よりも視界が悪かった」
 ここまでは予想通りと皆が頷く。初耳の情報はあっても知りたいことは自分達を連れて行く事が出来るかどうかの判断だった。
「俺とアルシェはそれぞれ環境適応出来る加護を持っているがそれでも戦闘をしていなくとも汗を掻く程度には高温だ。つまり水精使いと火精使い以外は活動が難しいと判断している。当然、対策魔法を創造すれば連れて行ける可能性は出る。ただし、それも風精使いまでだろう」
 宗八そうはちの言葉に一瞬落胆したマリエル・セーバー・ライナーの三名の表情は明るくなった。

 冷却魔法クールルームはもちろん全員利用する必要がある事と風精使いに関しては魔法瓶の仕組みを伝えて四女ニルチッイと共に魔法を開発するように指示を出す。基礎的な魔法式はニルとアクア達が宗八そうはちと一体化している間に構想を立てて既に話し合っていた。後は実用に足る性能の魔法に仕上がれば戦力として計算しても良いだろうと考えている。

 ちなみに以前は属性を選択していなかった仲間達も順調に精霊使いとして成長している。
 ■ゼノウPT■
 ・ゼノウ=アルカトラズ=エリウス  /闇精:ウーノ    /真なる加護
 ・ライナー=セリアティア=ライボルト/風精:ドゥーエ   /真なる加護
 ・トワイン=パウエル        /無精:セルレイン+@/亜神の加護(全)
 ・フランザ=シヴァ=エフィメール  /水精:ペルク    /真なる加護

 ■セーバーPT■
 ・セーバー=テンペスト=カルドウェル/風精:リュースライア /真なる加護
 ・ノルキア=ハンバネス       /土精:ベルベルト   /加護無し
 ・ディテウス=マレマール      /無精:イヴァミール+@/亜神の加護(水/闇/風)
 ・アネス=ソレイユ=ミレボリア   /光精:ミャンクー   /真なる加護
 ・モエア=ラメンツィラ       /火精:パール     /加護無し

 宗八そうはちの弟子となったトワインとディテウスは七精霊使いを目指しているのでミドルネームが入っていないが、それぞれ宗八そうはち達PTの個性を見て聞いて検討した結果、自分で選んだ属性に無精を染めた。真なる加護の祝福は順々に施してもらっている状態ではあるものの自分達七精の門エレメンツゲートだけではなく勇者PTの戦力増強の為にも紹介しているのでセーバーPTの二名には申し訳ないが次の祝福まで待ってもらっている。

「魔物の強さはランク8~ランク10が多く出て来た。Sランク相当の魔物はランク10以上に当たる」
 この報告には戦闘大好きセーバーが挙手して食い付いて来た。
「面白そうな魔物は居たのか?」
「魔物っちゃあ魔物だけど……聖獣があっちの世界にも居たぞ」
 聖獣という言葉に今度は眠たげにしているタルテューフォに視線が集まる。それに気づいてタルテューフォはコテンと首を傾げた。
「タルなのだ?」
「あっちで会った聖獣は小さい範囲だが瘴気を浄化する力を持っていた。でも、タルは浄化能力を持っていないが多少なりに瘴気耐性を持っているんだと思う。聖なる力は宿していないから準聖獣ってのが猪獅子ヤマノサチの正しい立ち位置なんだろうな」
 なるほど、と皆が納得をしてからタルテューフォから視線を剥がした。この世界にも正しい聖獣がいるのかもしれないが人族からすれば凄まじい強さを持つ猪獅子ヤマノサチはやはり聖獣で間違いなかった。 

「風魔法の実用化が出来たら改めてメンバーを決めて入ろうと思ってる。突入出来ないメンバーは時間経過がえげつないからその間のゲート周りで警戒と掃討をヴリドエンデ戦力と共に対応してほしい。詳しくはもう少し殿下達と詰めてからまた報告する事になるから今日以降は各自不足分を自分で考えて動く様に。以上」
「何か質問があれば私でもお兄さんにでも遠慮なく言ってください。必要と判断すればアスペラルダにも協力を求める事は出来ますからね」

 ゲートさえ繋がっていれば異世界同士の時間経過は同一となる事はナユタの世界を攻略した際に得た重要な事実だ。パンパンと手を叩いて終了を告げる。
 他に細かい事はまた書面にまとめてから皆に回す事になるのでひとまずの報告はこの程度で皆は満足して退室して行く。
 室内に残ったのは宗八そうはちPTの面々だ。マリエルとメリーの他にタルテューフォ、リッカ、サーニャが今後の自分達の身の振り方をリーダーへ伺おうと残ったのだ。

「じゃあ、俺達の動きについてだが……」
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