古代ローマの英雄スキピオの物語〜歴史上最高の戦術家カルタゴの名将ハンニバル対ローマ史上最強の男〜本物の歴史ロマンを実感して下さい

秀策

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ローマ人

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 一人の離脱者も出さず、この場に集まったローマ兵士は先のローマ軍の行軍でティキヌス川に掛けられた橋の破壊工作に取りかかった。彼らは工兵ではないため、橋の構造を熟知していない。だから彼らはお互いに知恵を出し合って工作活動に従事した。ここには上下関係はない。皆がお互いの考えを口に出し、皆で考えて行動した。一体感。素人の集団でも為せば成ることがここで証明されようとしていた。
 だが、天は彼らに名誉挽回する機会を与えても、それに必要な時間を十分には与えてはくれなかった。ティキヌス川の西方に砂塵が舞うのが見え、一刻を争う事態に直面したことを誰もが知った。騎馬集団が大地をかける音が、刻々と大きくなってくる。作業はまだ半ばである。プブリウスの額に脂汗が浮き出る。ここでみんなが動揺して作業を止めれば、カルタゴ軍の追撃をここで振り切るというのが夢物語に終わってしまう。
 プブリウスは仲間の中を回って励ました。それもあってか、誰ひとり持ち場を離れる者はでなかった。迫る蹄の音に恐怖を覚えた者も多かったに違いないが、覚悟を決めた者たちの意地が勝ったと言えよう。
「すまない。ここは我々が踏ん張ってできるだけ多くの仲間の命を救おう」
 とプブリウスが声をかければ、
「わかっている。やらなければならないことはやる。それが俺たちローマ市民だ」
 と、ローマ兵士は固い意志を示した。
プブリウスらが見守る中、戦場から離脱してきたローマ軍騎兵団がティキヌス川に架けられた橋を通過していく。その騎兵団の中央あたりに親友ラエリウスを見つけ、その馬の背に負傷したらしい父の姿を認めた。
「あぁ……、ラエリウスは本当に父を救ってくれたのか」
 父の傷の具合は気になるが、プブリウスはひとまず安堵した。負傷したコルネリウスはもちろんラエリウスもプブリウスには全く気づかずティキヌス川を越えていった。プブリウスの前を次々とローマ騎兵が通過していく。
ティキヌス川のすぐ西では、ローマ騎兵団の後陣がカルタゴ軍の激しい追撃を受けていた。執政官を逃がそうと必死に抵抗するローマ軍だが、カルタゴ軍の勢いはもはやどうにもならないように見えた。押し寄せるカルタゴ軍の大きな波が、次々とローマ兵を飲み込んでいった。
 プブリウスは馬上の人になり、ローマ騎兵団の最後尾へと加勢に向かった。自分が行ったところで大して助けにならないのはわかっている。だが、それでも行かねばならないと体が勝手に動くのだ。
 彼もまたローマ人であった。愛国心に満ち溢れ、祖国のために命を賭して戦うよう教育されてきたローマ男子であったのだ。
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