孤児が皇后陛下と呼ばれるまで

香月みまり

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3章

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「あ、、、、あのぉ、、これはいったい!!」

女官に囲まれ湯殿に連行された苓は、3人がかりで一気に服を脱がされ、そして何やら薬草臭い湯殿に沈められた。

そして抵抗する間もなく、体中をこれまた何かの薬草を編み込んだらしい固まりでこすり上げられようやく湯殿から出ることを許されたかと思えば、今度は長椅子に転がされ、マッサージと共に香油のようなものを塗りたくられた。


「痛いぃぃ~」

「少しばかりご辛抱くださいませ、長い道中を歩かれた疲れが体に溜まっておりますので流さねばなりませんゆえ」

女官の中でもリーダー的存在の中年の女性が、背中をゴリゴリと押し上げる。悲鳴を上げたいほどの痛みに身体に力をつい入れてしまう。


3人がかりで体中をもみほぐされて、ようやく解放された時には、なぜだかここに来た時よりも疲れているような気がした。

しかしこれで終わりかと言えばそうはいかない、またも3人がかりで着替えさせられ、今まで来たこともないような豪華で繊細な生地の着物を着せられ、髪まで結われる。

こんなの結婚式くらいでしか着ることがないと思っていたのだが、、、今日は何のお祝いなのだ?と女官に聞けば

「これが皇女殿下の普段の装いです。」と言われ唖然とした。



怖い、自分はとんでもない所に来てしまったと震える。

今日の昼まで苓は庶民で農村育ちのただの田舎娘だったのだ、、、それが数刻経ったらこの国の皇女だと言われて、生まれてこの方見たことも触れた事も、経験したこともないこと尽くしで、目の前がチカチカして

あぁ、、、なんだか吐き気が、、、

軽くめまいを起こした。

そして、女官たちに運ばれた寝台がまた上質で柔らかくて、かけ布の肌触りのよさに

あぁ、、、もうどこに行っても贅沢尽くしで落ち着けない

ぐったりしながら美しい刺繍が施された天蓋をぼんやり眺めた。


このまま眠って、起きたらあの簡素な宿屋の天井になっていないだろうか、、、もはやどっちが夢で現実なのかもわからなくなりつつあった。

そんなことをしている内に、お茶が運ばれて、ここでも今迄飲んだこともないような薫り高い茶に飲む気を失う。

「と、、ところで私と一緒にいた二人はどうなったの?」

とりあえず、何とか気分を落ち着けて、給仕をしてくれた女官に問うてみるが


「私共には何とも、、、」と首を傾けられる。

「まぁそうですよねぇ~」

このお屋敷は広いし、彼女たちは苓の身の回りの事だけを言い使っているのだろう。

本当なら自分もこの立場になるつもりだったのだけどなぁ。

お茶を一口飲んで、大きく息をつく。

やはり上等なものだけあって、おいしかった。

これ飲みなれたら、その辺の安いお茶飲めなくなるんじゃ、、、

得も言われぬ危機感を感じながら、そこではたと思い出す。

あぁ、私皇女なのだ、、、むしろ安いお茶こそ飲ませてもらえることがないだろう。

そう考えると、いつも当たり前のように飲んでいた、あの薄くてほんのり青臭いお茶が恋しくもなる。

また大きく息を吐いて、改めて部屋中を見渡す。

将軍の家でこの状況なのだ、、、宮廷となったらどうなるのだろうか、、、


考えたらまた気分が悪くなってきた。

明日、自分は無事でいられるのだろうか、、、。そこまで考えて首を横に振る。

怖い、考えるのやめよう。
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