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「ヒスイさん、話がある。」


彼を追って外に出ると、出会ってそうそう引き止めた。ヒスイさんは不思議に思いながらも隣に腰掛けてくれた。俺の真剣な表情から何か感じ取ったのだろう。いつもみたいに少しふざけた様子を見せない。


「ヒスイさん、俺どうしたら良い?」


「どうって何が?」


「俺、一緒にいない方がいい?」


「はあ?!何で?」


珍しく慌てた様子で声を荒げる。それにどこかホッとしている自分がいた。別に俺と一緒にいたくないわけではないのだと分かったから。


「だって、ヒスイさん俺のこと避けてるでしょ?」


彼は何か口にしようとしたが閉じてしまう。今度は胸が痛む。 


やっぱり、避けてたんだ…


「俺、嫌なことした?」


「してないよ。ごめん、傷付けて。これは、俺の問題でルカは何も悪くないんだ。」


「問題?」


その問題とやらについて知りたかったが、再びヒスイさんは口を閉ざしてしまう。

自分だけなのだろうか…こんなにもヒスイさんのことが気になってしまうのは。俺は、頼りにならないのだろうか…


ヒスイさんの手を握り締めようと触れてみると、凄い勢いで彼は腕を引っ込めた。


「あっ…」


「っ、ごめん!違うんだ…これは………」


そんなに、嫌なんだ…俺が触れるのは…


その事実が分かった途端、泣きそうになった。でも、泣いたらきっとヒスイさんを困らせる。


「ううん、大丈夫だよ。」


俺が立ち上がると、ヒスイさんは腕を掴んでくる。でも、今度は俺が腕を振り払って距離を取った。


「触らないで…」


声が震えないように気を付ける。これ以上、ヒスイさんに拒否されるのが怖かった。それだったら、自分から離れた方がマシだ。


「俺、ちょっと旅に出るね。」


「はあ?」


「ここの世界についての知識も教えて貰ったし、ずっとここに居座る予定もなかったからさ。」


自分でも何を突然言ってるんだろうって思った。でも、彼と離れるために出た言い訳の言葉が口から出ていく。


「冗談だろ?」


「ううん、俺も色んな所に行ってみたいんだ。」


「なら、俺も行く。」


「1人で行きたいんだ。」


「何で?」


「…1人になりたいから。」


本当のことを言ってしまえば、また困らせてしまうだろうか。触って欲しいと願ったら、無理して触れてくれるようになるのだろうか。


別に、俺は強要したいわけではない。自分を求めて触れて欲しいと言うのは我儘になるのだろうか。


神様に相談に乗って欲しい。どれくらいなら、周りの人が許してくれる我儘になるのか知りたい。


「…いつまで、旅するんだ?」


ヒスイさんの顔を見ると胸がズキズキと痛む。もう、そんな顔見たくない。もう、俺に同情しなくていいよって言いたい。でも、俺のことを忘れて欲しくなくて言えない。


「さよなら。」


だから、俺はまた逃げるように彼から離れたんだ。シールドを張るとヒスイさんは慌ててこちらに駆け寄ってきた。俺は隙をついて先程、ヒスイさんが居た場所に足を止める。


「ルカ!」


俺の名前を呼んで、何度も叫んでくれる。でも、何も反応がなくて悔しそうに顔を歪めると俺が立ち尽くす場所とは反対方向に走って行った。
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