メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
202 / 393
11.妖怪の山

11.ほら、面倒事だよ

しおりを挟む
 面倒事。

 それは遭いたくないものの代表格。それに遭ったら最後、ロクな目に合わない。後から振り返った時、遭っていてよかったなどと言えても、その場では嫌なのだ。

 大抵の場合、外部の力により、自分の元までやってくる。ごく稀に自分が引き鉄になることがある。

 今回の発端はアシドの持ってきた情報、森にハイウィザードがいるというものだ。

「ガッハハッ! 分かってるなぁ、オマエ!」

 豪快に笑う男がアシドの背を叩いている。アシドは引き攣った顔で受け入れている。いや、あれは諦めている。持たされている盃にドプドプと酒が注がれる。

 どうしてこうなった。

 冷や汗をかきながらアレンはこれまでを振り返る。






「そういえば、さっき、ハイウィザードを見たぞ」
「え?」

 森にハイウィザードが出たらしい。ハイウィザードは知能のある魔物だ。言葉を離せなくても理解はできるレベルだ。ハイウィザードは普段、廃村などにいるため、森にいることは少ない。絶対に何かある。その何かが自分たちの邪魔をしなければいいのだが。

 そんなことを思いながらいたからだろうか。湖岸の砂場が終わり、森に足を踏み入れることとなった。その森の中からちらりと魔物が見えた。

「伏せろ」

 全員が叢に隠れる。すぐに対処しなかったのは、魔物の種類だ。

 ガーゴイル。普通は洞窟に住んでいる魔物だ。森の中にいるということは、近くに洞窟があるということか。

 ガーゴイルは何かを探しているかのように草をかき分けている。ガーゴイルは何も見つからなかったのか、首を傾げている。頭を長い爪で掻き、キョロキョロと見渡し、移動する。

「何を探しているんでしょうね」
「さぁな。けど、野生じゃなさそうだな。とりあえず避けて通るか」
「そうですね。確実に面倒事ですしね」
「え? あ、たー、助けないんですか? こ、こ、困っているみたいですけど」
「ありゃ、面倒事だ。関わったら命が足りねェぞ」
「そ、そ、その時はわ、わ、私が治します」

 小声で会話しているはずなのに、強く鋭い言葉は全員にはっきりと聞こえた。その意思は非常に硬いことを窺わせ、コストイラは言い争うのを諦めた。

「あ」

 アストロが短く声を出す。何かと思いアストロの視線の先を見ると、

『ナンダキサマラ』

 ガーゴイルが顔を覗かせていた。

「あ、えっと」

 アレンがどうしようと脳内を加速させていると、シキが動いた。誰の気にも止まることなく、ガーゴイルの後ろに回り、ガーゴイルの首を捻る。

『グ?』

 ガーゴイルは何が起こったのか分からないまま、倒れる。保険として首にナイフを突き立てておく。

「………こいつ喋ったな」
「……そうですね」

 以前にも言葉を話すガーゴイルに出会ったことがある。確か、あのガーゴイルは魔王軍だった。もしかしてこのガーゴイルも何かの組織に属しているのだろうか。

『おい、クロッツェ。何か見つけたか?』

 別のものの声。よくわからないが、おそらくクロッツェとはこのガーゴイルの名前なのではないだろうか。返事がないのは怪しまれてしまう。どうしよう。

 シキが親指を立てた。何か策があるのだろうか。

 動向を見守るため、叢に身を隠したままにしておく。シキはガーゴイルの死体を目の付きやすい場所に移動させる。

『クロッツェ? どうした。何かあったのか? おい、クロッツェ?』

 ガーゴイルを探していたのはハイウィザードだ。彼はガーゴイルを見つけると、足早に近づいてくる。シキの手際が良く、遠目からでは生きているのか死んでいるのか分からない。

『クロッツェ?』

 ハイウィザードが怪訝な顔をしながら近づく。その足取りは明らかに重い。すでに半分以上気付いているのかもしれない。

『うん?』

 ハイウィザードガーゴイルの首元に刺し傷を目にする。

 その瞬間、後ろから口元を塞がれる。ガーゴイルの腰に括り付けられていた布だ。何のための布か分からない。ハイウィザードは叫ぶことすら許されず、首を掻き切られた。そのまま布が口元に押し込められていき、ミリッと首が取れる。

「上手くいった」

 シキが、表情の変わらないがおそらくドヤ顔をしながら、こちらに親指を立てる。

「若干ばれてた気もするんですけど、これは成功なんですか?」
「成功」
「いや、でもなんか」
「成功」
「えっと」
「成功」
「成功だよ」
「………はい」

 ズイッとキスのできる位置にまで顔を近づけられ、羞恥と圧力に負け、アレンは成功を認める。

「どうする? まだ引き返せそうだけど」
「僕個人としては引き返したいですね」
「オレは行きてェな。何探してたのかは気になる。めっちゃ気になる」
「確かに気になりますけど」

 アレンはちらりと2体の魔物の体を見る。そして仲間を。任せるという目で見られており、アレンは困ってしまう。

「ほら、見ろ。これまた森では珍しいボーンレッドの姿だ。誘っている。誘っているぞ、アレン」
「分かりましたよ。行きましょう。でも危ないと判断したら逃げますよ」
「分かってるって」

 アシドは嬉しそうにアレンから離れる。自主的にボーンレッドの尾行を始めるアシドに溜息を漏らす。アレンをはじめ、エンドローゼ達も諦めてついていくことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...