人殺しのあなたへ

竹丈岳

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 カンナは、なぜか、クローゼットに仕舞ってあった女物の服を取り出してきて、手際よく着始めた。

 見れば、小金持ちの貴族のように、すらりとした体のラインが出る黒いドレスをしっかりと着こなしていた。

 見とれて思わず、俺は唾を飲み込みこんだ。

 上着を羽織って、肩幅を隠せば、完全な女性だった。

「さすがだな」
「えっちする?」
「するか馬鹿」

 カンナに先に行かせ、鉄格子付きの厳重なガラス張りの宝石店で、予定通りにやり取りをさせる。

 しかし、普段から女みたいな行動をしていたのか、カンナの動きや声の出し方まで、まるで、女性と見紛うくらいに振る舞う。これは、俺の目から見ても、かなりの素養があるように感じた。

「あの、私に似合う宝石を探して欲しいのですけれど」
「これはこれは美しいミセス。あなたにぴったりの指輪がありますよ」

 普段は宝石商というのは、客の服装を見て相手をしている。
 貧乏そうな見た目の相手には、盗むと分かり切っているから相手をすることすらない。
 だが、今のカンナは貴族の女性だ。ドレスの生地も良く、通気性の悪さを補うように背中や胸まで露出が多い姿をしている。
 これで馬車まであれば完璧だっただろう。
 

 カンナは出されたダイアモンドの指輪を中指に付けて、
「うーん、これも良いんだけれど、他には無い?」
「では、このルビーはどうです? 宝石自体は小ぶりですが、指輪の装飾は何とも綺麗な花びらのようでしょう?」
「あら、とても綺麗ね。でも、物足りない……」
「待っていてください。とっておきの物を出してきます」

 そう言って持ってきたのは、金のリングにダイアモンドとサファイヤが付いた指輪だった。

「これも良いわ。でも、パパから一つにしろって言われてるの。決められないのよ……」
「失礼ですが、ご予算はどのくらいで?」
「値段は気にしないって。普段、パパは私に構ってくれないから、誕生日だけでも私に贈り物をしたいって奮発してくれたの」
「それはそれはおめでたいことです。でしたら、中々相手をしてくれないお父さまに、少し、お返しをしてみるのはいかがです?」
「お返し?」
「待っていてください」
 そう言って、また奥から持ってきたのは、黄色く光るダイアモンドのようだった。
 
 
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