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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-
†第15章† -14話-[正妻からの挑戦状]
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水無月宗八が率いるクラン[七精の門]の方針は決まり、その内容はヴリドエンデの両殿下だけではなく各国の重鎮にも伝えられた。他国にも異世界への亀裂が同時に出現している可能性も捨てきれない為、警戒は怠らない様にとの警告も含めての周知であった。
さて、宗八の正体が判明した事で心置きなく愛を伝える事が出来るようになったアルカンシェ。
自分の父親、国王ギュンターは正妃ナデージュだけを愛し側妃を迎え入れなかったが為に王族の跡取りは自分とこれから生まれる王子の二名だけ。一応縁者は居るものの王族としての教育も行っていない者たちなので今後の国の在り様を考えると自分と宗八が分家となった暁には予備は多いに越したことはない。アルカンシェは齢十四で家族計画を考え始めていた。
コンコンッ!
「サーニャです。メリーさんからお呼びと伺い参りました」
アルカンシェはメリーが退室する前に淹れてくれた紅茶をテーブルに置くと返事をする。
「入って頂戴」
流石は聖女クレシーダの側仕えとして働いていただけはある。サーニャはスムーズな所作で入室し扉を閉じ頭を下げた。
どうやら緊張しているらしいとアルカンシェはさっそく椅子を勧める。
「大事な話があって呼んだのだけど、侍女としての立ち位置では話辛いの。椅子に座って頂戴」
「かしこまりました」
恐る恐る指定された椅子に座るサーニャは真っ直ぐな視線でアルカンシェの顔を見つめた。
呼び出された理由に心当たりがない。何故呼ばれたのか?
現在の主は集団のリーダーである水無月宗八ではなく目の前の王女殿下だ。当然失態があれば叱責するのがアルカンシェ王女殿下のお仕事ではあるが本当に心当たりはなかった。強いて言えば疚しい気持ちが奥底で燻っている事だろうか……。
「そんなに緊張しないで。サーニャの事はクレアに頼まれているのだし、何より怒る為に呼んだ訳でも無いの。あ、飲み物は申し訳ないけれど自分で淹れて頂戴。私はまだ美味しく淹れられないのよ」
どうやら失態を冒したわけでは無いらしい、と内心で安堵したサーニャ。だが、やはり呼び出された理由に心当たりがない。
「聖女クレアの元から離れてしばらく時間が経ったけれど、私達との生活に慣れたかしら?」
「はい、皆さん良くしてくれています。精霊についても無知な部分が多く苦労もありましたが今は強くなる事が楽しくすらあります。破滅を撃退出来た暁にはクレア様に素晴らしい土産話が出来そうな程です」
サーニャが想いを馳せながら喋る内容にアルカンシェは笑ってしまった。
「ふふふ、本当にサーニャはクレアの事が大好きね。でも、その頃には聖女では無くなっていると思うわよ。隠居に近い形のクレアと共に居るつもり?」
サーニャは誇らしげに頷く。
「はい。私は生涯クレア様の味方であろうと決め幼くも頑張るクレア様の側に付いたのです。今は水無月様の希望にクレア様と教皇様が許可をして駆り出されていますが、他の方々に比べると戦いが終わった後にアスペラルダに残る……という選択は今のところ考えておりません」
サーニャの高潔な語りにアルカンシェは理解を示す。宗八の子供達と契約した者たちはアルカンシェの身を護る目的で集められた者たちだ。しかし、宗八がこの世界に残る事が確定した以上もっと自由に戦いの後を選択する事が出来るようになったのもまた事実。
サーニャの希望は聖女クレシーダと共にある事。
楽しそうにクレシーダを思い出しながら喋るサーニャの姿を確認したアルカンシェは、一口紅茶を飲みカップをテーブルに置いた上でもう一つの選択肢を提示する。
「サーニャ。貴女、宗八の事を慕っているわよね?」
「ブッーーーー!」
タイミングが悪かったらしい。サーニャが丁度カップを口にした時に伝えてしまった為に不敬にもアルカンシェに向けて紅茶を噴き出したのだ。幸いアルカンシェの魔法制御で紅茶は空中で弧を描きサーニャのカップに戻っていく。ただし、サーニャの身体は震えたままだ。
「も、申し訳ございませんアルカンシェ様!あ、あまりに突然の……その……ともかく!どうぞ罰をお与えください!」
いや、今のは自分が悪かったとアルカンシェは思った。
「気にしないでサーニャ。私もタイミングを考えずごめんなさい。紅茶に濡れてもいないのだし今回は気にしないで落ち着いて頂戴」
仮にも主に茶を拭くなど前代未聞の大失態だ。切っ掛けがアルカンシェにあろうと悪いのは自分だとサーニャは下げた頭を上げない。
「本当に気にしないで。それとも、これくらいで怒る様な狭量な王女と思っているという事?」
「その様な事はっ!」
必死な様子にアルカンシェは逆に面白くなって笑ってしまう。
「うふふふ、あはははははっ!もう本当にサーニャは真面目ね。クレアや姉のトーニャ殿にも言われたことがあるのではなくて?」
アルカンシェの言葉に「うっ……」と心当たりがある様子のサーニャは渋々アルカンシェの許しに従い椅子に座りなおった。
しかし、冷静になれば先ほどアルカンシェから質問された言葉が脳内をぐるぐると巡る。
慕っている。慕っている?慕っている!?
「落ち着いては……いないみたいね。ともかくサーニャを呼んだ理由はこの本題を聞く為よ」
主の想い人に懸想しているかどうかの確認。その事実に表情を強張らせるサーニャにアルカンシェは努めて優しい声音で語り掛ける。
「サーニャが部屋に入った時点でニルちゃんが音漏れを防いでくれているわ。それに私なりに調べてはいるの。私以外誰も聞いていないから正直に答えて欲しいのよ、サーニャ。貴女は宗八を慕っているのかしら?」
嗚呼、アルカンシェ様は全て知ったうえで私の口から聞きたいのだ。袋小路なのだと考えれば抗い様もない。楽になるにはこれしかないのだから。
「おそらく……お慕いしている、と考えております。ただ、私にとっては初恋なのでこれが本当に好き、という気持ちなのかはわかりません……」
予想以上に追い詰めてしまっている。とアルカンシェは反省した。真正面から聞き過ぎたのだ。自分の目的はサーニャにその恋を諦めさせることではないというのに。
「凄く怯えているところ申し訳ないのだけれど、先に私の考えを伝えておけば良かったわね。私はサーニャの気持ちを責めているわけでもなければ貴女の気持ちを玩具にするつもりもないの。私の目的は宗八の側室になるつもりは無いかと問う事なのよ」
「……へ?」
アルカンシェと宗八が両想いであり、婚約が内定したことは仲間達全員が祝福した。
ただし、世界情勢の状況が状況なだけに各国の王族や重鎮には伝えたものの実際には大々的に婚約を発表するのはもっと事態が落ち着いてから行う事が決まっていた。発表してしまえばアスペラルダは勿論宗八達が関わった色んな国の人々が祝福してくれるだろう事はわかっていても今はまだ我慢の時と二人は一線を引いたのだ。
そんな不思議な婚約状況の中でアルカンシェが側室探しをしている等誰が想像するだろうか。サーニャが不覚にもアホっぽい声を漏らしたとて誰が責められようか。
「私は宗八を愛しているわ。誰に伝えても恥ずかしくはない、堂々と言える私の気持ちよ。でも、今後私は王族籍から外され、王族の血を引く新興貴族となるわ。役目は王族の血を絶やさない為の保険として、そして王族を武でも文でも支える貴族としても求められるの。だとしても、血が王族を決めるわけでは無く在り方がその人を決める。お父様はお母様しか迎えていない愛妻家だからこそ保険という意味でも私達の家は正妻だけではなく側室も迎えたいと考えているわ」
魔神族を倒し、破滅を撃退し、アスペラルダという国の未来を考えるアルカンシェの姿は十四歳とは思えない程に堂の入った説得力があった。嘘偽りのない正直な王女殿下の気持ちなのだろうとサーニャも理解し先ほどまで自分を支配していた恐怖心が消えて行く。
「……初めて水無月様と会った時はクレア様を気軽に膝に座らせたりと気安い態度に不快感を覚えたのを覚えています」
そしてサーニャは語り始めた。自分と宗八の物語を。
「水無月様の気安い態度は私達に対しても同様だったので私も調子に乗ってつい嫌がらせのつもりで舌打ちしたり辛辣な言葉を添えるようになったのです。その様子がクレア様や姉の視点では仲良くしていると映った様で以降教国に水無月様が訪れる際には私が担当するようになりました。そして、いつしか顔を合わせるのが楽しいと感じている自分に気が付いたのです」
サーニャもアルカンシェと同じ様に初恋だった。アナザー・ワンとして立派に務められるようにと自分を鍛え聖女クレアに生涯を捧げるつもりであったサーニャの心は恋愛など入り込む余地が無かった、はずだった。
「姉に相談したのです、自分はおかしいと。姉は言いました。それは恋よ、おめでとう、と。最初は戸惑いばかりでしたが今までの自分を保つ為にも同じ距離感で水無月様に接している間にもどんどんと、その……気持ちが強くなっていた、のだと思います。そして水無月様がクレア様に私が欲しいと言われた時にはっきりと自覚しました。私は水無月様をお慕いしているのだと……申し訳ありません、アルカンシェ様」
謝るサーニャにアルカンシェは嬉しそうに首を振る。
「サーニャ、謝らないで。私も似た様なものだったわ。異世界人は勇者様に続いて二人目で、毎日窓から汗だくになりながら必死に剣を振る姿を見ている内に段々と惹かれて行ったの。普段から兵士が剣を振る姿は見ていたのに宗八の姿だけが輝いて見えた気がしていた。元々異世界に興味はあったけれど本当に何に惹かれたのか今もわからないわ。でも私はその時、初めて恋をした。それは確実よ」
ニコリと微笑むアルカンシェの暖かな言葉にサーニャも自然と緊張が緩む。身体と心の硬直から解放されたサーニャと、やっと目的の話が進むと安堵するアルカンシェのお茶会は互いの気持ちを赤裸々にした事でスムーズに進み始めた。こうしてサーニャは未来の選択肢に宗八の側室というカードが追加されたのであった。
さて、宗八の正体が判明した事で心置きなく愛を伝える事が出来るようになったアルカンシェ。
自分の父親、国王ギュンターは正妃ナデージュだけを愛し側妃を迎え入れなかったが為に王族の跡取りは自分とこれから生まれる王子の二名だけ。一応縁者は居るものの王族としての教育も行っていない者たちなので今後の国の在り様を考えると自分と宗八が分家となった暁には予備は多いに越したことはない。アルカンシェは齢十四で家族計画を考え始めていた。
コンコンッ!
「サーニャです。メリーさんからお呼びと伺い参りました」
アルカンシェはメリーが退室する前に淹れてくれた紅茶をテーブルに置くと返事をする。
「入って頂戴」
流石は聖女クレシーダの側仕えとして働いていただけはある。サーニャはスムーズな所作で入室し扉を閉じ頭を下げた。
どうやら緊張しているらしいとアルカンシェはさっそく椅子を勧める。
「大事な話があって呼んだのだけど、侍女としての立ち位置では話辛いの。椅子に座って頂戴」
「かしこまりました」
恐る恐る指定された椅子に座るサーニャは真っ直ぐな視線でアルカンシェの顔を見つめた。
呼び出された理由に心当たりがない。何故呼ばれたのか?
現在の主は集団のリーダーである水無月宗八ではなく目の前の王女殿下だ。当然失態があれば叱責するのがアルカンシェ王女殿下のお仕事ではあるが本当に心当たりはなかった。強いて言えば疚しい気持ちが奥底で燻っている事だろうか……。
「そんなに緊張しないで。サーニャの事はクレアに頼まれているのだし、何より怒る為に呼んだ訳でも無いの。あ、飲み物は申し訳ないけれど自分で淹れて頂戴。私はまだ美味しく淹れられないのよ」
どうやら失態を冒したわけでは無いらしい、と内心で安堵したサーニャ。だが、やはり呼び出された理由に心当たりがない。
「聖女クレアの元から離れてしばらく時間が経ったけれど、私達との生活に慣れたかしら?」
「はい、皆さん良くしてくれています。精霊についても無知な部分が多く苦労もありましたが今は強くなる事が楽しくすらあります。破滅を撃退出来た暁にはクレア様に素晴らしい土産話が出来そうな程です」
サーニャが想いを馳せながら喋る内容にアルカンシェは笑ってしまった。
「ふふふ、本当にサーニャはクレアの事が大好きね。でも、その頃には聖女では無くなっていると思うわよ。隠居に近い形のクレアと共に居るつもり?」
サーニャは誇らしげに頷く。
「はい。私は生涯クレア様の味方であろうと決め幼くも頑張るクレア様の側に付いたのです。今は水無月様の希望にクレア様と教皇様が許可をして駆り出されていますが、他の方々に比べると戦いが終わった後にアスペラルダに残る……という選択は今のところ考えておりません」
サーニャの高潔な語りにアルカンシェは理解を示す。宗八の子供達と契約した者たちはアルカンシェの身を護る目的で集められた者たちだ。しかし、宗八がこの世界に残る事が確定した以上もっと自由に戦いの後を選択する事が出来るようになったのもまた事実。
サーニャの希望は聖女クレシーダと共にある事。
楽しそうにクレシーダを思い出しながら喋るサーニャの姿を確認したアルカンシェは、一口紅茶を飲みカップをテーブルに置いた上でもう一つの選択肢を提示する。
「サーニャ。貴女、宗八の事を慕っているわよね?」
「ブッーーーー!」
タイミングが悪かったらしい。サーニャが丁度カップを口にした時に伝えてしまった為に不敬にもアルカンシェに向けて紅茶を噴き出したのだ。幸いアルカンシェの魔法制御で紅茶は空中で弧を描きサーニャのカップに戻っていく。ただし、サーニャの身体は震えたままだ。
「も、申し訳ございませんアルカンシェ様!あ、あまりに突然の……その……ともかく!どうぞ罰をお与えください!」
いや、今のは自分が悪かったとアルカンシェは思った。
「気にしないでサーニャ。私もタイミングを考えずごめんなさい。紅茶に濡れてもいないのだし今回は気にしないで落ち着いて頂戴」
仮にも主に茶を拭くなど前代未聞の大失態だ。切っ掛けがアルカンシェにあろうと悪いのは自分だとサーニャは下げた頭を上げない。
「本当に気にしないで。それとも、これくらいで怒る様な狭量な王女と思っているという事?」
「その様な事はっ!」
必死な様子にアルカンシェは逆に面白くなって笑ってしまう。
「うふふふ、あはははははっ!もう本当にサーニャは真面目ね。クレアや姉のトーニャ殿にも言われたことがあるのではなくて?」
アルカンシェの言葉に「うっ……」と心当たりがある様子のサーニャは渋々アルカンシェの許しに従い椅子に座りなおった。
しかし、冷静になれば先ほどアルカンシェから質問された言葉が脳内をぐるぐると巡る。
慕っている。慕っている?慕っている!?
「落ち着いては……いないみたいね。ともかくサーニャを呼んだ理由はこの本題を聞く為よ」
主の想い人に懸想しているかどうかの確認。その事実に表情を強張らせるサーニャにアルカンシェは努めて優しい声音で語り掛ける。
「サーニャが部屋に入った時点でニルちゃんが音漏れを防いでくれているわ。それに私なりに調べてはいるの。私以外誰も聞いていないから正直に答えて欲しいのよ、サーニャ。貴女は宗八を慕っているのかしら?」
嗚呼、アルカンシェ様は全て知ったうえで私の口から聞きたいのだ。袋小路なのだと考えれば抗い様もない。楽になるにはこれしかないのだから。
「おそらく……お慕いしている、と考えております。ただ、私にとっては初恋なのでこれが本当に好き、という気持ちなのかはわかりません……」
予想以上に追い詰めてしまっている。とアルカンシェは反省した。真正面から聞き過ぎたのだ。自分の目的はサーニャにその恋を諦めさせることではないというのに。
「凄く怯えているところ申し訳ないのだけれど、先に私の考えを伝えておけば良かったわね。私はサーニャの気持ちを責めているわけでもなければ貴女の気持ちを玩具にするつもりもないの。私の目的は宗八の側室になるつもりは無いかと問う事なのよ」
「……へ?」
アルカンシェと宗八が両想いであり、婚約が内定したことは仲間達全員が祝福した。
ただし、世界情勢の状況が状況なだけに各国の王族や重鎮には伝えたものの実際には大々的に婚約を発表するのはもっと事態が落ち着いてから行う事が決まっていた。発表してしまえばアスペラルダは勿論宗八達が関わった色んな国の人々が祝福してくれるだろう事はわかっていても今はまだ我慢の時と二人は一線を引いたのだ。
そんな不思議な婚約状況の中でアルカンシェが側室探しをしている等誰が想像するだろうか。サーニャが不覚にもアホっぽい声を漏らしたとて誰が責められようか。
「私は宗八を愛しているわ。誰に伝えても恥ずかしくはない、堂々と言える私の気持ちよ。でも、今後私は王族籍から外され、王族の血を引く新興貴族となるわ。役目は王族の血を絶やさない為の保険として、そして王族を武でも文でも支える貴族としても求められるの。だとしても、血が王族を決めるわけでは無く在り方がその人を決める。お父様はお母様しか迎えていない愛妻家だからこそ保険という意味でも私達の家は正妻だけではなく側室も迎えたいと考えているわ」
魔神族を倒し、破滅を撃退し、アスペラルダという国の未来を考えるアルカンシェの姿は十四歳とは思えない程に堂の入った説得力があった。嘘偽りのない正直な王女殿下の気持ちなのだろうとサーニャも理解し先ほどまで自分を支配していた恐怖心が消えて行く。
「……初めて水無月様と会った時はクレア様を気軽に膝に座らせたりと気安い態度に不快感を覚えたのを覚えています」
そしてサーニャは語り始めた。自分と宗八の物語を。
「水無月様の気安い態度は私達に対しても同様だったので私も調子に乗ってつい嫌がらせのつもりで舌打ちしたり辛辣な言葉を添えるようになったのです。その様子がクレア様や姉の視点では仲良くしていると映った様で以降教国に水無月様が訪れる際には私が担当するようになりました。そして、いつしか顔を合わせるのが楽しいと感じている自分に気が付いたのです」
サーニャもアルカンシェと同じ様に初恋だった。アナザー・ワンとして立派に務められるようにと自分を鍛え聖女クレアに生涯を捧げるつもりであったサーニャの心は恋愛など入り込む余地が無かった、はずだった。
「姉に相談したのです、自分はおかしいと。姉は言いました。それは恋よ、おめでとう、と。最初は戸惑いばかりでしたが今までの自分を保つ為にも同じ距離感で水無月様に接している間にもどんどんと、その……気持ちが強くなっていた、のだと思います。そして水無月様がクレア様に私が欲しいと言われた時にはっきりと自覚しました。私は水無月様をお慕いしているのだと……申し訳ありません、アルカンシェ様」
謝るサーニャにアルカンシェは嬉しそうに首を振る。
「サーニャ、謝らないで。私も似た様なものだったわ。異世界人は勇者様に続いて二人目で、毎日窓から汗だくになりながら必死に剣を振る姿を見ている内に段々と惹かれて行ったの。普段から兵士が剣を振る姿は見ていたのに宗八の姿だけが輝いて見えた気がしていた。元々異世界に興味はあったけれど本当に何に惹かれたのか今もわからないわ。でも私はその時、初めて恋をした。それは確実よ」
ニコリと微笑むアルカンシェの暖かな言葉にサーニャも自然と緊張が緩む。身体と心の硬直から解放されたサーニャと、やっと目的の話が進むと安堵するアルカンシェのお茶会は互いの気持ちを赤裸々にした事でスムーズに進み始めた。こうしてサーニャは未来の選択肢に宗八の側室というカードが追加されたのであった。
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