ユメ。売買

淡宵

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 周りとは少し遅れて教室に戻った私。皆友達と話したり、ゲームしたり、教室にはいる私を冷たい目で見ながら続ける。中学に戻りたい。まだ私の存在があった中学に。私の夢を認めてくれてたあの人たちに会いたい。
「なんか退屈そうだねぇ」
急に隣から声がした。見ればそこにはあの夣売買人がいた。
「え、なんで?だって学校…」
そう言いかけた時、売買人は周りを見るように促した。さっきまで教室だったそこはあの時の不思議な世界、建物の中だった。
「なんか暇そうだったから。遊んでもらおうかなって!」
「困るんだけど。急にそんな事しないで」
本当に困る。ただでさえ周りから浮いているのに急に消えたりとかしたら何思われるか分からない
「あぁ!安心してくれ。あの人たちの中では今、キミもいることになっている。僕の力を使ってね少しだけ記憶を。ね。」
「その記憶の中の私って…今の私とは違うの?」
「んー。なんとも言えないけれど。こっちは魂。あっちは体だと思ってくれればいいよ。めんどくさいし。」
適当なんだよな。この人。そもそも私はこの人について何も知らない。そういえば、どうしてこの人は私の名前を知っているのだろう。
「んふふ。」
「え、何」
「いやぁ。とても興味深い顔をしているからね。いいよ。なんでも聞いてくれ。可能な限り答えよう。」
なんでも。確かに言った。向こうでも私は居ることになっている。ならば好きなだけ探ろう。この人について、この世界について。
「じゃあ。この世界について教えてください。」
「いいよ。長い話は好きかい?」
長文は、聞くのを書くのも読むのも苦手だが。知る為ならば多少の我慢はできる。
「いいえ。別に。」
「…そう。じゃあ。この世界にはね”ユメ”がないんだ。将来の夢、眠った時に見る夢、はたまた妄想かもしれない。それら全てがなかった。元々はあったらしいんだけど。」
「なかったってことは」
「そう。キミが見てるこの世界には不思議な形や色があるだろう。それはこのセカイの人々の夢なんだ。
取り戻せたんだよ。前とは少し違う形かもしれないけれどね。」
元々ユメがあったセカイからある日ユメが消えるなんて話。信じられるわけない。
「まぁ、信じられるわけないよね。私も最初は信じられなかった。でも実際そうなんだ。君を襲おうとしたあの白い人。覚えているかい?」
鮮明に覚えている。最初にここに来た時追いかけてきたあの白い人のような生き物。普通の人とはまた違い、他の色づいてる人とも違った。全てをあきらめた、光のない。そんな人だった。
「はい」
「それはよかった。あいつらは”ユメナシ”って言うんだ。ユメがないからそういう名前なんだろうけどね。僕も本で読んだ話だから本当かは分からないけど」
「分からないって。だってこのセカイの人でしょ?あなたもユメナシじゃないんですか。」
カランコロン
音のする方を見ると白い明かりのない人。”ユメナシ”が立っていた。
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