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八話 無理矢理な欲情

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 俺が目を覚ました場所は、どっかのベッドの上。そして俺は腕を縛り上げられていた。慌てて腕をほどこうとしても強く縛られた部分が痺れるばかりで解ける気配がない。

「おっ、目が覚めたか」

 無精髭のごつい男が近づいてくる。ゴツゴツした筋肉の、あまり清潔感のない男だ。俺はそいつを凝視したまま声が出なかった。

「おーい、目が覚めたぞ!」

 明かりのついている部屋に声をかけた男の後から、もう一人男が現れた。同じように筋肉の暑苦しい男だ。

「やっぱ可愛い顔してると思わないか?」
「あぁ、これは売れる」

 これを聞いて、俺は震えが止まらない。頭の中では「やっぱり」という言葉が乱舞してる。こいつらは闇商人に物を売りつける違法冒険者だ。

「おっ、震えてるじゃねーか。可愛いもんだ」
「やっぱ味見しようぜ。俺達もここで足止めされて欲求不満だ」

 後から入ってきた茶髪の男が俺の顎を掴んで無理矢理自分のほうへ向かせる。嫌だ、こんなの。こんな奴にいいようにされるなんてまっぴらだ。

「泣きながら睨むなよ。ゾクゾクするぜ」
「だが、初物のほうが高いんだぞ?」
「おまけだろうが、いいだろ? お前みたいな筋肉だるまを毎日見てると息子が萎える」
「なんだと! それはこっちも同じだ」

 男達は言い合っている。俺はその間震えが止まらない。
 何をしようというのか、こんなに分かりやすい事なんてない。こいつら俺を犯そうっていうんだ。
 俺の顎を掴んでいた茶髪の男が乱暴に俺の服を脱がせる。ブチブチと音がして服が破けた。

「うっはぁ、たまらないぜ! おい、お前も来てみろよ!」

 呼ばれた黒髪の男が俺の肌を見て生唾を飲む。俺を見る目が明らかに変わっていた。

「薬飲ませなきゃ平気だって。それに初物じゃなくたってこの色気だぜ? 変態野郎に可愛がってもらえるだろうさ」
「そうだな」

 渋っていた黒髪の男が陥落したら誰が止める。俺は暴れながら叫んだけれど、所詮肉体的な優位は覆せない。押さえられたまま乱暴に服を剥ぎ取られてしまった。

「なぁ、あれ使わないか?」

 茶髪の男が懐から小さな瓶を取り出す。そこにはピンク色の液体が入っていた。

「高いんだぞ、それ」
「いいじゃないか、取ってきたばかりだしよぉ」

 そう言うと男は俺の口を無理矢理開け、薬を流し込んで鼻を摘まんだ。息苦しさにどうしようもなく口を開ければ、結局飲み込んでしまう。
 どろりと甘く絡むその味は知っている。俺は直ぐにこの薬が何かを知った。

「あっ……あぁ……」

 タネヤドシ。あの植物の媚薬だ。

「直ぐに脳みそ蕩けるほど気持ちよくなるから、楽しもうぜ」

 ニタリと笑った男の手が無遠慮に胸を撫で下ろす。ゾワッとした感覚は奥に甘い痺れがある。知っているんだ、この薬がどんなものか。燃えるような切ない熱が体中を犯していくのが。
 俺の体は俺の意志から離れていく。男のごつい手が俺の胸を押し潰すようにグリグリと揉んでいる。全然丁寧じゃないその愛撫に、俺は声を止められない。ツンと尖った乳首はコリコリして痺れる。揉まれれば揉まれるほどに胸が張ってくるようだ。痛いはずなのに、それが気持ちいい。

「んぅ! ふっ、ふぅぅぅ!」
「おっ、感じてるじゃないか。やっぱりあれは効果が早い」

 心臓が壊れそうだ。体が熱い。痺れて、おかしくなりそうだ。

「こっちもいい具合じゃないか」

 黒髪の男が俺の立ち上がった息子を撫でている。それだけで俺は背を一杯にのけぞらせた。ブルブルッと震えると強ばったそこが大きく膨らむ。もうパンパンだ。

「おっと、まだ出すなよ」
「い!」

 男の指が俺の根元を強く締め付ける。その痛みに俺は涙が溢れビクビクと震えた。

「なんだこいつ、空イキしたぞ」

 嘲るような声で笑っている。俺の心は砕けそうだ。内股が痙攣して、出てないのに腰が動く。頭の中が焼き切れそうだ。心は砕けそうだ。

「ユーリスさん……」

 助けて。
 涙が溢れてくる。助けてと何度も口にしてしまう。名前を呼んでしまう。

「ユーリス?」
「ほら、こいつの連れだろ? A級冒険者でティアマットの討伐に行った」
「あぁ、バカな奴な。今頃食われてるんじゃないのか?」

 嘲るような声に、俺の心臓が嫌な音を立てる。食われてるなんて、そんな事ない。ユーリスさんは強い。戻ってくるって約束したんだ。
 だが男達の笑みは深くなる。バカにするように不快なものになっている。

「絶対食われてるだろ、あんなの」
「あぁ。たとえ竜人族だって簡単じゃないさ」
「そんな……そんな事……」

 ない。そう言いたい。けれど自分だって疑ったじゃないか。だからこそ嫌な夢を見ていたんじゃないか?

「そんな事よりも楽しめよ」

 茶髪の男が俺の足を抱え上げて奥に触れる。俺の体は恐怖に震えた。
 ここに来て直ぐにタネヤドシに犯されている。男達が何をしようというのか、それは分かる。分かるけれど、色んなものが追いつかない。
 こんな奴らに犯されるくらいならタネヤドシのほうがまだいい。もの凄い嫌悪が押し寄せてくる。こんな奴らに犯されるなんてまっぴらだ。

 助けてユーリスさん! 心が叫んでいる。こんな奴らのする事、気持ちよくない。叫びながら体が反応する。心と体が重ならない。苦しい、怖い、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
 気づいたら俺は子供みたいに泣いていた。動けないけれど、声だけは大きく泣いた。男の指が俺の中へと滑り込んで、無遠慮に広げていく。媚薬は俺のそこもトロトロにダメにしていた。

「いやあぁぁぁ! ユーリスさん! ユーリスさん!」

 心から悲鳴を上げた、その時だった。
 乱暴にドアが開く。光が漏れて、長く影を落とし込んでいる。俺に跨がっていた男達がビクリと震えた。俺は涙でグチャグチャの顔をそちらに向けた。

「あ……」

 安心してしまう。短い黒髪がツンツンしている。瞳は金色になっている。見た事もない怖い顔をしている。それでも、彼である事は確かだ。

「ユーリスさん……」

 安心したら力が抜けた。俺はガクンと意識を失う。体がだるくて、辛くてたまらなかった。
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