動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

（3）

最近、ヒスイさんが冷たくなった気がする。何故だか、俺のことを避けるのだ。もしかして気のせいかもしれないが、前よりも触れてくれなくなったように思う。


「俺、何かやっちゃったのかな。」


何かじゃない、本当は分かっていた。1週間程前にのぼせたことをいいことに、面倒臭いことを口走ってしまったから。


我ながら、女々し過ぎたなと思った。縋って同情を買おうとしているみたいだった。


「俺のこと嫌になったのかな…」


再び、嫌な音が身体を駆け巡る。以前、ヒスイさんに嘘がバレてこの街を出た時のことを思い出す。罪悪感から連れ戻しに来てくれたであろうヒスイさん。


もしかしたら、それがまだ残っていて好きだと言って傍にいてくれているのだろうか…


流石に違うと思ってはいるが、罪悪感という文字が消えてくれない。


今は、俺もあの時とは違って、この世界についての知識が頭に入っている。だから、もう1人になっても大丈夫ではあるし、生きていくだけの力も養えていると思う。


「……1回、話してみよう。それで、どうするのか決めよう。」


湖に映る自分の姿は惨めに見えた。


どうして、こんなにも上手くいかないのだろうか。コミュニケーションの距離が分からなくて困る。これくらいなら近付いても大丈夫なのかと思えば、失敗していることが多い。


大きな溜め息が出る。


これでもしダメだったら、ヒスイさんの前から消えようと思った。今度は自分にシールドを掛けて匂いなどは絶ってから移動しようと思った。


ふと、自分が既に逃げようと考えていることに気付く。悪い癖だと分かっているが、抜け出せない。


自分は傷付くのが怖くてすぐに逃げようとしてしまう。でも、それを喜ぶ人が多かったのも事実だった。


家を出たことを後悔して少ししてから戻ると、やっと消えたと喜ぶ家族の姿。祖父母に会いに行くと嫌な顔をされ、頼ることを諦めるとホッとされた。友人達の家に転がり込むと、面倒だと思われている雰囲気を味わい続けた。


多分、俺は人肌が恋しいのだと思う。ヒスイさんが触れてくれると、嬉しくて幸せで泣きたくなる時が何回もあった。


何だか、今すぐどこかに消えてしまいたいと思ってしまう。でも、また勝手に消えてしまうのも申し訳なくて心を苦しめる。以前みたいに、胸を痛めた顔をするヒスイさんを見たくなかった。


「神様…」


応答がない。彼も忙しくて会話をする余裕がないのだろうと思うとまた悲しくなった。


「俺って、ここでも友達がいないんだ…」


今更ながら、そんな事実にぶち当たった。