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浦島太郎外伝5 老いても変わらぬ愛を誓い

三話

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 今日はいい酒を入れた。体もしっかりと洗っておいた。一番気に入っている夜着を着て、ただ静かに烏賊の帰るのを待っている。
 多少緊張している。ただ待っているだけなのに、心臓の音がうるさく感じる。
 そうして長くて短い時間を過ごしていると、待ち望んだ人が少しギョッとした顔で帰ってきた。

「お帰り、トシ」
「おう、ただ今ハチ。なんだ、随分とめかし込んで」
「まぁ、少しな。飲まないか?」

 帰ってきた烏賊に声をかけると、あいつは訝しみながらも隣に座る。手に持ったお猪口に酒を入れ、逆に入れられて。味わうはずの酒の味が分からないとは、よほどだ。

「上物じゃないか。どうした」
「竜王様から貰ったものだ」
「……どうした?」

 心配そうな目が見つめ、手が伸びる。長年連れ添った相手だ、流石に分かりやすく挙動不審だったのだろう。

「……この間の話を、考えてみた」
「……お前が気乗りしないならいいんだ。忘れて」
「欲しいと思う……二人目」
「え?」

 意を決して言った言葉に、烏賊は酷く驚いた顔をする。最初から断られると思っていたような、そんな様子だ。
 だがそれが、徐々に喜びに変わっていくのが分かる。がっしりと肩を掴んだ烏賊が、凄く幸せそうな顔をした。
 それを見れただけでも、この決断は正しかったのだと分かる。連合いがこんなにも喜んでくれるなら、それは同時に蛸の喜びでもあるのだ。

「いいのか!」
「あぁ」
「だが、どうしてだ? 嫌なんじゃないのか?」
「……恥ずかしいと、思っていただけなんだ」
「恥ずかしい?」
「この年で盛って、子供など孕んで腹を膨らませるのは、年甲斐も無い恥ずかしい事だと思っていた」
「なんだよ、それ」

 途端、怒った顔をした烏賊を見て蛸は後悔した。怒らせたかったんじゃないんだ。そして今は恥ずかしいとは思っていないのだ。

「ガキこさえるのが恥ずかしいのか? 歳だからか? お前、まだそれほどじゃないだろ」
「お前に比べれば十分だろ。見た目にも、その……」
「亀や鯛、竜王様の方が遥かに歳が上だろうが」
「見た目が違うだろ」
「たかが見てくれの話じゃないか! お前は確かに厳ついかもしれないが、俺はそんなお前を愛してるんだ。見ろよ!」

 むんずと掴まれた手が、烏賊の股間に触れる。そこは熱く質量を増していて、ちょっと芯を持ち始めていた。
 カッと熱くなる。こんな自分に欲情している事を知らされるのは、恥ずかしくまた、嬉しい事だ。

「俺はお前の痴態思い出すだけでこのザマだ。お前の孔にぶち込んで、ガキ仕込みたくてガマン汁垂れ流してるみっともない野郎だ」
「みっともなくなんて!」
「じゃあ、お前も恥だなんて思うな」

 ドスの利いた低い声で言われる。その後は、グッと強く抱きしめてくる。息がかかるような耳元で、烏賊は切々と蛸に伝えた。

「お前は俺の誇りだよ、ハチ。お前がどうしても嫌だってなら、今回は俺が産む。お前は堂々としていろ」
「そんな! それは俺が請け負うと前に言っただろ。お前は激務なんだ、腹に子がいたら動きにくいし負担もかかる」
「んなこと言って、後で後悔しても遅いんだぞ」

 後悔なんかしないとはっきり言える。
 蛸は苦笑し、烏賊の頭を撫でた。

「すまない、少し考え混んでしまった」
「お前はまだ歳じゃない」
「お前がそう言ってくれるなら、それでいいと思えるようになったよ」
「頑固者め」
「そうだな」
「……薬、いつお願いしにいく?」
「今日、竜王様にお願いしてきた。数日のうちにできるそうだが、負担が少ないように徐々に体をそちらに持っていくようにすると言っていた」
「あぁ、だな。急激に変わるとしんどいからな」
「準備ができたら、よろしく頼む」
「こちらこそだ」

 互いに話は纏まった。蛸の拘りや意地も、面白いくらいにどうでもよくなった。恥や外聞よりも大事なものをちゃんと認識したからだろう。
 だが、何故か体重が乗る。抱きつかれたまま後ろに倒された蛸は、その先で妙にギラギラした烏賊を見上げた。

「…………え?」
「あ? なに呆けた顔してるんだハチ。やるぞ」
「な! そういう流れか!」
「それ以外の流れがどこにある」
「だが、今しても子供はできないぞ!」
「夫婦の営みの時間ってやつだ。お前が可愛い事を言うから息子がその気になっちまった」

 確かに先ほど触れた時は芯を持ち始めていた。が、今見ればそれは半分ほど勃ちあがっている。半分でもかなり太いのだが。

「ハチ」

 ニッといい顔で笑う烏賊を見上げ、蛸も笑った。しなだれかかることも、甘える事も知らない蛸だが、こいつの前では多少そうしても許される。頬に触れる手にすり寄ると、当然のように唇が重なって深く舌を絡めてくる。
 忘れていた感覚を思い出す。舌を吸い上げるようにするのが好きで、蛸もそれが好きな事。大きくて少し硬い手が肌を滑る感じ。

「っ、ふぅ……」
「ははっ、いい顔になってきたぜハチ」
「そうか?」

 少し体が熱くなってきた。グリッと乳首を押し込み、胸を揉む手。無遠慮だが力加減は分かっているから、しっかりと揉まれているうちに気持ち良くなってくる。じわっと甘い疼きが響く。

「相変わらずいい胸してるよな。これも一種の巨乳か?」
「これは巨乳と言えるのか?」

 確かに胸板は厚く、みっしりと筋肉がついている。だが烏賊とは違い、蛸の体は表面的に柔らかい。その奥にある筋肉は負けていないのだが。
 烏賊は執拗に胸を揉み、周囲を撫で回して手で寄せてくる。すると確かに擬似的にだが胸が出来た。

「ほら、巨乳だ」
「人の体で遊ぶな、トシ」
「いいだろ、好きなんだから。お前のこの、揉みごたえのある硬パイがいいんだよ」
「物好きめ」

 恥ずかしいが、嫌いじゃない。胸はジンジンとして、乳首に血が巡るのか独りでに硬くなる。烏賊はその様子を楽しそうに見ているが、触れてはこない。少し、もどかしい。

「乳首立ってきたぜ」
「言わなくていい」
「興奮するくせに。そういえば鮫に聞いたんだが、こういうのを『雄ぱい』というらしいぜ」
「あいつも、余計な事を知っている」

 まったく、呆れた奴だ。
 烏賊の唇が立ち上がった乳首に触れ、強く吸われる。ビリッと痺れるような感覚に思わず呻くと、烏賊はニッと笑って刺激を強くしていく。ぷっくりと充血した部分を甘噛みされるとビクリと体が震える。そこを今度は優しく舌で愛撫されると、痛みと甘い痺れが混ざって気持ちいい。
 徐々に息が乱れ、頭の中も多少浮いてくるのか快楽を求めるようになってくる。体の深い部分が震えて、ヒクヒクと反応してしまっている。

「はは、淫乱。ハチ、気持ちいいな」
「トシ……」
「可愛い顔するな、優しくできなくなるだろ。久しぶりなんだ、ゆっくりしようと頑張ってるんだぜ? 無駄にするなよ」
「んっ!」

 可愛いなんて、こいつ以外は言わない。だが、それでいい。
 筋肉の割れ目を指が滑る。古傷にも触れてくる。そういうところは他よりも敏感で、むずむずしてたまらない。くすぐったくもあって身を捩るが、烏賊は器用にそれを押さえつけてしまう。
 筋肉の筋目に舌が這わされ、臍の辺りも舐められて、すっかり勃ちあがった先端を舐めた。

「んぅ!」
「声殺すなって。聞かせろよ、ハチ」
「萎えるだろっ」
「はっ、まだ言うのか? ギンギンだっての」

 上体を起こした烏賊がわざとらしく自らの股間を晒す。烏賊のそれはすっかり勃ちあがり、堂々天を向いて反り返っている。血管まで浮いて、竿が太く張っている。先端が小さめで槍のようであるのが幸いだが、それにしても飲み込むのが苦しい形だ。

「これでもまだ、萎えてるってか?」
「……入るのか?」
「おう、正しい心配だな。ってことで……」

 烏賊がしゅるりと下半身の擬態を解いて烏賊そのものの足へと変化させる。そして逃げる間もなく太股に絡み、腰を掴まえて大きく足を開かせる。こうなるとこいつの力に敵わない。

「無駄に抵抗すると痛むぞ」
「どうして半化する!」
「お前を可愛がってやりたいが、俺の息子も早くお前の中に入りたいと半べそだ。だから、こっちでしっかり慣して開いてやろうと思ってな」

 比較的細い足がツンツンと後孔を突く。そして長い一本が箪笥から壺を取り出して持ってくる。これは海藻と水を混ぜたヌルヌルの潤滑油代わりだ。

「お前の硬尻、久しぶりだな。何百年ぶりか?」
「頼むトシ、優しくぅ!!」
「勿論だろ、ハチ。最高に気持ち良くしてやるよ」

 ヌルヌルのぬめりを纏った細い足がしゅるしゅると後孔へと触れる。ツンツンされるだけで恥ずかしいが、それがつるりと中に入り込むと、ぞわぞわしてくる。吸盤が内壁に引っかかってくるのだ。

「うぁ、ぐっ……くぅ」
「やっぱ狭くなるんだな。子作りしてた時はゆるゆるにしてやったのに」
「あれは、流石にっ!」

 ここに烏賊の太いものが入ってないと逆に違和感があるくらい、こいつに犯し倒された事を思い出す。腰なんて立つものか。玉が空っぽになっても絞りだそうとするもんだから、その度に痛んだのを思い出す。

「頼む、止めろよ」
「流石にしねーよ。お前、本当に孔が閉じなかったもんな」

 それどころか、寝込んだだろうが。

「お前は執着が強いんだ。そんなに雁字搦めにしなくても、俺は逃げたりはしないだろ」
「分かっちゃいるが、どうにも止まらないんだよ。一度抱き込むと離せない」
「頼む、今日は離してくれるよな?」
「離す」

 とは言ったが、その間にも細い足がぬめりを足しつつ腹の中を出入りする。ボコボコした吸盤が内壁を擦りながら奥へと入ってくるのはおぞましくも気持ちいい。ゾクゾクと尻の中が疼き痺れる。この体は忘れていなかったようだ、与えられた愛情を。

「んぁ……はぁ……」
「いい顔してきたな、ハチ」
「んぅ」

 口を吸われ、応じて、頭の中がぼんやりと蕩けていくのを感じる。他を考えられないくらい、背に走る刺激は甘くて強い。細い足が奥を解して抜けてゆき、次ぎはと太い足が入り込む。少し慣れた部分を太いもので広げられ、苦しさと違和感に耐えて歯を食いしばると、烏賊がそこをこじ開けるように口づけをしてくる。

「あぐっ、ふぅ……あぁ!」
「いい声」
「物好きっ!」
「低くて少し太くて……気持ち良さそうな声だ。色っぽいぜ、ハチ」
「んぐ! いきなり、ふか……っ」

 もう遠慮もいらないと言わんばかりに、足が深くまで入り込んで最奥をぐりぐりと押し込む。その度、腹の中がキュンキュンと締まっていくのが分かる。締まるとそれを擦りつけるように出入りするものだからたまらない。ゾクゾクと背を痺れが走って、自然と背がしなる。腰がうねるようで、そうすると前についたものがぶるんと揺れる。
 そこに、烏賊の足が絡まった。

「っ!」
「これ、使う事なくて悪いな」

 そう言いながら丁寧に扱く足つきが癖になる。グルグルと絡んで、先端に足先が触れて少し潜り込んでくる。それだけで息が上がって頭の中がビリビリした。
 そういえば浦島に手ほどきをしたとき、烏賊との事を思い出して真似たんだった。こいつにされて気持ち良くて、それで……。

「んぁぁ……はぁ…………あっ、あぅ」
「声が甘い。気持ちいいな、ハチ」
「気持ち……いぃ……」

 ヌチヌチと腹の中を掻き回され、魔羅まで扱かれて、蛸の目はとろんと蕩ける。上手く頭も働かないまま欲求が押し寄せてくる。普段抑制するぶん、箍が外れたら貪欲だ。途端に腹の中までギュッと締まって、烏賊も息を上げた。

「ははっ、やっと素直かハチ」
「トシ……ほしい……お前を食わせてくれ……」
「あぁ、存分に食え。俺ももう我慢の限界だ」

 足が人間のそれに代わり、堂々とした槍のような魔羅が後孔へと当たる。それが狭い肉を割ってズブズブと突き刺さるのに、蛸は体を痙攣させながら受け入れた。入口がゴツゴツしたものを美味しそうに食む。入る度に吸い付いていく。抜ける事を嫌がって吸い上げ、突っ込まれる時は喜んで誘いこんでいく。
 声など抑えられるわけもなく、腹に突っ込まれる度に野太い声が響いた。

「っ! 相変わらず、美味しそうに食うよな、お前のここは。お行儀は悪いが、がっつかれるのは好きだぜ」

 ズブズブと熱くて太い魔羅が内壁を無遠慮に擦り、小ぶりだが硬い亀頭が最奥をぐんぐん追い上げる。その度に目の前がチカチカと点滅し、蛸の魔羅からは白濁が押し出されてベタベタになる。
 烏賊の汗がポトリと落ちて、肉と肉のぶつかり合うパンパンという音が室内を埋める。腹の上がすっかりドロドロの蛸を見て、烏賊は楽しそうに笑う。

「蛸の白和え、美味そうだ」
「んぐっ! あっ、うぐ……あぁぁ!」
「臍の裏まで入ってるのがわかる」

 呟いて、臍の辺りを表からぐりぐり撫でられると中まで響く。蛸は足の指をギュッと握り、内腿を痙攣させながら達した。中だけで達するとそれだけ腹が締まる。入口をギュッと絞り、中はちゅうちゅうと吸い付いて烏賊を求めると、腹の中で竿の中程の太さが更に増した。

「あぐ! あっ、でか…………ぐぅぅ」
「みっちりだぜ、ハチ。たまんねぇ……」

 熱くなった魔羅がずんずん腹の奥を抉っていく。くらくらしてきた。揺さぶられ、微かに体を痙攣させ、腹の中をぐずぐずにされながら何度も達した。
 烏賊は美味そうに蛸の乳首を吸い、口を吸って抱き込んでくる。絶対に逃がさないという執着を見るようで、嬉しくもあって首に腕を回したが……力が入りすぎて脇腹を叩かれた。

「絞め殺す気か!」
「すま、ない。あぐっ! あっ、あっ、うぐぅぅ!」
「はぁ……でも、興奮する。さぁ、受け取れよハチ。子作りの予行演習だ」

 ドンドンと腹の底を叩かれて気が狂いそうなほどビリビリ痺れる。一突きごとに気をやっているのにそれでも止まらない。早く欲しいと搾り取るように中がうねっていく。
 もし子袋があれば間違いなく今夜種がついた。欲しそうに絞って自ら求めるようにこいつの種を全部飲んだに違いない。
 そう感じると余計に体が熱い。深い深い本能が点滅して、雌のほうに傾いた。

「孕み、てぇ!」
「っ!」

 理性が切れた中で出た言葉で、烏賊が中に熱を放つ。ドロドロに熱い種が腹の隅々に絡みついて所有の印をつけてくる。それにあわせて腹がくねり、腰はビクビクと持ち上がり、みっともなく前からも白濁が漏れる。入口はミッチリと閉めて、中は更に搾り取って。離せないのはむしろ、蛸のほうだ。

「あぐっ! あ……つい……はぁ……あぁ……」
「っ! 最後のは反則だろ、ハチ」
「んぁ……あっ……」
「……精のつくもの食わせてやるから、楽しみにしとけよ」

 額に口づけた烏賊をぼんやりと見たまま、蛸はくたんと力尽きた。腹の中はまだ烏賊がミッチリと詰まっている。それがちょっと安心で、蛸はよく眠れたのだった。

【外伝5 完】
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