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マーシャとジェラはヴァンダルの鎖を外し、水を差し出した。
ヴァンダルは礼を言って受け取り、一口飲む。
「……まずは謝らせてくれ。ほんとうにすまなかった……」
ジェラの方を向いて続ける。
「とくにきみには……酷いことを――」
「いえ、いいんです。あの時のあなたは本来のあなたじゃない。そりゃあ骨が折れたのは痛かったですけど、もうこの通りです」
その言葉に、ヴァンダルはほんのすこし、安らいだような顔をしてみせた。
「まだ名乗っていなかったな」
ヴァンダルは三人に向き直る。
そして名乗った。
「わたしはローハ」
「ぼくはジェラです。こっちが妹のマーシャ」
「よろしく、ローハさん」
「そして私がアノット。あなたと同じヴァンダルよ」
「ヴァンダル……では、その目は……」
「ちゃんと見えているわ。むしろ常人よりもよく見える」
アノットはローハに顔を近づけた。
「あなたの瞳はグレーなのね。改良型かしら」
「ブラウンじゃなくなっているのか?」
「ええ。肌も白くなっているんじゃなくて? 変わらないのは髪色だけかも」
「ヒュシャン……いったいなにをしたんだ……」
「それは後で話しましょう。会うべき人がいるの。新しい服を用意してあるから、着替えたらあなたも一緒に来て」
◇
フレーシは部下からの報告を受け取った。草原地帯で兄妹とヴァンダル0型、1型の歩いている姿を確認したとのことだ。
彼は笑みを浮かべ、通信する。
「いいぞ、尾行を始めろ。見失うなよ……おっと、近づきすぎてもだめだ。ヴァンダルは鼻がきく上に耳も良い。……頼んだぞ、ランダウルさまの期待に応えようじゃないか」
◇
マーシャ、ジェラ兄妹と二人のヴァンダルは、師弟との合流地点まであとわずかのところにいた。
前を歩くマーシャの耳に、ローハとアノットの会話が入ってくる。
「……今更なんだが……」
「なにかしら?」
「わたしは数カ月眠っていたんだろう? なのにまるで筋肉が衰えていない。……これもヴァンダル化の影響ということか……」
「そうね。私もだったけど、どうやらヴァンダルは長期の休眠状態に入るとほとんどの代謝が停止するみたい。あなたも、呼吸や体温、脈拍は正常だったのに排泄も無ければ爪や髪も伸びなかった。……おかげで楽だったけれどね」
「そうだったのか……」
「他にもいろいろと変化したのは自覚があるでしょう? 深くは突っ込まないけど」
「ああ……まあ……。しばらくは困惑しそうだ」
ローハの言葉に、アノットは可笑しげな笑い声を出した。
「ご家族のことを訊いても?」
「……身寄りはいない。子はおろか配偶者や恋人も。……あまり交友関係も広くなかったし……端的に言えば、居場所がなかった。だからなのかもしれないな……わたしがヴァンダルの実験体になったのも」
「そう……」
するとマーシャはよからぬものを見つけ、こう言った。
「怪物化した植物が生えてるみたい。気をつけて」
「植物が……?」
ローハが呟くと、上から風切り音がした。
マーシャとジェラは振り返るが、ローハは怪物化した蔓を掴んでいた。
蔓がぐねぐねと悶え、アノットがすかさず切断する。
地面に捨てた蔓はのたうち回ってからしなびて死ぬ。
「初めて見た……ダムドガスは植物まで……」
「そうなんだよ」とマーシャ。「天然のトラップみたいでさ、あたしもこれのせいでマスク剥がされて吸っちゃったの。瘴気もといダムドガスを」
「吸った!? でもきみは――」
「生まれつき完璧な耐性があるみたいなの。お兄やんも同じ体質で」
アノットが追って言う。
「そういえば言ってなかったわね。今このコたちと私が一緒にいるのも、その耐性のおかげでヒュシャンたちに目をつけられて、狙われてるの」
「そうか……実在したのか、ブレシッドは……」
ローハは息を吐き出す。
「ということは、ヒュシャンは急進派に寝返ったということか……?」
「そちらの内部事情は詳しく知らないけれど、ランダウルという人物が中心にいるみたい」
「ランダウル……? ブライレムじゃなくて?」
やがて合流地点についた。同時に、マーシャの目に親しい二人の姿がうつる。
マーシャは歓喜の声を上げて駆け出した。
「アリちゃん! プレイトさん!」
「マーシャ! それにジェラも!」
マーシャは走ってきたアリテームと手を握り合った。
それからジェラとアリテームは抱き合う。
キャリー・プレイトは、微笑みながら兄妹の肩に手を乗せ、それからアノットに言った。
「ロフトフの塔以来だな」
「ええ。ミス・キャリー・プレイト」アノットは帽子を脱ぐ。「あの時は無礼な振る舞いを申し訳ありませんでした」
「いいさ。アリテームもあんたを悪人とは思っていない」
キャリー・プレイトはローハを見た。
「――そちらがメッセージにあった?」
「ローハだ」
「キャリー・プレイト。古代文明の特派員だ、よろしく」
彼女の言葉に、マーシャとジェラは反応した。
「特派員? たしか古代文明の遺跡調査って……」
「……すまない、二人とも。嘘をついていた。だがそれももう終わりだ」
彼女はため息をついてから、こう言う。
「私は古代文明の調査をしていると言ったが、それだけではない。……繋がっているんだ、古代文明と。それも密接に」
「繋がってるっていったって、古代文明は――」
「滅んでなどいない。かれらは科学の力で海底に街を造り、そこに隠れ住んでいる」
「じゃあ……プレイトさんは全部知ってたの?!」
「いいや、なにも知らされていなかった。それに私を雇った古代人はあくまで平和的に地上へ帰還することを望んでいる。私は……特派員とは言ったが、地上で生まれ育った。古代人たちに地上の文化や文明を伝えたり、逆に古代文明の遺跡を調査して科学技術や文化を学んだりしていたんだ。……ヒュシャンもそうだと思っていたが……」
「そうじゃなかった。……プレイトさんが知らないうちに、指導者が変わった……?」
「それが、ランダウルということね」
アノットが言った。
「でも――」とジェラが人差し指を立てる。「本当にプレイトさんの言うとおりだとしたら、ヒュシャンさんはぼくたちの血を使って制御可能なヴァンダルを量産しようとしていた……っていうことだよね? ランダウルという人物の命令で」
「……お兄ちゃん、ポックァ村長が言ってたよね、ランダウルって人に関わるなって」
「覚えてるよ。……でももし同じ人を指してるなら、なんで村長がそこまで知ってるんだろう?」
ここでアノットがローハを見て言った。
「答えを知りそうな人がここにひとりいるわよ」
マーシャたちは視線をローハに集める。
一瞬だけローハは戸惑った顔をするが、すぐに皆の要求を察したようだ。
「……まず、わたしはそのポックァ村長とランダウルの関係についてはよく知らない。ただ、海底都市の派閥や、わたしたちの文明で進められていた計画については多少は答えられる」
「わたしたちの文明?」
「ああ……察しの通り、わたしは海底都市で生まれ育った。古代文明の生き残りだ」
ローハは続ける。
「海底都市では、地上への帰還という目的に穏健派と急進派の、二つの派閥があった。すこしずつ双方の文化を取り込んでいくか、それとも必要とあらば武力衝突も辞さないか……。わたしは穏健派に所属していた。たぶんミス・プレイトも穏健派だろう。街の代表ディクティニス氏も平和的な帰還を望んでいたし、急進派の代表ブライレムもそういった実情を理解していただろうから、規模のわりにあまり目立つ行動は無かった」
「……そこにランダウルが現れて均衡が崩れたと」
「たぶんそうだろう。ブライレムが現在どんな状況かは知らないが、たぶんランダウル一派はムッシュ・ディクティニスの目を盗んで活動している」
「その拠点がロフトフの――」
マーシャが言おうとすると、アノットとローハが急にあらぬ方向を見る。
そして声がした。
「そうだ、ロフトフの塔……。だが残念なことに塔は破棄が決まった」
「誰!?」
マーシャたちは身構える。
声の主は高所から飛び降り、姿を見せた。
灰色の制服を着ている、黒髪とヘーゼルの瞳の若い男だった。彼は冷たい笑みを浮かべながらこちらを見る。
「まさか二人とも自我を取り戻せたとはな。そこくらいはおめでとうと言っておくべきか」
「何者だ……?!」
「オレの名はフレーシ。ヴァンダル2型と言えばだいたいわかってくれるかな?」
「2型……!?」
「そうだ。人間時の外見を損ねず、自我を保ち、繁殖が可能な完成形だ」
フレーシは兄妹を見て続ける。
「ブレシッドのおかげだ」
「けどその力を使って地上を侵略する気なんでしょ!?」
マーシャは剣の先をフレーシに向けた。
「絶対にさせない! それは祝福なんかじゃない!」
「威勢のいいコだ。だがオレは命令を遂行するまで。きみたち兄妹をランダウルさまのところへ連行する。そして――」
フレーシはまたローハとアノットに向き直った。
「ヴァンダル0型およびヴァンダル1型の殺処分を行う」
彼が指を鳴らすと、銃を構えた兵士たちが辺りを囲む。
六人はうかつな動きができなくなった。
「さて……もうチェックメイトだ。……いや、その前に」
フレーシの目がアリテームとキャリー・プレイトに向く。
「きみらは行っていいぞ。そもそも同僚だしな」
「ふざけたことを言うな!」アリテームが怒鳴る。「こんなマネしておいて! あんたには人の心がないのか!」
「よせアリテーム」
「先生、でも……!」
「ここで争っても勝ち目はない。<この場>を離れるんだ」
「……わかりました」
キャリー・プレイトはフレーシを指差す。
「フレーシとやら、私たちはここから失せてやる。だが兄妹を傷つけてみろ……ただでは済まさんぞ」
「さっきも言ったろう、オレはランダウルさまの意のままに動くだけだ」
兵士が道を開け、アリテームとキャリー・プレイトはその場から立ち去った。
マーシャとジェラはその背を見つめる。
「二人とも……」
「……これでいいんだ」
「そう、それでいい」フレーシが言う。「彼女らにできることは何も無い。ムッシュ・ディクティニスにもな……。彼が動けるだけの証拠はここで消える」
「はたしてそう上手くいくかしら?」
アノットが刀を持ち上げる。
「こちらは試作型といえどヴァンダルが二人。あなたを倒してから兵士連中を片付けるのは、そう難しい作業じゃないと思うけど?」
彼女が前に出ようとすると、ローハがそれを止めた。
「わたしがやる」
「タイマンか……いいだろう」フレーシはそう言って拳を構えた。
◇
ローハはマーシャとジェラ、アノットらに目を向ける。
「頼んだわよ」
アノットは刀を納め、兄妹のそばに寄り添った。
その言葉に、ローハは頷いて拳を構える。
フレーシの先制攻撃。
大きく跳んで手刀を振り下ろした。
ローハはそれを躱し拳を放つ。
拳がフレーシの頬を打った。フレーシは仰け反るが笑みを浮かべたままだ。
ローハの追撃。だがフレーシはそれをガードし、できた隙を攻める。
速く重い一撃が脇腹を突いた。
間合いを離してから、ローハとフレーシはぶつかりあった。
◇
ヴァンダル同士の格闘を見守るマーシャに、兵士の一人が話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、教えてやろう。フレーシ隊長は<意思持つ土石流>なんて小洒落た二つ名があるんだ」
「土石流……?」
「隊長はもともと死刑囚でな……檻の中で死を待つばかりだった。そこを、ランダウルさまに見出されたんだ。それだけの戦闘能力を持ってるんだよ、彼は」
「死刑ってあの人なにやったのさ」
「へっ、冤罪だよ。だが腕っ節はホンモノだ。よく見ておきな」
◇
ローハとフレーシの、何度めかの拳打はクロスカウンターとなった。
互いの拳を喰らって二人はよろめき、睨視で牽制し合う。
「意思持つ土石流……たしかに厄介な強さだ」
「おまえも思った以上だ。パワー自体は1型も2型も変わらんらしいな。――だが!」
フレーシは地面を蹴って瞬時に死角に回った。
ローハが対応する前に、肘鉄が入る。
さらに回し蹴りが来た。ガードが間に合ったが衝撃は殺しきれなかった。
フレーシは脚を引くのとほぼ同時に裏拳を放った。
まともに喰らってローハは倒れ込む。
フレーシの動きは鋭さが増していた。さきほどまでは本気を出していなかったということか。
ローハは立ち上がり、踏みつけを回避した。
彼の脚は地面を穿ち、脛の中ほどまで埋まった。
ローハは両拳を打ち下ろした。
が、腕を掴まれて、投げ飛ばされる。
背中をしたたかに打った。
フレーシは脚を抜くと、跳躍する。
宙で弧を描き、凄まじい蹴撃が起き上がろうとしていたローハを追い撃つ。
またローハは地面に伏せた。
◇
マーシャは青ざめた。
「ローハさん!」
「ここまでやったのは見事だったが、そろそろ終わりだ。0型の相手もしなきゃならん」
フレーシはローハの胸ぐらを掴み、貫手を振りかぶる。
貫手が迫ろうとしたその時、どこかから風切り音がした。
そしてフレーシの右膝が銃声と共にはじけた。
フレーシは短い悲鳴を上げてローハを放し、膝を押さえてうずくまる。
兵士たちもざわついた。
マーシャたちはこの隙に、包囲する兵たちを倒して陣形を崩させた。
ローハもフレーシを跳び越え、兵士をなぎ倒す。
そしてアノット、ローハはマーシャとジェラを護るように背を向かい合わせた。
マーシャとジェラも二人の背中の裏で剣を構える。
「どうするの?」マーシャは言った。「まだやる気なの?」
◇
「命中、ヤツの右膝を砕きました」
アリテームが言った。
キャリー・プレイトはボルトを引き次弾を装填、再び座射の姿勢でスコープを覗く。
二人は予め特定しておいた狙撃地点に移動していたのである。ここはフレーシの部隊も把握していたようだが、敵の狙撃兵と観測手は不意打ちで眠っている。
「ジェラたちが四人で兵士を倒してます」
「では私たちはフレーシにトドメを刺そう」
二発目を放った。
◇
マーシャたちはまた超音速の銃撃の音を聞く。フレーシへの追撃だろう。
が、フレーシはとっさに腕で頭を防御する。銃弾は袖にめり込んで止まった。
彼は両手と左足で跳ぶと、物陰に隠れた。
「くそ……ぬかった……! 退却だ!」
残った兵士たちはフレーシを担ぎ、追撃させないよう銃口をマーシャたちに向けながら後ずさった。
アノットが前に出る。
「みすみす逃がすわけないでしょう」
だが、兵士の一人が銃下部の発射器から閃光弾を放った。
はじき返す前にそれが炸裂し、四人は目と耳をやられる。
強い光と耳をつんざく音が見当識失調を誘い、動きを封じた。
落ち着く頃には、もうフレーシたちは消え去っていた。
そんな時、アリテームとキャリー・プレイトが戻ってくる。
マーシャは師弟に言った。
「やっぱり考えがあってあっさり退いたんだね」
「ああ。こんなこともあろうかと狙撃に適した地点を下調べしておいたんだ」
「で、そこに向かったら相手も同じこと考えてたってわけ」
アリテームは狙撃地点の方角を指差した。
「向こうに二人縛ってある」とキャリー・プレイト。「情報を持ってるかもしれない」
六人は狙撃地点に向かい、拘束した二人の兵士のところへ来た。二人は壁際で両手を後ろに縛ってある。足にも縄が巻かれていた。
キャリー・プレイトは狙撃手の頬を軽く叩く。
「おい、起きろ」
兵士は低く唸って意識を取り戻した。
「オマエたちにいろいろと訊きたいことがある」
「だからって喋ると思うか?」
「確かに」とアノット。「でもその判断が後悔を生むと思うわよ」
彼女は刀を持ち上げていた。
マーシャはそれを制止する。
アノットは黙って引き下がり、代わりにマーシャが兵士と顔を突き合わせた。
「あたしとお兄ちゃんが瘴気に……ダムドガスに耐性があるのは知ってるでしょ? でもあなたたちはそれを戦争に利用しようとしてる。どうして? 戦争なんて損得を考えただけでも進んでやることじゃない。ランダウルって人はいったい何者で、本当の目的は何?」
兵士は答えることなく、笑った。
「こういう場合、俺みたいなスナイパーはな……普通の兵士より過酷な拷問を受けるって相場が決まってるんだ」
「だからちょっとやそっとじゃ喋らないって言うのね?」
「いいや……」狙撃手は体を蠢かせる。「覚悟が決まってるってことさ」
アノットとローハが声を荒らげた。
「ちょっとあなた何やってるの!?」
「まずい! 自殺する気だ!」
手遅れだった。狙撃手は一瞬苦痛の表情を浮かべると、間もなく死亡する。手には注射器と思しき器具が握ってあった。これで毒薬を注入したのだ。
そして彼は観測手にも同じ毒を打っていた。
二人の死体を前に、マーシャたちは絶句する。
歯を食いしばるマーシャの肩に、ジェラが手を乗せた。
すこし置いてアノットはきびすを返す。
「どこへ?」
「フレーシたちを追うわ。今ならまだ間に合うかも」
「一人で行くのか?」キャリー・プレイトが訊いた。
「ええ。いままでもそうしてきたし、慣れた方法でやるわ。隠れ家は好きに使ってちょうだい」
去ろうとする彼女に、マーシャとジェラが声をかけた。
「アノットさん、お気をつけて」
「どうかご無事で……」
アノットは振り返って微笑んだ。
「あなたたちもね」
彼女はコートを翻して姿を消す。
残った五人も場所を変え、移動しながら話し合う。
「きっとランダウル一味は今までより積極的に動くと思うんだ」
アリテームの言葉に、キャリー・プレイトも同意した。
「だろうな。相手の規模がどんなものかは知らんが……」
「急進派がまるまるランダウルの指揮下だとすれば――」とローハ。「わたしたちでは太刀打ちできんだろう」
「どうにか味方を増やせないかな?」
マーシャは言った。
「古代文明の穏健派の人たちを説得する……とか?」
ジェラの発言に、ローハとキャリー・プレイトが顔を見合わせる。
「ローハ……だったっけ。あんたムッシュ・ディクティニスと会う約束を取り付けられるか?」
「……直接の接点は無い。だけど接点のある知り合いなら。……通信設備とか、海底都市まで行く手段にアテはあるのか?」
「そのへんは私に任せろ」
キャリー・プレイトは一歩前に出てから四人に言った。
「スラウギーがある」
マーシャとジェラはヴァンダルの鎖を外し、水を差し出した。
ヴァンダルは礼を言って受け取り、一口飲む。
「……まずは謝らせてくれ。ほんとうにすまなかった……」
ジェラの方を向いて続ける。
「とくにきみには……酷いことを――」
「いえ、いいんです。あの時のあなたは本来のあなたじゃない。そりゃあ骨が折れたのは痛かったですけど、もうこの通りです」
その言葉に、ヴァンダルはほんのすこし、安らいだような顔をしてみせた。
「まだ名乗っていなかったな」
ヴァンダルは三人に向き直る。
そして名乗った。
「わたしはローハ」
「ぼくはジェラです。こっちが妹のマーシャ」
「よろしく、ローハさん」
「そして私がアノット。あなたと同じヴァンダルよ」
「ヴァンダル……では、その目は……」
「ちゃんと見えているわ。むしろ常人よりもよく見える」
アノットはローハに顔を近づけた。
「あなたの瞳はグレーなのね。改良型かしら」
「ブラウンじゃなくなっているのか?」
「ええ。肌も白くなっているんじゃなくて? 変わらないのは髪色だけかも」
「ヒュシャン……いったいなにをしたんだ……」
「それは後で話しましょう。会うべき人がいるの。新しい服を用意してあるから、着替えたらあなたも一緒に来て」
◇
フレーシは部下からの報告を受け取った。草原地帯で兄妹とヴァンダル0型、1型の歩いている姿を確認したとのことだ。
彼は笑みを浮かべ、通信する。
「いいぞ、尾行を始めろ。見失うなよ……おっと、近づきすぎてもだめだ。ヴァンダルは鼻がきく上に耳も良い。……頼んだぞ、ランダウルさまの期待に応えようじゃないか」
◇
マーシャ、ジェラ兄妹と二人のヴァンダルは、師弟との合流地点まであとわずかのところにいた。
前を歩くマーシャの耳に、ローハとアノットの会話が入ってくる。
「……今更なんだが……」
「なにかしら?」
「わたしは数カ月眠っていたんだろう? なのにまるで筋肉が衰えていない。……これもヴァンダル化の影響ということか……」
「そうね。私もだったけど、どうやらヴァンダルは長期の休眠状態に入るとほとんどの代謝が停止するみたい。あなたも、呼吸や体温、脈拍は正常だったのに排泄も無ければ爪や髪も伸びなかった。……おかげで楽だったけれどね」
「そうだったのか……」
「他にもいろいろと変化したのは自覚があるでしょう? 深くは突っ込まないけど」
「ああ……まあ……。しばらくは困惑しそうだ」
ローハの言葉に、アノットは可笑しげな笑い声を出した。
「ご家族のことを訊いても?」
「……身寄りはいない。子はおろか配偶者や恋人も。……あまり交友関係も広くなかったし……端的に言えば、居場所がなかった。だからなのかもしれないな……わたしがヴァンダルの実験体になったのも」
「そう……」
するとマーシャはよからぬものを見つけ、こう言った。
「怪物化した植物が生えてるみたい。気をつけて」
「植物が……?」
ローハが呟くと、上から風切り音がした。
マーシャとジェラは振り返るが、ローハは怪物化した蔓を掴んでいた。
蔓がぐねぐねと悶え、アノットがすかさず切断する。
地面に捨てた蔓はのたうち回ってからしなびて死ぬ。
「初めて見た……ダムドガスは植物まで……」
「そうなんだよ」とマーシャ。「天然のトラップみたいでさ、あたしもこれのせいでマスク剥がされて吸っちゃったの。瘴気もといダムドガスを」
「吸った!? でもきみは――」
「生まれつき完璧な耐性があるみたいなの。お兄やんも同じ体質で」
アノットが追って言う。
「そういえば言ってなかったわね。今このコたちと私が一緒にいるのも、その耐性のおかげでヒュシャンたちに目をつけられて、狙われてるの」
「そうか……実在したのか、ブレシッドは……」
ローハは息を吐き出す。
「ということは、ヒュシャンは急進派に寝返ったということか……?」
「そちらの内部事情は詳しく知らないけれど、ランダウルという人物が中心にいるみたい」
「ランダウル……? ブライレムじゃなくて?」
やがて合流地点についた。同時に、マーシャの目に親しい二人の姿がうつる。
マーシャは歓喜の声を上げて駆け出した。
「アリちゃん! プレイトさん!」
「マーシャ! それにジェラも!」
マーシャは走ってきたアリテームと手を握り合った。
それからジェラとアリテームは抱き合う。
キャリー・プレイトは、微笑みながら兄妹の肩に手を乗せ、それからアノットに言った。
「ロフトフの塔以来だな」
「ええ。ミス・キャリー・プレイト」アノットは帽子を脱ぐ。「あの時は無礼な振る舞いを申し訳ありませんでした」
「いいさ。アリテームもあんたを悪人とは思っていない」
キャリー・プレイトはローハを見た。
「――そちらがメッセージにあった?」
「ローハだ」
「キャリー・プレイト。古代文明の特派員だ、よろしく」
彼女の言葉に、マーシャとジェラは反応した。
「特派員? たしか古代文明の遺跡調査って……」
「……すまない、二人とも。嘘をついていた。だがそれももう終わりだ」
彼女はため息をついてから、こう言う。
「私は古代文明の調査をしていると言ったが、それだけではない。……繋がっているんだ、古代文明と。それも密接に」
「繋がってるっていったって、古代文明は――」
「滅んでなどいない。かれらは科学の力で海底に街を造り、そこに隠れ住んでいる」
「じゃあ……プレイトさんは全部知ってたの?!」
「いいや、なにも知らされていなかった。それに私を雇った古代人はあくまで平和的に地上へ帰還することを望んでいる。私は……特派員とは言ったが、地上で生まれ育った。古代人たちに地上の文化や文明を伝えたり、逆に古代文明の遺跡を調査して科学技術や文化を学んだりしていたんだ。……ヒュシャンもそうだと思っていたが……」
「そうじゃなかった。……プレイトさんが知らないうちに、指導者が変わった……?」
「それが、ランダウルということね」
アノットが言った。
「でも――」とジェラが人差し指を立てる。「本当にプレイトさんの言うとおりだとしたら、ヒュシャンさんはぼくたちの血を使って制御可能なヴァンダルを量産しようとしていた……っていうことだよね? ランダウルという人物の命令で」
「……お兄ちゃん、ポックァ村長が言ってたよね、ランダウルって人に関わるなって」
「覚えてるよ。……でももし同じ人を指してるなら、なんで村長がそこまで知ってるんだろう?」
ここでアノットがローハを見て言った。
「答えを知りそうな人がここにひとりいるわよ」
マーシャたちは視線をローハに集める。
一瞬だけローハは戸惑った顔をするが、すぐに皆の要求を察したようだ。
「……まず、わたしはそのポックァ村長とランダウルの関係についてはよく知らない。ただ、海底都市の派閥や、わたしたちの文明で進められていた計画については多少は答えられる」
「わたしたちの文明?」
「ああ……察しの通り、わたしは海底都市で生まれ育った。古代文明の生き残りだ」
ローハは続ける。
「海底都市では、地上への帰還という目的に穏健派と急進派の、二つの派閥があった。すこしずつ双方の文化を取り込んでいくか、それとも必要とあらば武力衝突も辞さないか……。わたしは穏健派に所属していた。たぶんミス・プレイトも穏健派だろう。街の代表ディクティニス氏も平和的な帰還を望んでいたし、急進派の代表ブライレムもそういった実情を理解していただろうから、規模のわりにあまり目立つ行動は無かった」
「……そこにランダウルが現れて均衡が崩れたと」
「たぶんそうだろう。ブライレムが現在どんな状況かは知らないが、たぶんランダウル一派はムッシュ・ディクティニスの目を盗んで活動している」
「その拠点がロフトフの――」
マーシャが言おうとすると、アノットとローハが急にあらぬ方向を見る。
そして声がした。
「そうだ、ロフトフの塔……。だが残念なことに塔は破棄が決まった」
「誰!?」
マーシャたちは身構える。
声の主は高所から飛び降り、姿を見せた。
灰色の制服を着ている、黒髪とヘーゼルの瞳の若い男だった。彼は冷たい笑みを浮かべながらこちらを見る。
「まさか二人とも自我を取り戻せたとはな。そこくらいはおめでとうと言っておくべきか」
「何者だ……?!」
「オレの名はフレーシ。ヴァンダル2型と言えばだいたいわかってくれるかな?」
「2型……!?」
「そうだ。人間時の外見を損ねず、自我を保ち、繁殖が可能な完成形だ」
フレーシは兄妹を見て続ける。
「ブレシッドのおかげだ」
「けどその力を使って地上を侵略する気なんでしょ!?」
マーシャは剣の先をフレーシに向けた。
「絶対にさせない! それは祝福なんかじゃない!」
「威勢のいいコだ。だがオレは命令を遂行するまで。きみたち兄妹をランダウルさまのところへ連行する。そして――」
フレーシはまたローハとアノットに向き直った。
「ヴァンダル0型およびヴァンダル1型の殺処分を行う」
彼が指を鳴らすと、銃を構えた兵士たちが辺りを囲む。
六人はうかつな動きができなくなった。
「さて……もうチェックメイトだ。……いや、その前に」
フレーシの目がアリテームとキャリー・プレイトに向く。
「きみらは行っていいぞ。そもそも同僚だしな」
「ふざけたことを言うな!」アリテームが怒鳴る。「こんなマネしておいて! あんたには人の心がないのか!」
「よせアリテーム」
「先生、でも……!」
「ここで争っても勝ち目はない。<この場>を離れるんだ」
「……わかりました」
キャリー・プレイトはフレーシを指差す。
「フレーシとやら、私たちはここから失せてやる。だが兄妹を傷つけてみろ……ただでは済まさんぞ」
「さっきも言ったろう、オレはランダウルさまの意のままに動くだけだ」
兵士が道を開け、アリテームとキャリー・プレイトはその場から立ち去った。
マーシャとジェラはその背を見つめる。
「二人とも……」
「……これでいいんだ」
「そう、それでいい」フレーシが言う。「彼女らにできることは何も無い。ムッシュ・ディクティニスにもな……。彼が動けるだけの証拠はここで消える」
「はたしてそう上手くいくかしら?」
アノットが刀を持ち上げる。
「こちらは試作型といえどヴァンダルが二人。あなたを倒してから兵士連中を片付けるのは、そう難しい作業じゃないと思うけど?」
彼女が前に出ようとすると、ローハがそれを止めた。
「わたしがやる」
「タイマンか……いいだろう」フレーシはそう言って拳を構えた。
◇
ローハはマーシャとジェラ、アノットらに目を向ける。
「頼んだわよ」
アノットは刀を納め、兄妹のそばに寄り添った。
その言葉に、ローハは頷いて拳を構える。
フレーシの先制攻撃。
大きく跳んで手刀を振り下ろした。
ローハはそれを躱し拳を放つ。
拳がフレーシの頬を打った。フレーシは仰け反るが笑みを浮かべたままだ。
ローハの追撃。だがフレーシはそれをガードし、できた隙を攻める。
速く重い一撃が脇腹を突いた。
間合いを離してから、ローハとフレーシはぶつかりあった。
◇
ヴァンダル同士の格闘を見守るマーシャに、兵士の一人が話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、教えてやろう。フレーシ隊長は<意思持つ土石流>なんて小洒落た二つ名があるんだ」
「土石流……?」
「隊長はもともと死刑囚でな……檻の中で死を待つばかりだった。そこを、ランダウルさまに見出されたんだ。それだけの戦闘能力を持ってるんだよ、彼は」
「死刑ってあの人なにやったのさ」
「へっ、冤罪だよ。だが腕っ節はホンモノだ。よく見ておきな」
◇
ローハとフレーシの、何度めかの拳打はクロスカウンターとなった。
互いの拳を喰らって二人はよろめき、睨視で牽制し合う。
「意思持つ土石流……たしかに厄介な強さだ」
「おまえも思った以上だ。パワー自体は1型も2型も変わらんらしいな。――だが!」
フレーシは地面を蹴って瞬時に死角に回った。
ローハが対応する前に、肘鉄が入る。
さらに回し蹴りが来た。ガードが間に合ったが衝撃は殺しきれなかった。
フレーシは脚を引くのとほぼ同時に裏拳を放った。
まともに喰らってローハは倒れ込む。
フレーシの動きは鋭さが増していた。さきほどまでは本気を出していなかったということか。
ローハは立ち上がり、踏みつけを回避した。
彼の脚は地面を穿ち、脛の中ほどまで埋まった。
ローハは両拳を打ち下ろした。
が、腕を掴まれて、投げ飛ばされる。
背中をしたたかに打った。
フレーシは脚を抜くと、跳躍する。
宙で弧を描き、凄まじい蹴撃が起き上がろうとしていたローハを追い撃つ。
またローハは地面に伏せた。
◇
マーシャは青ざめた。
「ローハさん!」
「ここまでやったのは見事だったが、そろそろ終わりだ。0型の相手もしなきゃならん」
フレーシはローハの胸ぐらを掴み、貫手を振りかぶる。
貫手が迫ろうとしたその時、どこかから風切り音がした。
そしてフレーシの右膝が銃声と共にはじけた。
フレーシは短い悲鳴を上げてローハを放し、膝を押さえてうずくまる。
兵士たちもざわついた。
マーシャたちはこの隙に、包囲する兵たちを倒して陣形を崩させた。
ローハもフレーシを跳び越え、兵士をなぎ倒す。
そしてアノット、ローハはマーシャとジェラを護るように背を向かい合わせた。
マーシャとジェラも二人の背中の裏で剣を構える。
「どうするの?」マーシャは言った。「まだやる気なの?」
◇
「命中、ヤツの右膝を砕きました」
アリテームが言った。
キャリー・プレイトはボルトを引き次弾を装填、再び座射の姿勢でスコープを覗く。
二人は予め特定しておいた狙撃地点に移動していたのである。ここはフレーシの部隊も把握していたようだが、敵の狙撃兵と観測手は不意打ちで眠っている。
「ジェラたちが四人で兵士を倒してます」
「では私たちはフレーシにトドメを刺そう」
二発目を放った。
◇
マーシャたちはまた超音速の銃撃の音を聞く。フレーシへの追撃だろう。
が、フレーシはとっさに腕で頭を防御する。銃弾は袖にめり込んで止まった。
彼は両手と左足で跳ぶと、物陰に隠れた。
「くそ……ぬかった……! 退却だ!」
残った兵士たちはフレーシを担ぎ、追撃させないよう銃口をマーシャたちに向けながら後ずさった。
アノットが前に出る。
「みすみす逃がすわけないでしょう」
だが、兵士の一人が銃下部の発射器から閃光弾を放った。
はじき返す前にそれが炸裂し、四人は目と耳をやられる。
強い光と耳をつんざく音が見当識失調を誘い、動きを封じた。
落ち着く頃には、もうフレーシたちは消え去っていた。
そんな時、アリテームとキャリー・プレイトが戻ってくる。
マーシャは師弟に言った。
「やっぱり考えがあってあっさり退いたんだね」
「ああ。こんなこともあろうかと狙撃に適した地点を下調べしておいたんだ」
「で、そこに向かったら相手も同じこと考えてたってわけ」
アリテームは狙撃地点の方角を指差した。
「向こうに二人縛ってある」とキャリー・プレイト。「情報を持ってるかもしれない」
六人は狙撃地点に向かい、拘束した二人の兵士のところへ来た。二人は壁際で両手を後ろに縛ってある。足にも縄が巻かれていた。
キャリー・プレイトは狙撃手の頬を軽く叩く。
「おい、起きろ」
兵士は低く唸って意識を取り戻した。
「オマエたちにいろいろと訊きたいことがある」
「だからって喋ると思うか?」
「確かに」とアノット。「でもその判断が後悔を生むと思うわよ」
彼女は刀を持ち上げていた。
マーシャはそれを制止する。
アノットは黙って引き下がり、代わりにマーシャが兵士と顔を突き合わせた。
「あたしとお兄ちゃんが瘴気に……ダムドガスに耐性があるのは知ってるでしょ? でもあなたたちはそれを戦争に利用しようとしてる。どうして? 戦争なんて損得を考えただけでも進んでやることじゃない。ランダウルって人はいったい何者で、本当の目的は何?」
兵士は答えることなく、笑った。
「こういう場合、俺みたいなスナイパーはな……普通の兵士より過酷な拷問を受けるって相場が決まってるんだ」
「だからちょっとやそっとじゃ喋らないって言うのね?」
「いいや……」狙撃手は体を蠢かせる。「覚悟が決まってるってことさ」
アノットとローハが声を荒らげた。
「ちょっとあなた何やってるの!?」
「まずい! 自殺する気だ!」
手遅れだった。狙撃手は一瞬苦痛の表情を浮かべると、間もなく死亡する。手には注射器と思しき器具が握ってあった。これで毒薬を注入したのだ。
そして彼は観測手にも同じ毒を打っていた。
二人の死体を前に、マーシャたちは絶句する。
歯を食いしばるマーシャの肩に、ジェラが手を乗せた。
すこし置いてアノットはきびすを返す。
「どこへ?」
「フレーシたちを追うわ。今ならまだ間に合うかも」
「一人で行くのか?」キャリー・プレイトが訊いた。
「ええ。いままでもそうしてきたし、慣れた方法でやるわ。隠れ家は好きに使ってちょうだい」
去ろうとする彼女に、マーシャとジェラが声をかけた。
「アノットさん、お気をつけて」
「どうかご無事で……」
アノットは振り返って微笑んだ。
「あなたたちもね」
彼女はコートを翻して姿を消す。
残った五人も場所を変え、移動しながら話し合う。
「きっとランダウル一味は今までより積極的に動くと思うんだ」
アリテームの言葉に、キャリー・プレイトも同意した。
「だろうな。相手の規模がどんなものかは知らんが……」
「急進派がまるまるランダウルの指揮下だとすれば――」とローハ。「わたしたちでは太刀打ちできんだろう」
「どうにか味方を増やせないかな?」
マーシャは言った。
「古代文明の穏健派の人たちを説得する……とか?」
ジェラの発言に、ローハとキャリー・プレイトが顔を見合わせる。
「ローハ……だったっけ。あんたムッシュ・ディクティニスと会う約束を取り付けられるか?」
「……直接の接点は無い。だけど接点のある知り合いなら。……通信設備とか、海底都市まで行く手段にアテはあるのか?」
「そのへんは私に任せろ」
キャリー・プレイトは一歩前に出てから四人に言った。
「スラウギーがある」
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