28 / 100
ローマ人
しおりを挟む
一人の離脱者も出さず、この場に集まったローマ兵士は先のローマ軍の行軍でティキヌス川に掛けられた橋の破壊工作に取りかかった。彼らは工兵ではないため、橋の構造を熟知していない。だから彼らはお互いに知恵を出し合って工作活動に従事した。ここには上下関係はない。皆がお互いの考えを口に出し、皆で考えて行動した。一体感。素人の集団でも為せば成ることがここで証明されようとしていた。
だが、天は彼らに名誉挽回する機会を与えても、それに必要な時間を十分には与えてはくれなかった。ティキヌス川の西方に砂塵が舞うのが見え、一刻を争う事態に直面したことを誰もが知った。騎馬集団が大地をかける音が、刻々と大きくなってくる。作業はまだ半ばである。プブリウスの額に脂汗が浮き出る。ここでみんなが動揺して作業を止めれば、カルタゴ軍の追撃をここで振り切るというのが夢物語に終わってしまう。
プブリウスは仲間の中を回って励ました。それもあってか、誰ひとり持ち場を離れる者はでなかった。迫る蹄の音に恐怖を覚えた者も多かったに違いないが、覚悟を決めた者たちの意地が勝ったと言えよう。
「すまない。ここは我々が踏ん張ってできるだけ多くの仲間の命を救おう」
とプブリウスが声をかければ、
「わかっている。やらなければならないことはやる。それが俺たちローマ市民だ」
と、ローマ兵士は固い意志を示した。
プブリウスらが見守る中、戦場から離脱してきたローマ軍騎兵団がティキヌス川に架けられた橋を通過していく。その騎兵団の中央あたりに親友ラエリウスを見つけ、その馬の背に負傷したらしい父の姿を認めた。
「あぁ……、ラエリウスは本当に父を救ってくれたのか」
父の傷の具合は気になるが、プブリウスはひとまず安堵した。負傷したコルネリウスはもちろんラエリウスもプブリウスには全く気づかずティキヌス川を越えていった。プブリウスの前を次々とローマ騎兵が通過していく。
ティキヌス川のすぐ西では、ローマ騎兵団の後陣がカルタゴ軍の激しい追撃を受けていた。執政官を逃がそうと必死に抵抗するローマ軍だが、カルタゴ軍の勢いはもはやどうにもならないように見えた。押し寄せるカルタゴ軍の大きな波が、次々とローマ兵を飲み込んでいった。
プブリウスは馬上の人になり、ローマ騎兵団の最後尾へと加勢に向かった。自分が行ったところで大して助けにならないのはわかっている。だが、それでも行かねばならないと体が勝手に動くのだ。
彼もまたローマ人であった。愛国心に満ち溢れ、祖国のために命を賭して戦うよう教育されてきたローマ男子であったのだ。
だが、天は彼らに名誉挽回する機会を与えても、それに必要な時間を十分には与えてはくれなかった。ティキヌス川の西方に砂塵が舞うのが見え、一刻を争う事態に直面したことを誰もが知った。騎馬集団が大地をかける音が、刻々と大きくなってくる。作業はまだ半ばである。プブリウスの額に脂汗が浮き出る。ここでみんなが動揺して作業を止めれば、カルタゴ軍の追撃をここで振り切るというのが夢物語に終わってしまう。
プブリウスは仲間の中を回って励ました。それもあってか、誰ひとり持ち場を離れる者はでなかった。迫る蹄の音に恐怖を覚えた者も多かったに違いないが、覚悟を決めた者たちの意地が勝ったと言えよう。
「すまない。ここは我々が踏ん張ってできるだけ多くの仲間の命を救おう」
とプブリウスが声をかければ、
「わかっている。やらなければならないことはやる。それが俺たちローマ市民だ」
と、ローマ兵士は固い意志を示した。
プブリウスらが見守る中、戦場から離脱してきたローマ軍騎兵団がティキヌス川に架けられた橋を通過していく。その騎兵団の中央あたりに親友ラエリウスを見つけ、その馬の背に負傷したらしい父の姿を認めた。
「あぁ……、ラエリウスは本当に父を救ってくれたのか」
父の傷の具合は気になるが、プブリウスはひとまず安堵した。負傷したコルネリウスはもちろんラエリウスもプブリウスには全く気づかずティキヌス川を越えていった。プブリウスの前を次々とローマ騎兵が通過していく。
ティキヌス川のすぐ西では、ローマ騎兵団の後陣がカルタゴ軍の激しい追撃を受けていた。執政官を逃がそうと必死に抵抗するローマ軍だが、カルタゴ軍の勢いはもはやどうにもならないように見えた。押し寄せるカルタゴ軍の大きな波が、次々とローマ兵を飲み込んでいった。
プブリウスは馬上の人になり、ローマ騎兵団の最後尾へと加勢に向かった。自分が行ったところで大して助けにならないのはわかっている。だが、それでも行かねばならないと体が勝手に動くのだ。
彼もまたローマ人であった。愛国心に満ち溢れ、祖国のために命を賭して戦うよう教育されてきたローマ男子であったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる